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孤狼の転生~最速スキルでゼ 口から始める〜  作者: Ebi
(第一章:孤狼の覚醒と王の盾要塞 - Daiisshō: Korō no Kakusei to Ō no Tate Yōsai)
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第34話から第36話

第三十四話:王命の捜索令と、不穏なる隣国


城内の軍事作戦室、張り詰めた沈黙を破り、ルシアン・ヴェイル公爵(Duke Lucian Vale)が毅然とした態度で国王の前に進み出た。


「我が君、我々はこれ以上のリスクを冒すわけにはまいりません。どこの馬の骨とも知れぬ一人のガキに、アラマンドン王国の未来を委ねるなど言語道断。敵の第二波が押し寄せる前に、今すぐ隣国へ増援を要請すべきです。この『王の盾』が陥落すれば、次に滅びるのは彼ら自身の国。利害が一致している以上、彼らも必ず兵を動かすはずです。ですから、直ちに公式の要請状を送ることを提案いたします」


すると、宮廷魔導士団長であるアリスター・フェイド男爵(Baron Alistair Fade)が静かに首を振った。


「公爵、確かに慎重に**慎重を重ねる(気をつけましょう。)ことは重要です。しかし、我ら人間たちの 王国(同盟)は三百年前の遺物。今や各国の情勢も利害関係も大きく変容しております。隣国の中には、我が国の広大な領土や資源を虎視眈々と狙う貪欲な者も少なくない。彼らが送り込んでくる軍勢が、純粋な救援か、あるいは我が国を内側から乗っ取るための征服軍か、どうして確信(もちろん)**が持てましょうや。……私は領主ガレス殿の意見に賛同します。冒険者ギルドのマスター、イーゴリ・ストーンクラッシャーに確認したところ、あの虹色の指輪を持つ少年は本物の怪物。我が軍に引き入れる価値は十分にあります」


国王オーレリウス四世は顎に手を当て、深く思考を巡らせた後、威厳に満ちた声で告げた。


「……フム。ならば、まずはあの壁の向こう側からその少年を捜し出すのが先決だな。よし、特務の捜索部隊を編成し、壁外へ派遣せよ」


すかさず領主ガレス様が提案する。「陛下、それならば少年の仲間である冒険者たちを向かわせるのが最善かと存じます。彼らこそが、少年の足跡を最も正確に辿ることができるでしょう」


「許可する」国王陛下は深く頷き、直ちに彼らのための最高位の『王命の紹介状(あるいは通行許可証)』を執筆するよう命じた。「急げ。それから、我らは直ちに街の防衛陣形の再構築に取り掛かるぞ!」


軍議が閉会した後、領主ガレス様はすぐにヴァリックの邸宅へと足を運んだ。事の顛末を伝えると、ヴァリックは安堵の表情を浮かべて頭を下げた。


「領主様、本当にありがとうございます。実はリョウガ君の仲間たちも、まさに今、壁外への捜索許可を求めていたところなのです。これでようやく、彼らは友を救うために動くことができます」


ガレス様は神妙な面持ちで頷いた。「あの少年が生存していることを願うばかりだ。今の我々にできるのは、ここまでだ」


ガレス様が去った後、ヴァリックは手にした『王命のスクロール(国王の親書)』を携え、タリン、エナリル、キングラッドの三人が待つ部屋へと急いだ。彼は満面の笑みを浮かべて告げた。


「皆さん、素晴らしい朗報です! 国王陛下より、直々に『王命の捜索令』が下りました! これがあれば、厳重に閉ざされた南門の大外壁を合法的に通過し、リョウガ君を捜しに行くことができます!」


ヴァリックは少し声を潜め、真剣な目を三人に向けた。


「ですが、忘れないでください。一度あの黒い壁を越えて外へ出れば、軍からの支援は一切受けられません。文字通り、本当の地獄への単独行となります。……それでも、行く覚悟はありますか?」


キングラッドは自身の武器を強く握りしめ、迷いなく答えた。「当然だ。俺は我が命に代えても、あいつを連れ戻してみせる」


タリンも豪快に胸を叩いた。「ガハハ! あいつがいねえと俺はただの居候だからな! 命を預けた本物の大将だ、地の果てまでついて行ってやるさ!」


エナリルもマントのフードを少し持ち上げ、静かな、しかし確固たる決意の笑みを浮かべて頷いた。


三人は装備を整え、漆黒の壁の向こう、孤独な 狼 が待つ暗闇の戦場へと向かって、力強く一歩を踏み出すのだった。



第三十五話:結界の真実と、死者の地への同道


翌朝、キングラッド、タリン、エナリルの三人は、固く閉ざされた南門のごく近くにある大外壁へと向かって歩みを進めていた。


門の前に辿り着いた時、一人の男が彼らの行く手を阻むように立っていた。その手には、高位の魔力を帯びた豪華な『魔導士の杖(魔法の杖)』が握られていた。


男は静かに歩み寄ると、気品のある声で自己紹介をした。


「私は宮廷魔導士団長のアリスター・フェイド男爵(Baron Alistair Fade)だ。この壁外への捜索任務、私も同行させてもらうよ」


三人は驚き、互いに顔を見合わせた。まさか軍の最高幹部の一人が自分たちについて来るとは夢にも思っていなかったのだ。


背後にいたヴァリックが、すぐに彼らに耳打ちした。「皆さん、こちらのお方は国王陛下からも絶大な信頼を得ている宮廷魔導士団長様ですよ」



三人は慌てて敬礼し、驚きを隠せないまま笑顔を浮かべた。


「男爵様のような偉大な魔導士が同行してくださるなら、これほど心強いことはありません!」


アリスターは薄く笑みを浮かべた。「私も君たちと共にこの任務に就けることを嬉しく思うよ。リョウガ君には、実によい仲間たちが揃っているようだね」


タリンが誇らしげに胸を叩いた。「おうよ! 当然だぜ!」


やがて重厚な鉄の門が開き、四人は大壁の外へと足を踏み込んだ。しかし、あの夜の戦場へと入った瞬間、彼らは異様な光景と鼻を突く猛烈な異臭に襲われた。地面は見渡す限り魔物の青黒い血で染まり、腐敗した屍骸の山から凄まじい悪臭が漂っていたのだ。タリンは鼻を抓まみながら声を荒げた。



「おいおい、なんだこの鼻が曲がりそうなクソ田舎の臭いは! なんであの夜、街の中にいた時は、この臭いが全くしなかったんだ?」


エナリルもマントのフードを抑えながら同意した。


「本当に凄い悪臭……。でもタリンの言う通りね。これほどの数の屍骸が壁のすぐ外にあるのに、どうして街の中には一切臭いが届かなかったのかしら?」


すると、杖を突いて歩くアリスターが冷静に説明を加えた。


「この『王の盾』の街は、数百年前から常にこの南門の防壁側から魔物の襲撃を受けてきた。かつては大戦のたびに凄まじい死臭が市街地に流れ込み、民の病や混乱の原因になっていたのだよ。そこで古の偉大な魔導士たちは、この大壁に特別な『防臭の結界(魔法の匂いの壁)』を施したのだ。街の内部の空気を清浄に保つため、そして同時に、魔物の侵入を防ぎきれなかったが『防衛の結界』としても機能するようにね」


結界の不完全さに気づいたキングラッドが、皮肉混じりの笑みを浮かべて鼻で笑った。


「ふっ……どうやらその古の魔法とやらは、防臭機能(匂いの壁)しかまともに働いていなかったようですね。防衛の結界(防御壁)の方は、あの夜の襲撃でいとも簡単に魔物どもに破られてしまいましたから」


タリンも豪快に笑い飛ばした。「ガハハ! 全くだ! なんてお粗末な防御結界だよ!」



エナリルは慌ててアリスターを振り返り、申し訳なさそうにフォローを入れた。「あ、あの……男爵様、気を悪くしないでくださいね。この二人には悪気はないのです。でも……本当に、なぜあの夜は結界が機能しなかったのでしょうか?」



アリスターは気を悪くした様子もなく、ただ鋭い眼光を崩さずに言った。


「……その理由を突き止めるために、私は君たちに同行しているのだよ。新種の魔物の能力か、あるいは内側からの破壊か……。真実を暴かねばならん」


四人は会話を終え、見渡す限りの魔物の屍骸の山を掻き分けるように、リョウガの足跡を追って歩き続けた。


一方その頃、大壁から数キロメートル離れた岩壁の隠れ家。


一日の休息を取り、シン・カツの調合した不思議な薬草のおかげで、俺――ハナシ・リョウガの肉体は見違えるほどに回復し、マナ(魔力)も満ち溢れていた。俺は衣服を整え、シンに向き直った。


「シン、お前には命を救われた。俺をあの夜の戦場から引き上げて治療してくれた恩、どう返せばいい?」


シンはカタナを腰に帯び、ふっと薄い笑みを浮かべた。


「恩返しだと? ならばもっと強くなれ。二度と仲間に無用な心配をかけるな。今頃、あの街の連中がお前を捜して躍起になっているはずだ。さっさと奴らの元へ戻るがいい」


俺はシンの装備に目を向けた。「お前は、これからどうするんだ?」


シンは鋭い眼光で暗闇の先を見つめた。

「俺の任務はまだ終わっていない。魔物の異常活性化の源流を突き止めるため、ここからさらに【死者の地(死者の国)】の境界へと近づくつもりだ。現在の状況下では、文字通り死を意味する危険な領域だがな……。だが、任務は絶対だ」


それを聞いた瞬間、俺の胸の奥で、レベル42へと至ったマナが静かに、しかし凶暴に脈打ち始めた。


「……なら、俺もお前について行く。お前の危険な調査任務を手تع札うことで、少しは命の恩を返せるはずだ」


シンは一瞬驚いたように俺を見たが、すぐに呆れたように肩をすくめた。

「好きにするがいい。だが、今度こそ本当に死に駆けても、もう二度と助けてはやらないからな」


「望むところだ」俺は冷酷に微笑んだ。


二人の孤独な 狼 ――神速の少年と、東の国の亜人(ニンジャ)は、禍々しい暗雲が垂れ込める【死者の地】の深淵に向かって、静かに闇へと溶け込むように走り出した。


第三十六話:魔導の足跡と、死者の地の魔霧


(...前略...)


捜索部隊が魔物の屍骸の山を掻き分けて進む中、タリンはついに限界を迎え、大斧を地面に突き立てて声を荒げた。


「おいおいおい、いい加減にしてくれ! 先へ進めば進むほど屍骸の数が増えて、臭いも地獄のようになってやがる! 俺はもうこのクソ臭い匂いに耐えられねえぞ!」


するとキングラッドが、ニヤニヤとした嘲笑を浮かべてタリンを小馬鹿にした。


「ハッ、お前、今さら何を言っているんだ? 俺たちがこれまでお前と旅をしてきて、どれほど酷い匂いに耐えてきたか、これで少しは理解できたか?」


タリンは顔を真っ赤にして叫んだ。「あぁん!? 意味が分からねえよ、何が言いたいんだ!」


その様子を見て、エナリルとアリスター男爵(Baron Alistair Fade)が小さく失笑した。


「おいっ! エナリルも男爵様も笑ってんじゃねえ! キングラッド、ふざけるなよ! 俺は絶対に臭くねえからな!!」タリンの怒声が戦場に響き渡る。


その時、アリスターが「待ちなさい」と厳格な声を放った。全員がピタリと足を止める。


アリスターは自身の『魔導士の杖』を掲げ、静かに詠唱を始めた。


「――日の出の夜明の光よ、我らに慈悲の恩恵を与え、進むべき路を指し示せ」


杖の先端から鮮烈な『魔導の光』が放たれ、地面を照らし出した。すると、雪原の上に一本の奇妙な『足跡』がくっきりと浮かび上がった。それは、何者かが別の人間を抱え上げて運んだ痕跡を示していた。


タリンが足跡を覗き込み、怪訝そうに尋ねた。


「おい、男爵様。足跡は一つしかねえじゃねえか。なんでそいつが別の奴を運んだって分かるんだ?」


アリスターは薄く笑みを浮かべ、足跡の一点を指差した。


「見なさい、タリン。最初はただの浅い足跡だが、この地点から急激に足跡の『深さ(深さ)』が増している。これは、ここで別の重量のある存在を担ぎ上げ、肉体にかかる負荷が増した明白な証拠だ。足跡は東の方角へ向かっている。行くぞ」


「なるほど……さすがは宮廷魔導士団長様だ」キングラッドが感嘆の声を漏らし、一同は東へと進路を取った。


歩きながら、キングラッドが不安げに眉をひそめる。


「しかし、何者かがリョウガを助けた、あるいは捕らえたということか。だが、この街の近くに人間の集落など存在しないはず。一体誰の仕業だ?」


エナリルがマントのフードを抑えながら言った。「まずはこの足跡を追いましょう。きっとリョウガに繋がっているはずよ」


四人はさらに歩みを進めたが、ある奇妙な岩場の前で、魔導の光に照らされていた足跡がぷつりと途絶えて消え失せてしまった。


キングラッドがアリスターを振り返った。「男爵様、足跡が消えました。次はどちらの進路へ?」

アリスターは周囲の複雑に入り組んだ岩壁を見渡し、冷静に答えた。


「ここからは少々の『運(luck)』に頼るしかなかろうな。しかし案ずるな。リョウガ君は確実に重傷を負っていたはず。彼を担いで運んだ者が、この険しい岩場をそこまで遠くへ移動できたとは考えにくい。この周囲を徹底的に捜索するぞ」


一方その頃。


俺――ハナシ・リョウガとシン・カツ(Shin Katsu)の二人は、すでに【死者の地(Land of the Dead)】の境界線のすぐ近くまで到達していた。


「……これが、死者の地か」


俺は目の前に広がる禍々しい景色を睨みつけ、喉の奥を鳴らした。この世界に来て初めて感じる、五感を窒息させるような凶暴で禍々しい『不吉なマナ(魔力)』が、空気そのものを支配している。


目視だけでも、アラマンドン王国との境界線が一目で理解できた。そこには草木の一本すら存在せず、大地は異様なほどに乾燥し、不気味な灰褐色に干からびている。そして空は、常に不気味な灰色の霧と暗雲に覆い尽くされていた。


シンはカタナの柄に手をかけたまま、冷酷に告げた。



「俺たちが今いるのは、まだ『死者の地』の境界線(入り口)に過ぎない。この奥へ一歩でも入れば、そこには吸い込むだけで即死する『猛毒の魔霧(Deadly Magical Mist)』が渦巻いている。たとえ肉体が耐え抜いたとしても、あまりの毒性の強さに確実に意識を失い、動けなくなったところを魔物どもに貪り喰われるのがオチだ」


俺は右目の魔眼を細め、その漆黒の霧の深淵をじっと見つめながら、静かに沈黙した。


(レベル42……そして新しく手に入れた双焔の魔法。この地獄の領域こそが、俺がさらに神速を極めるための絶好の狩場だ)

死を告げる霧が牙を剥く中、俺と亜人のニンジャは、禍々しい深淵の奥へとさらに足を進めるのだった。




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