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終活アイドル ラスト☆スターズ ~アイドルの寿命は短い!~  作者: 水鳥 いつき


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12/20

12話 1周年の打ち上げ! 武道館へ向かって

1周年ライブは大成功に終わった。

今日、俺達はノリの墓参りに来ていた。お葬式のあの日、「ノリのお前らアイドルになれ、ワシの代わりに青春しろ」の言葉を思い出す。俺達の寿命があと4年以内で尽きるとはにわかに信じられない。それぐらい、俺達の肉体は若く、そして忙しい毎日を送っていた。

墓参りの後は事務所に行って佐々木プロデューサーに会いに行った。 


佐々木さんは俺達が来るのを待っていたようだ。

俺達の顔を見るなり一言、


「アルバムの発売が決定したわ。それに伴い、リリースイベントをやります」

「それともう一つ」 


「…?」


「半年以上先の話だけど、アイドルフェスの出演が決まりました。事務所を越えたライブよ、場所は代々木体育競技場、メインはあのアイドルグループ、ストームが出るわ」


現在日本ナンバーワンのアイドルグループ、ストームとの共演。代々木体育競技場はキャパ8000人だ。

俺達は震えた。 出演は4グループ。ラスト☆スターズは3番目、ストームが当然トリでその前を務める。


「ラスト☆スターズをより知ってもらうチャンスよ、頑張ってね」


「佐々木さん、ありがとうございます。俺たちもっともっと頑張ります!」


俺たち全員声を揃えて佐々木プロデューサーに感謝をのべた。

佐々木さんは泣いていた。


帰り道、キヨが呟く。


「今日は献杯と乾杯をしよう」


たまには、メンバーみんなで呑むのも良い。

途中、お酒とつまみを買ってシェアハウスに戻った。  


リビングのテーブルには唐揚げ、枝豆、ポテトサラダ。


そしてノリの写真。


キヨが缶ビールを掲げる。


「ノリ、一周年ライブ成功したよ」


「献杯!」


「献杯!」


5人の缶が軽くぶつかった。


最初は真面目な会だった。思い出話、ライブの反省会に武道館への決意。

しかし酒が進むにつれ空気はどんどん緩くなっていった。


シーちゃんは酔っぱらって関西弁が3割増し。

キヨは腕立て伏せを始める。

リョウは「酔いと哲学の関係について考察してみよう」と誰も聞いていない話を始めた。

ヨーくんは顔を真っ赤にして笑っている。


そして俺は酒にすごく弱かった。


「ゲンちゃん大丈夫?」


ヨーくんの声が遠く聞こえる。


視界がぐらぐらし身体が熱い。早くも限界を迎えていたのだった。


キヨの腕立て伏せのスピードが音速を超えて残像しか見えない。シーちゃんの「なんや!」が物凄いエコーをかけているように聞こえ、リョウはなぜ古代ギリシャ人のカッコをしているのだ。

そしてヨーくん笑顔、唇、本当に可愛い……。


「ちょっと横になる……」


そこで記憶が途切れた。


気が付くとリビングには俺とヨーくんしかいなかった。


部屋は薄暗い。


「あれ……みんなは?」


「帰ったよ」


「帰った?」


シェアハウスなのに? 意味が分からない。ヨーくんはふらふらしながら俺の隣へ座った。

顔が真っ赤だった。かなり酔っている。


「ゲンちゃん」


「な、なに?」


ヨーくんが俺の肩にもたれかかる。


近い、近すぎる。


「知ってた…?」


「何を!?」


「リョウくんとシーちゃん、あの2人出来てるの」


「うそ!」


「それから、僕ね……」


「ずっと言いたい事あったんだ」


嫌な予感がした。


「ゲンちゃん好き」


「へ?」


「大好き♡」


俺の脳が停止した。


「いやいやいや!」


ヨーくんは聞いていない。酔っぱらいである。


「ゲンちゃん」


上着を脱ぎ始める。


「なんで脱ぐんだ!?」


「暑いから」


それはそうだ。でも今じゃない。


「落ち着こう!」


「ゲンちゃんも脱いで」


「!!!」


俺は抵抗したがヨーくんに抱きつかれ上着を脱がされ、さらにソファーに押し倒された。

ヨーくんの唇が俺の唇に重なり、脚が絡まる。

そして熱い吐息が首筋に、指が優しく俺の胸をさする。


「ふ、ふ、ふ……ほーらこんなに……」


あっ……ダメそんなの……


いや……こんなの……


二人の息がこれ以上ないくらい荒くなる。


「僕にも……して……」


「は、はい……ヨー様……」


頭の中がぐるぐる渦巻く、心臓の激しい鼓動が止まらない。そしてまた意識が遠くなる。俺はどうなってしまうんだ……


朝が来た。目を覚ます。


「うわっ!?」


俺はベッドで腕枕の中にいた。隣りにいるのは、


キヨだった。


しかも上半身裸。


「うわああああああ!!」


キヨはまだ寝ている。


その時だった。リビングのドアが開いた。


「ゲンちゃん!」


マコだった。俺は固まり、マコも固まった。


ベッドで裸の二人。

最悪の構図。


「そんな……」


マコの目に涙が浮かぶ。


「信じてたのに……」


「違う!」


「私……推し変する!」


「待ってぇぇぇぇぇ!!」


俺は泣きながら手を伸ばした。


「マコちゃん!」

「マコちゃぁぁぁん!!」


肩を揺さぶられる。


「マコちゃん!!」


「ゲンちゃん!」


目を開けたら、目の前にシーちゃんがいた。


「あ、起きた」


リビング、テーブル、ノリの写真。部屋はそのままだった。


「……え?」


「大丈夫か?」


シーちゃんが笑う。


「さっきからずっとマコちゃんマコちゃん言うてたで」


周りを見る。みんながいる。


キヨ爆笑。ヨーくん爆笑。リョウまで珍しく笑っている。


「良い夢でも見てたの?」


とヨーくん。


「夢か……」 ホッと胸をなでおろす。


「何の夢やったん?」


とシーちゃん。


「絶対言わない!」


「怪しいなぁ、どんな良い夢みてたのかなぁ?」ヨーくんがイタズラな顔をする。


「マコちゃん出てきたんやろ?」


「うるさい!」


俺が顔を真っ赤にすると、リビングは大爆笑に包まれた。


ノリの写真が、なんだか少し笑っているように見えた。

俺達の2年目は、こんなふうに始まった。

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