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終活アイドル ラスト☆スターズ ~アイドルの寿命は短い!~  作者: 水鳥 いつき


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8/20

8話 遂にMV完成! 初めての路上ライブ

ついにMVが完成した。


佐々木プロデューサーがレッスン最後に俺たちを集めた。

「明日は路上ライブをやります。効果は薄いかもしれないけど、直にあなたたちを見てもらうチャンスよ。これで掴んだファンはこれからの土台になるから大事、みんな気合いを入れてね」



翌日。


とあるショッピングモールの一角。控室で俺たちは着替えやメイクを終わらせた。


緊張をほぐすためかキヨがみんなに「俺たちの初めてのライブだね。とにかく一生懸命やろう」と声をかけた後、突然腕立て伏せを始めた。ヨーくんはずっと発声練習をしているが、何か呪文を唱えているように見えた。シーちゃんは本当に謎の呪文を唱えていた。よく聞くと般若心経だ。リョウだけが静かに本を読んでいた、本のタイトルは『メキメキ上達ボイストレーニング』だった。


俺みたいな陰キャがあんなところで人前で歌うなんて、あの葬式以前は思いもしなかった。おそらくメンバーも同じ気持ちだろう。でもノリのためにもとにかく頑張ってみよう。


「さぁ、行くわよ! 頑張ってね」

佐々木プロデューサーが手をポンと叩いた。



西野昭雄アキは中学2年生。スポーツも出来、校内順位は1位で周囲からは天才と言われていた。毎日みんなから褒められるが、何か空虚な日々を過ごしていた。


凄い凄いとか言われるけど何が凄いんだ。

どうせ勉強もスポーツも、やれば出来るだけだろ。

みんな何が面白いんだろ…。


たまたまシャープペンシルを買いにショッピングモールを歩いていると、前で派手な衣装を着た人たちがビラを配っていた。


「ラスト☆スターズです! よろしくお願いします!」


アキが通り過ぎようとした時、青い衣装の男が近づいてきてアキにビラを渡した。


「おにいさん、アイドルって一生出来る仕事じゃないよね。売れる保証もないしコスパ悪くない。なんでそんな事やってるの?」


細身のリョウがアキを一目見て答える。


「僕にとってアイドルは未知の世界だ。でも、だからこそ挑戦なんだ、挑戦こそ輝きなんだ。僕はアイドルという挑戦を見つけた」


「挑戦がアイドルって、他になかったの? もっとマシなのあるんじゃないの?」


「どうやら君は人生を冷たい方程式と思っているね。効率良く、そして最大限の利益を確保しながら生きる、それが幸福だと思っているなら間違いだよ」


「どういうこと?」


「僕もかつてはそう思っていた。とにかく効率良く生きるのが最適だと。でもこの歳になってついに気づいたんだ、自分の間違いを。幸福の無い人生を幾ら縮めたって幸せにはならない。幸せとは、人生とは一瞬の輝きなんだ」


「何それ?」


「よかったら僕たちのライブ観て行ってよ」



ライブ開始、5人がステージに登る。アキは20人に満たない観客の1人、その中にはマコとアヤカ、そして短い髪の一部を三つ編みにして黒のミニスカートを履いた可愛いカッコのモモカがいた。その他に立ち止まった人たちは、明らかにただの暇つぶしだ。


曲が始まった。ぎこちないダンス、歌もイマイチ。

まだまだ練習不足じゃないか……一生懸命やってるのわかるけどね。よくこのクオリティーで人前で歌うね、これじゃ売れないな。


アキは心の中で目の前のグループを分析する。さて、さっきの人はどうかな、なんか老害みたいに言ってたけど。


リョウも必死に踊っていた。アイドルになってから必死に練習をしてきたが、運動も歌もこれまでの70年間やってきたことはなかった。


あんまり大したことないな……もう十分かな……そう思った時、リョウが足をひねった。気づいたのは、リョウだけを観ていたアキだけだった。


あれはやばいひねり方したな。痛そうだな、引きずってるじゃん。やめた方がいいよ。


リョウが痛みに顔を歪めた次の瞬間、リョウは輝かしい笑顔を見せ、ダンスもより激しくなっていった。

汗が頬を流れる。明らかに痛いはずなのにリョウは笑った。


えっ……


まるで痛みなど何処かに行ってしまったかのように、それまで以上に踊っていた。


そしてフィニッシュ。20人に満たない観客は拍手を送っていた。そしてアキにはリョウが光ってみえた。


すげぇ……


最高の笑顔でステージを降りたリョウに、アキが血相を変えて駆け寄る。


「おにいさん、足痛くないの? なんでそんなに笑って出来たの」


リョウは静かに微笑んで答えた。


「何故なら、これが僕の最後のステージだから」


「どういう事?」


「そう思って僕はステージに立った。明日は無い、だから後悔しないよう自分を出し切ったんだ。僕はやれることはやった、最高だった。観てくれたお客さんがみんな拍手をくれたよ。最高の賛辞だ」


「確かにみんな拍手はしてたけど、これだけの人数じゃ寂しくない……」


「数は問題じゃない。2万人だろうが20人だろうが観てくれた人全員が拍手をくれたんだ。僕は明日死んでも良いよ」


アキの心に何か熱いものが生まれた気がした……


「カッコよかったよ、おにいさん。僕はおにいさんたちを応援するよ。ステージ観れて良かった。僕はアキ、またライブやる時は絶対観にくるね」


目を輝かせ、そう言ってアキは去っていった。

帰り道、アキはリョウの「アイドルという挑戦を見つけた」という言葉を何度も呟いた。そして自分も見つけてやるぞと自分に誓った。



「大丈夫リョウくん、足引きずってるよ」ヨーくんが心配そうにリョウに近づく。


「みんなはどうだった? 初めてのライブ」


お互いが顔を見合わせて笑顔になった。みんな想いは一緒だった。緊張したけど最高の充実感。

紛れもなく人生の一瞬の輝きだった。


後日、アキは数学の難問リーマン予想問題を15歳で解き、陸上では日本人で初めて100mで9.7秒を切ることとなった。

アキの挑戦は続く……

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