17話 ツアーファイナル! 5人の友情
東京に戻った。
長かった遠征も今日で最後だ、今回のツアーの評判は凄くよかった。
しかし、問題も発生した。なんと俺達のライブチケットが転売されていることがわかった。
転売ヤーと呼ばれる人達が俺達のチケットを高額で売っているのだ。
「佐々木さん、転売対策お願いしますよ」
「勿論よ、でも転売ヤーに狙われるという事はあなた達の人気が上がったってことでもあるから」
「ファンのみんながこれなくなっちゃうと困るから、良かったモモカさん来れるって」
スマホのコメント欄にモモカの書き込みをヨーくんが見つける。他のメンバーもスマホを開く。
「アヤカちゃん、来るんだ。名古屋に来てくれたのにまた!」
「アキくんは配信で観るといってるな。転売ヤーが手が出せない配信の良いところだ」
俺もスマホをチェックする。macoの名前を見つけチケットが買えた事を確認できた、握手会も来てくれそうだ。
「マキちゃんも来るで、大阪までわざわざ来てくれたのに。忙しいのに2度も……」
リハーサル。みんな気合は入っていたが特にシーちゃんは違っていた。
歌もダンスも素晴らしかった。
「やるで~」
開場を待つファンが外を埋め尽くす中、本番1時間前の控室。
緊張感の中メンバーは本を読んだり、お菓子を食べたり、髪の毛を整えたりしていた。
黄色い衣装に着替えていたシーちゃんが、突然ふらりと椅子に崩れ落ちる。
ドスンという音にメンバーが振り向く。
「やっぱ来たんか……」
「……なぁ、みんな。ちょっと、寄ってくれへんか」
そのかすれた声に、ゲン、キヨ、リョウ、ヨーくんが駆け寄る。
シーちゃんの顔からは急速に血色が失われていく。息が荒い、苦しそうだ……
「……悪いな。せっかく若返らせてもらったのに、俺、もう無理みたいやわ。……ゴメンな、最後まで一緒にステージ立てんで。……でも、俺、本当に幸せやった。70年何もなく生きてきて、最後にこんなに熱い夢を見させてもらって……。みんな、アイドルやってよかった。……俺を選んでくれて、ありがとうな。マキちゃんもう1回会いたかったな」
激しく咳き込み、苦しそうな呼吸を振り絞ってさらにシーちゃんは呟く
「ノリの為にも武道館行ってや」
シーちゃんは震える手で4人の手を順番に握り、最後は「ちょっと眠いわ……」と、いつものようにおどけた微笑みを浮かべた。
そしてそのままゆっくりと瞳を閉じた。メンバーは涙ながら叫ぶ!
「シーちゃん死ぬな!」
「まだ3年あるのに……」
「お願い死んじゃやだよー!」
俺は声が出せない…。
「シーちゃん!」 俺はやっと声が出せた。そしてシーちゃんを揺らした。
シーちゃんは反応しなかった。俺はもう一度大きく身体を揺する。
しかしシーちゃんが返事をすることはなかった。
開演前、場内に流れる「本日の公演は、出演者の急病により中止とさせていただきます」というアナウンスが流れる。マキもマコも何が起こったのわからないまま呆然としていた。
事情を知らないファンの怒号と悲鳴、そして啜り泣きが響くアリーナ。
控室では衣装を着たままの4人がただ冷たくなった仲間の手を握りしめ1歩も動けずにいた。
「5年以内」という期限があまりにも突然、そして「普通の死」という重みを持って1人目の仲間を奪い去った。
「5年以内」その言葉を若返った俺達はどこか遠い未来の話だと思っていた。
だが違った。
寿命は決まっている、待ってはくれない。 さっきまで元気だったのに死は一瞬でやって来た。
シーちゃんはもういない……
それだけが現実だった。




