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孤狼の転生~最速スキルでゼ 口から始める〜  作者: Ebi
(第一章:孤狼の覚醒と王の盾要塞 - Daiisshō: Korō no Kakusei to Ō no Tate Yōsai)
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第37話~第39話

第三十七話:雷を醒ます影と、星雲の巨獣


俺――ハナシ・リョウガとシン・カツ(Shin Katsu)が【死者の地(Dead Land)】に最も近い境界へと足を進めたその時、不気味で地響きのような怪音が辺りに響き渡った。


突如として、天を覆う漆黒の暗雲が凄まじい速度でうごめき、まるで生き物のように俺たち二人の頭上へと集束し始めたのだ。


シンは息を呑み、その両手をカタナの柄へと力強く掛けた。完全に臨戦態勢に入っている。


「嘘だろ……まさか、あいつがここにいるのか……!」

シンは珍しく焦燥を露わにし、俺に向かって叫んだ。


「リョウガ、**ハサミ(Pay attention)**を研ぎ澄ませ! 空からの襲撃に備えろ!」


普段は冷静沈着なシンの異様な様子を見て、俺は眉をひそめた。


「どうした、シン。なぜそこまで狼狽えている? 一体何がこちらに向かって来ているんだ?」


シンは歯噛みしながら、怒りと驚愕の混じった声で吐き捨てた。

「空の支配者、またの名を『雷を醒ます者(The Thunder-Waker)』……。**【ネブルス・ザ・シャドウ(Nebulus the Shadow / Nebulos Shadow)】**だ! クソッ、なぜこんな場所にいやがる! あいつは本来、海洋や沿岸地帯に生息する最高峰の魔獣のはずだ。これほどの個体が移動しているということは、死者の地の中でどれほど凄まじい異変(地殻変動)が起きているかの証明だ!」



俺はこれまでそんな怪物の存在を知らなかったが、シンのただならぬ表情から、目の前の敵がどれほど悍ましい存在であるかを瞬時に察知した。「シン、まだ間に合うなら一度『 後退( Retreat)』するか?」


「いや、もう遅い!」シンは首を振った。


「嵐と激しい雷撃を伴ってこちらに向かってくるあの漆黒の雲を見ろ。奴は完全に俺たちの存在をロックオンしている。あの速度からはもう逃げ切れん……。だが、おかしい。なぜ俺は、あの巨獣の禍々しいマナ(魔力)を直前まで察知できなかったんだ? あんな巨大な存在がマナを隠蔽するなど、不可能なはずなのに……!」


激しい暴風が吹き荒れ、俺の衣服と髪を狂暴に揺らす。しかし、俺は動じることなく、その冷徹な顔(Calm)に静かな、しかし凶暴な笑みを浮かべて叫び返した。


「シン! むしろこれは最高のチャンスじゃねえか。俺たちがさらに強くなるための、絶好の狩り場だ!」


シンは俺の顔を見た。その瞳は恐怖ではなく、未知の強敵に対する狂おしいほどの戦意(興奮)に燃え上がっていた。


「狂ってやがるな……」シンは呆れたように笑い、カタナを引き抜いた。


「シン、あの怪物の本当の『姿(Face)』はどんな奴だ?」俺は上空の暗雲を睨みつけながら尋ねた。シンは暴風に負けぬよう、声を張り上げて説明した。


「奴の身体は、無限に凝縮された漆黒の砂塵、黒煙、そして暗黒星雲のガスそのもので構成されている! 輪郭は常に流動し、周囲の雨雲と混ざり合っているため、下から見上げる軍隊には、どこまでがただの雲で、どこからが化け物の身体なのかの判別すらつかん! あの雲の身体の内部には、凄まじい静電気と雷撃の激流が渦巻いているんだ!」


シンの言葉通り、渦巻く黒煙の奥で、さらに禍々しい光が弾けた。


「奴には**通常の意味での(一般的な意味)**眼や瞼は存在しない。代わりに、あの巨大な質量を誇る頭部と思われる部分に、二つの深く引き裂かれたような亀裂がある。そこから、落雷の中心部のような、目を灼く白青色の光が不気味に放たれているのだ! 奴が咆哮を上げ、すべてを呑み込もうと大口を開く時、光すらも吸い込む暗黒の渦(黒いトルネード)が顕現する!」


上空で、巨大な影が羽ばたいた。「翼は、二対の超高密度に圧縮された雲の塊。あれが一度羽ばたけば、地上には凄まじい暴風と無数の小型トルネードが吹き荒れる! そして下半身に見えるのは、凝縮された砂塵で形作られた巨腕と鋭い鉤爪だ。あの爪の一振りの一撃は、堅牢な城塞の塔をまるで灰の如く一瞬で粉砕し、 崩壊する(崩壊)させる力を持つ!」


俺は右目の【分析の魔眼(レベル5)】を限界まで開き、漆黒の嵐の核を見据えた。レベル42、そして進化した双焔の魔法……。この実力を試す相手としては、これ以上ない最

高のごちそうだ。


俺は剣の柄を固く握りしめ、隣のニンジャに問いかけた。


「……で、そいつはどうやって『 壊滅( 失敗)』させれば

いい?」


第三十八話:雷鳴の核と、凍てつく双焔の暴走


タリン、キングラッド、エナリル、そしてアリスター男爵(Baron Alistair Fade)の四人は、見渡す限りの魔物の屍骸の中で、神経を研ぎ澄ませてリョウガの痕跡を捜索していた。


その時、遥か遠方の天空が突如として漆黒に染まり、天と地を裂くような凄まじい雷鳴が辺り一帯に轟き渡った。


エナリルが足を止め、怯えたように空を見上げた。


「何が起きたの……? さっきまで穏やかだったのに、あの不気味な黒い雲は一体何本の 稲妻 を降らせているの!?」


アリスターは額に冷や汗をにじませ、信じられないといった面持ちで杖を強く握りしめた。


「馬鹿な……まさか、こんな場所に現れるとは……! 総員、ただちに退避( 逃げる)するのだ! 奴に見つかれば生きては戻れん!」


タリンが大斧を担ぎ直し、不満げに鼻を鳴らす。「おいおい、男爵様。この俺様が敵を前にして逃げ出すわけねえだろ! で、あの雲は何の化け物なんだ?」


アリスターは声を震わせながら叫んだ。


「あの怪物こそが『ネブルス・ザ・シャドウ(Nebulus the Shadow)』だ! たった一頭で一つの大都市を地図から消し去るほどの天災級の魔獣だぞ! 分かったら走れ、タリン!」


キングラッドが鋭い目を暗雲の渦へと向け、声を潜めた。「だが男爵様、あの怪物の暴れ方は異常だ。まるで……誰かと死闘を繰り広げているかのように見える。おい、まさか……!」


三人は同時に互いの顔を見合わせ、その名を口にした。



「「「リョウガ―――ッッ!?!?」」」


「あいつ、あんな化け物と戦ってやがんのか! 助けに行くぞ!」タリンが叫ぶ。


宮廷魔導士団長であるアリスターは、死に急ぐかのように天災へ向かって走り出した三人の背中を見て、唖然とした。「正気か、お前たち……!」


しかし、彼らを見捨てるわけにもいかず、アリスターもまた魔導の衣を翻してその後を追った。


走りながら、キングラッドが隣のアリスターに怒鳴った。「男爵様! あの煙の化け物を打ち破る方法はないのか!?」


アリスターは杖から防御マナを展開しながら叫び返す。「奴を倒す唯一の方法は、あの質量の中に隠された核心――『雷鳴の魔石(サンダーストーン)』を見つけ出し、粉砕することだけだ! だが、それには致命的な問題がある!」



タリンが並走しながら大斧をぶん回した。「問題だと!? 俺のこの大斧で、奴の胸の魔石ごと叩き潰してやるよ!」


アリスターは険しい表情で叫んだ。


「問題なのは、その雷鳴の魔石が奴の漆黒の雲の最深部に隠されていることだ! そもそも空を飛ぶ『飛行魔法(飛行の魔法)』がなければそこへ届かんし、仮に雲の内部に侵入できたとしても、そこは肉体を一瞬で炭化させる高電圧の雷撃の激流だ! さらに、雷鳴の魔石そのものの硬度はプラチナをも凌駕する……。歴史上、奴を討伐できた者など聞いたこともない!」


四人が死力を尽くして戦場へ向かうその頃、大壁の外の険しい岩場。


シン・カツ(Shin Katsu)もまた、リョウガに向かってあの怪物の核心である『雷鳴の魔石』の秘密を語り終えていた。二人は完全に武器を構え、迎撃の態勢を整える。


「行くぞ、リョウガ! 遅れるな!」


シンは咆哮とともにカタナを引き抜いた。次の瞬間、彼の肉体が虚空へと消え去る。奴は【瞬間移動( テレポート)】の秘術を使い、神速で天空へと肉薄したのだ。


「――『竜断の一閃( ドラゴンカット )』!!」


シンのカタナから鮮烈な紅蓮の剣気が放たれ、ネブルスの巨大な雲の身体の一部を激しく切り裂いた。


「ガァァァァァッ!!」


ネブルスは激怒し、天を割る雷鳴とともに、すべてを巻き込む巨大な『黒い竜نハ(گردباد)』を二人へ向けて放った。しかし、シンは再び『竜断の一閃』を繰り出し、その風の渦を真っ二つに切り裂いて無力化してみせる。


リョウガはシンの戦い方を見つめていた。シンは高電圧の落雷の網を、瞬間移動( テレポート)の魔法で完璧に見切り、紙一重で回避し続けている。


「よし……なら、俺の番だ」


レベル42へと至った俺は、まず【最速スキル】を限界まで駆動させた。


世界が減速する。上空から降り注ぐ無数の雷撃の軌道を見極め、俺は【影魔法(レベル6)】を解放した。肉体を漆黒の影の弾丸へと変え、弓から放たれた矢の如き神速で、奴の核心である『雷鳴の魔石』を目指して直線上を突進した。


だが、奴の漆黒のガス雲の領域に突入した瞬間、周囲の暗黒星雲の壁が意思を持つかのように急激に収縮し、俺の四方を完全に包囲したのだ。視界のすべてが闇に染まり、数千本の 稲妻 が同時に俺の肉体目掛けて降り注ぐ。


遠くからシンが『竜断の一閃』を連打し、雲の壁を切り開こうと加勢してくれるが、敵の質量が圧倒的すぎて前進することができない。俺は一旦後退し、荒れ狂うマナ(魔力)を必死に制御しようと歯を食いしばった。シンもまた、決定打を与えられずに焦燥を募らせる。


その時、ネブルスの周囲の暗雲が不気味に一層へと凝縮され、落雷のエネルギーを孕んだ「巨大な霧の爪(巨大なフォーク)」へと形を変えた。


その巨腕が、圧倒的な質量と電撃を伴って、逃げ場のない俺の頭上へと振り下ろされる。


シンが瞬間移動で割り込み、カタナで受け止めようとしたが、その凄まじい衝撃に弾き飛ばされた。


「ふざけるな……俺は、もう二度と……!!」


迫り来る絶望の巨腕を前に、俺の胸の奥の飢餓感が爆発した。俺は魂を削るように絶叫し、進化した【双焔魔導(レベル3)】を全開で解放した。


肉体の右半身から『すべてを焼き尽くす紅蓮の炎』が、そして左半身から『すべてを凍結させる絶対零度の蒼き氷の炎』が噴き出し、二色の業火が狂暴な渦となって天へと燃え上がった――!



第三十九話:嵐の牢獄と、戦友の決死刃


リョウガが【双焔魔導(レベル3)】を発動させた瞬間、天を衝くような紅蓮の爆炎と凍てつく蒼き氷の炎の「ハレ(ハロ)」が夜空へと吹き上がった。レベル3へと進化したその魔法は、以前とは比べ物にならないほどの絶大な魔力と全能感を彼の肉体に満たしていく。


「おおおおおっ!!」


リョウガは咆哮とともに激しく大地を蹴り、漆黒の暗雲が渦巻く天空へと跳躍した。迫り来る「モント(連続)」な雷撃の網を潜り抜けるため、彼は即座に【最速スキル】を重ねて発動する。


世界が減速する中、リョウガは猛烈な勢いで奴の核心である『雷鳴の魔石』へと進撃した 。その両拳が唸りを上げるたび、炎と氷の龍が天を裂くような一撃となって暗雲の障壁を力任せに打ち砕き، 強引に道を切り開いていく 。


下空からは、シン・カツ(Shin Katsu)が『竜断の一閃(ドラゴンカット)』を連打して彼を完璧にサポートしていた 。


「リョウガ! 見事だ、そのままだ! 行け、突き進め、少年んんんっ!!」シンの鼓舞の怒号が嵐に響く 。


しかし、ネブルス・ザ・シャドウ(Nebulus the Shadow)の領域の深淵は、想像を絶する地獄だった 。


突如として周囲の凄まじい大気と漆黒のガスがうごめき、リョウガは一瞬にして巨大な「雷撃の竜巻(雷竜巻)」の内部へと完全に閉じ込められてしまったのだ 。


四方八方から容赦ない高電圧の打撃が肉体を襲う 。

【最速スキル】を以てしても、落雷の速度と無数の数はリョウガ의駆動速度を遥かに凌駕していた 。


さらに、完全に激怒したネブルスは、己の周囲の全空間に対して全出力の無差別雷撃を放ち始めた。その凄まじい猛攻の前には、シンの【瞬間移動(テレポート)】魔法すらも安地を見出せず、奴は完全に防戦一方に追い込まれた 。


シンはカタナの刃を必死に構えて雷撃を弾き返すが、得意の『竜断の一閃』を繰り出す隙すら agency えられない 。


「くっ……!」


一瞬の隙を突かれ、巨大な一撃がシンの身体を直撃した 。奴は激しい火花を散らしながら、地上へと叩きつけられていく 。


一方、暗雲の牢獄に囚われたリョウガは、迫り来る雲の壁に向かって必死に炎の拳を叩き込み続けていた 。だが、どれほど焼き尽くし、凍らせても、漆黒の雲は無限に増殖して再び集束し、さらなる雷撃となって彼を容赦なく襲う 。すでに何本もの凶悪な 稲妻 が彼の肉体を貫いていた 。


(ハァ、ハァ……クソッ、この化け物、硬すぎる……! これ以上は前進できねえ 。肉体の消耗が限界に近い 。一刻も早く『雷鳴の魔石』の正確な位置を突き止めなければ……! )

リョウガが息を切らした، その瞬間 。ネブルスの放った特大の雷撃を孕んだ風の渦が、リョウガの胸元を直撃した 。


「がはっ……!?」


凄まじい衝撃とともに、リョウガの身体は天から真っ逆さまに墜落し、地響きを立てて岩場へと激突した 。激しい衝撃により彼の左腕は完全に感覚を失ی، 痺れて動かなくなる 。重傷だ 。


そこへ、勝利を確信したネブルスの巨大な「雷撃の爪(サンダークロー)」が、トドメを刺せんと空中からリョウガ目掛けて急降下してきた 。


「舐めるなよ……化け物風情がぁぁぁっ!!」


その時、満身創痍の身体を引きずり、シンが最後のマナを振り絞ってリョウガの前へと飛び込んだ 。


奴は落雷の爪がリョウガの肉体を粉砕するよりも早く、その身を盾にするように立ちはだかると、魂の底から咆哮した 。


「だがな、俺は戦士として、誇り高く死んでみせるッ! 『竜断の一閃(ドラゴンカット)』!!」


神速を超える紅蓮の剣気が迸り、リョウガに激突する寸前だった巨大な雷撃の爪を、正面から完全に相殺し、強引に切り落としたのだ!


「ガァァァァァッ!?」


怪物の悲鳴が響く中、シンはその場に力なく片膝をついた 。激しく呼吸を乱しながら、彼は背後のリョウガを振り返った 。


「……実に見事な戦いぶりだったぞ、リョウガ……」


限界を迎えた戦友の姿を見つمながら、リョウガは激しい焦燥感に駆られていた 。『雷鳴の魔石』へのアクセスは、彼らの想像を遥かに超えて絶望的だった 。


どうすればいい 。何をすればあの堅牢な嵐を打ち破れる 。


リョウガは動かない左腕を抱え、悔しさと怒りのあまり、残された右拳を地面へと激しく叩きつけた 。



「クソッ……! 畜生、畜生、畜生ぉぉぉぉっ!! なぜだ、なぜまたこの くそ な『無力感』が、俺の肉体を焼き尽くそうとしてやがるんだ……! 」


絶望の淵で彼が激昂した、まさにその時―― 。



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