12話 1周年の打ち上げ! 武道館へ向かって
1周年ライブは大成功に終わった。
今日、俺達はノリの墓参りに来ていた。お葬式のあの日、「ノリのお前らアイドルになれ、ワシの代わりに青春しろ」の言葉を思い出す。俺達の寿命があと4年以内で尽きるとはにわかに信じられない。それぐらい、俺達の肉体は若く、そして忙しい毎日を送っていた。
墓参りの後は事務所に行って佐々木プロデューサーに会いに行った。
佐々木さんは俺達が来るのを待っていたようだ。
俺達の顔を見るなり一言、
「アルバムの発売が決定したわ。それに伴い、リリースイベントをやります」
「それともう一つ」
「…?」
「半年以上先の話だけど、アイドルフェスの出演が決まりました。事務所を越えたライブよ、場所は代々木体育競技場、メインはあのアイドルグループ、ストームが出るわ」
現在日本ナンバーワンのアイドルグループ、ストームとの共演。代々木体育競技場はキャパ8000人だ。
俺達は震えた。 出演は4グループ。ラスト☆スターズは3番目、ストームが当然トリでその前を務める。
「ラスト☆スターズをより知ってもらうチャンスよ、頑張ってね」
「佐々木さん、ありがとうございます。俺たちもっともっと頑張ります!」
俺たち全員声を揃えて佐々木プロデューサーに感謝をのべた。
佐々木さんは泣いていた。
帰り道、キヨが呟く。
「今日は献杯と乾杯をしよう」
たまには、メンバーみんなで呑むのも良い。
途中、お酒とつまみを買ってシェアハウスに戻った。
リビングのテーブルには唐揚げ、枝豆、ポテトサラダ。
そしてノリの写真。
キヨが缶ビールを掲げる。
「ノリ、一周年ライブ成功したよ」
「献杯!」
「献杯!」
5人の缶が軽くぶつかった。
最初は真面目な会だった。思い出話、ライブの反省会に武道館への決意。
しかし酒が進むにつれ空気はどんどん緩くなっていった。
シーちゃんは酔っぱらって関西弁が3割増し。
キヨは腕立て伏せを始める。
リョウは「酔いと哲学の関係について考察してみよう」と誰も聞いていない話を始めた。
ヨーくんは顔を真っ赤にして笑っている。
そして俺は酒にすごく弱かった。
「ゲンちゃん大丈夫?」
ヨーくんの声が遠く聞こえる。
視界がぐらぐらし身体が熱い。早くも限界を迎えていたのだった。
キヨの腕立て伏せのスピードが音速を超えて残像しか見えない。シーちゃんの「なんや!」が物凄いエコーをかけているように聞こえ、リョウはなぜ古代ギリシャ人のカッコをしているのだ。
そしてヨーくん笑顔、唇、本当に可愛い……。
「ちょっと横になる……」
そこで記憶が途切れた。
気が付くとリビングには俺とヨーくんしかいなかった。
部屋は薄暗い。
「あれ……みんなは?」
「帰ったよ」
「帰った?」
シェアハウスなのに? 意味が分からない。ヨーくんはふらふらしながら俺の隣へ座った。
顔が真っ赤だった。かなり酔っている。
「ゲンちゃん」
「な、なに?」
ヨーくんが俺の肩にもたれかかる。
近い、近すぎる。
「知ってた…?」
「何を!?」
「リョウくんとシーちゃん、あの2人出来てるの」
「うそ!」
「それから、僕ね……」
「ずっと言いたい事あったんだ」
嫌な予感がした。
「ゲンちゃん好き」
「へ?」
「大好き♡」
俺の脳が停止した。
「いやいやいや!」
ヨーくんは聞いていない。酔っぱらいである。
「ゲンちゃん」
上着を脱ぎ始める。
「なんで脱ぐんだ!?」
「暑いから」
それはそうだ。でも今じゃない。
「落ち着こう!」
「ゲンちゃんも脱いで」
「!!!」
俺は抵抗したがヨーくんに抱きつかれ上着を脱がされ、さらにソファーに押し倒された。
ヨーくんの唇が俺の唇に重なり、脚が絡まる。
そして熱い吐息が首筋に、指が優しく俺の胸をさする。
「ふ、ふ、ふ……ほーらこんなに……」
あっ……ダメそんなの……
いや……こんなの……
二人の息がこれ以上ないくらい荒くなる。
「僕にも……して……」
「は、はい……ヨー様……」
頭の中がぐるぐる渦巻く、心臓の激しい鼓動が止まらない。そしてまた意識が遠くなる。俺はどうなってしまうんだ……
朝が来た。目を覚ます。
「うわっ!?」
俺はベッドで腕枕の中にいた。隣りにいるのは、
キヨだった。
しかも上半身裸。
「うわああああああ!!」
キヨはまだ寝ている。
その時だった。リビングのドアが開いた。
「ゲンちゃん!」
マコだった。俺は固まり、マコも固まった。
ベッドで裸の二人。
最悪の構図。
「そんな……」
マコの目に涙が浮かぶ。
「信じてたのに……」
「違う!」
「私……推し変する!」
「待ってぇぇぇぇぇ!!」
俺は泣きながら手を伸ばした。
「マコちゃん!」
「マコちゃぁぁぁん!!」
肩を揺さぶられる。
「マコちゃん!!」
「ゲンちゃん!」
目を開けたら、目の前にシーちゃんがいた。
「あ、起きた」
リビング、テーブル、ノリの写真。部屋はそのままだった。
「……え?」
「大丈夫か?」
シーちゃんが笑う。
「さっきからずっとマコちゃんマコちゃん言うてたで」
周りを見る。みんながいる。
キヨ爆笑。ヨーくん爆笑。リョウまで珍しく笑っている。
「良い夢でも見てたの?」
とヨーくん。
「夢か……」 ホッと胸をなでおろす。
「何の夢やったん?」
とシーちゃん。
「絶対言わない!」
「怪しいなぁ、どんな良い夢みてたのかなぁ?」ヨーくんがイタズラな顔をする。
「マコちゃん出てきたんやろ?」
「うるさい!」
俺が顔を真っ赤にすると、リビングは大爆笑に包まれた。
ノリの写真が、なんだか少し笑っているように見えた。
俺達の2年目は、こんなふうに始まった。




