14話 初アルバム、再びツアーに出る!
ここは事務所。
佐々木プロデューサーが資料を配る。
「みんな、おめでとう」
「ファーストアルバムの発売が決定したわ」
拍手。
喜ぶメンバー。
「タイトルは『恋する運命おせんべい』、そして全国6都市を回ります」
東京、名古屋、大阪、福岡、札幌、最後に東京に戻って最後のライブをやることになった。
それぞれの都市での会場も以前より大きくそれぞれ2000人規模になった。
2000人……果たして埋まるのだろうか? 期待と不安を胸にツアーが始まった。
初日の東京公演からラスト☆スターズのライブが荒れた。
原因は俺だった。
ライブが始まる前の晩に放送された番組『徳川無道先生と行く心霊バスツアー』でのことだ。番組の中でホテルに帰った俺の部屋に映画で有名な髪の長いダサコの霊が現れる。俺はダサコの可哀想な生い立ちを知っているのでついダサコちゃん頑張ってねと涙してしまったのだが、なぜか同情する俺をダサコは追いかけ回す。その後、かけつけた徳川無道先生がダサコを除霊して番組は終わったのだが、俺のリア恋勢のファンたちが激怒してしまった。
部屋に女を連れ込んだ。イチャイチャしやがって。監視カメラに映ってたから言い訳できない。ダサコといつから付き合ってたの? 汚らわしい私に触らないで! と握手会で俺は謝りっぱなしだった。中には泣き出してしまう子も出てしまい大変だった。
「ダサコさんとは遊びだったんですか?」
「違います!」
「じゃあ本気だったんですか?」
「違います!!」
別のファン。
「私、髪伸ばします」
「なんで!?」
「ダサコさんみたいに」
さらに。
「私もテレビから出てきたら会ってくれますか?」
「出てこないで!」
SNSで#ダサコ死ねがトレンドに上がってしまった。
俺の浮気が原因で皆様にご迷惑をかけました。今後こんな過ちは二度としません、もしまたしたら坊主になりますと謝罪動画を上げる事でなんとかこの件は収まった。
マコちゃんは思ったより優しかった。俺をツアー頑張ってねと優しく送り出してくれた。 帰りがけにもしダサコがまたゲンちゃんに近づいたら地獄に落とすとか怖い事は言ってたけど……
とにかく残りのツアーを頑張らないと、さぁ遠征だ。
北海道、札幌に着いた。
キヨは雪を探してくると走っていった。北海道だからってこの季節に雪はあるのだろうか?
シーちゃんとヨーくんは海鮮丼とソフトクリームを食べに行った。
俺とリョウは札幌ラーメンを食べた。それから、俺達は時計台を見に行った。
リョウが時計台の前で呟く。
「この時計台の素晴らしさが何人に響くだろう」
そしてリョウはある言葉を思い浮かべる。
Boys be ambitious. 少年よ大志を抱け。
良い言葉だ。 アキくん、アメリカで頑張れよ。
握手会のリョウに並ぶファンはリョウのクールな立ち振舞が大好きな人たちで、なぜかリョウに厳しいセリフを言わせるのが流行っていた。
「痩せろ、豚! って言ってください」
「ご飯食べたら皿はすぐ洗えグータラ!って言って」
「毎日、必ず予習しろ馬鹿!ってお願いします」
「気合だーでお願い、ビンタしてくれますか?」 それは無理だ……
わざわざ何でこんな事をいわれたいんだろと思うがリョウは淡々とこなしていた。
ホテルに戻る。 遠征初日、俺の部屋はリョウと一緒だった。キヨかヨーくんと一緒だと気まずいと思っていたのでホッとした。でも、ヨーくんにはあの発作が出たらいつでも呼んでとはいっておいた。
ヨーくんはそばにメンバーがいるから気が楽と言っていた。
俺はベットの上でスマホでSNSのチェックをしていた。リョウはいつものように、今日握手会に来てくれた人をリョウ式でノートに書き留めていた。リョウは今まで来てくれた人をほとんど覚えていた。
そして、たとえば痩せろと言った人が本当に痩せたら「頑張ったね」と声をかけていた、凄い。
「リョウは凄いね。握手会の事、ほとんど覚えてるじゃん。僕、絶対無理」
「ゲンちゃん、人間が成長するためには本を読むのがいいんだよ。でもそれよりももっと良い方法がある」
「なんだろ?」
「それはね、人と会い、話すことだよ。僕はこの1年ちょっとで今まで70年間で出会った人より多くの人と出会えた。本当に素晴らしい。僕達の残された時間はわからないがこんな充実した時間を過ごせてノリに感謝だよ」
「そして、これだけの人と会ってやっとわかった事があったよ」
「何?」
「女の子はわからないって事がわかった」
俺とリョウはお互いを見てそうだねと笑った。




