表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終活アイドル ラスト☆スターズ ~アイドルの寿命は短い!~  作者: 水鳥 いつき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/20

10話 初のツアー。

俺たちがアイドルになって8ヶ月が経った。


セカンドシングル『学生服を脱がさないで』、サードシングル『恋、マシーン』と順調に持ち歌も増えていった。フォロワーも3000人を超えた。


シーちゃんがアニメの実写化舞台、いわゆる2.5次元というやつに参加が決まった。キヨとリョウがまさかの深夜ドラマ出演。ヨーくんの料理動画は確実にフォロワーを増やしていた。俺もテレビのバラエティにちょい役で出演が決まった。


まだまだではあるが、一歩ずつ階段を登っている実感が湧いている。


1周年を前に佐々木プロデューサーは大阪、名古屋の遠征を企画した。そして、これからは無料でやっていた握手会にお金を取るようにすると佐々木さんは言った。

CDに特典で握手券をつけたり、直接握手券を売ることになった。


「頑張ってね。握手会の収入の半分が貴方たちの給料に足されるから。たくさん人が集まればそれだけお金がもうかるわよ」


「あの、佐々木さん、これじゃ握手券高くないですか?」


「そう? 世間ではこれでも安い方だけど」


「僕たち、お金のためにやってないんで握手券の値段下げられませんか。ファンからあんまりお金を取るのが悪くて」


キヨが俺たちを見ながら叫ぶ。みんな同じ気持ちだった。今更お金に誰も執着はなかった。


「僕たちの取り分いらないです、その分下げてください」


みんな一斉にうなずいた。


「いいの? 大事な収入よ」


「いいんです。俺たち、年金あるし……おっと!」


「年金!? 何言ってるのかしら。そういえば貴方たちは親会社のお偉いさんからのコネだったわね。さては貴方たち、ボンボンね」


「そ、そうなんですよ」とキヨが困ったように答えた。


「貴方たちがそれで良いならいいわ。まぁ、とにかく遠征頑張ってね」


ツアーの日がやって来た。名古屋、大阪と2泊3日の強行スケジュールだ。



ツアー1日目、名古屋。


ツアーと言ってもそんなに大きい会場じゃない。俺たちにはまだ集客力は大してなかった。それでも300人程のお客さんが来てくれた。ライブに握手会も無事終わった。


意外なのは、握手会で俺の列が一番多かったことだ。俺みたいな陰キャになぜと思ったが、どうやら『リア恋勢』という人たちがいて、妄想で付き合ってると思っている人たちに俺は評判が良いらしい。

理由は「俺が絶対に彼女がいなそうだから」だ。実際にいないどころか70年で一度も付き合ったことはないのでその通りなのだが、ちょっと複雑だ。


握手会でその人たちに恋人のような振る舞いやセリフをいつもリクエストされていた。


「君の瞳に乾杯しちゃうぞ!」

「僕は死にましぇーん!」

「じゅてぇ〜む!」


女の子を満足させるのはたいへんだ……



その夜、俺はヨーくんと相部屋になった。明日は大阪へ移動しなければならないので、朝早く起きないと。


夜10時、そろそろ寝なければ。俺はヨーくんに「お休み」と言ってベッドに潜り込んだ。とは言っても、なかなか寝れるもんじゃない。ヨーくんは寝れたのかな? とヨーくんを見ると様子がおかしい。

息が荒く、体が震えている。ちょっと苦しそうだ。


「大丈夫……?」と声をかけると、ヨーくんは起き上がりソファへ移動した。俺は「どうしたの」とヨーくんの隣に座った。


「ごめんね、心配かけて。時々なるんだ」

「僕、たまにもの凄く不安になるんだ。死ぬのが怖いんだ」


ヨーくんの瞳にうっすらと涙が。体の震えが強くなっている。


「みんな凄いよ、なんで平気なのかな。僕たち5年以内に死んじゃうんだろ」


「僕も怖いよ……」そう言うと、俺はヨーくんの肩を抱いた。


「70年も生きてきて、今更何を怖がってるんだろ。でも『明日死んじゃうかも』って思ったら、暗闇に連れて行かれる感覚が僕を襲うんだ」


ヨーくんの息が荒い。


「ありがとう。ゲンちゃんが側にいてくれて気持ちが楽になるよ。ひとりぼっちじゃないんだ」


「ヨーくん、一緒に寝ようか」


ヨーくんはコクリとうなずいた。

ヨーくんの肩を抱いたまま、俺たちはベッドに移動した。


「ありがとう」


ヨーくんは同じベッドの上で、俺に背を向けて眠りについた。


「怖くなったら、いつでも来なよ。お休み」


俺は仰向けで目を閉じた。ベッドは2人だと狭かった。



しばらくして、俺はヨーくんの寝返りで目を覚ました。寝ぼけているので頭がボーッとしている。

ふと横を向くと、ヨーくんの顔がドアップで俺の目の前にあった。


ヨーくんは俺に抱きついてきた。一瞬、お互いの唇が触れ合った。

俺の身体が硬直する。ヨーくんは寝たまま、吐息が俺の顔を撫でる。


とにかく目をつむったままで、俺は寝ようとする。

ヨーくんの唇が、また俺の唇に軽く触れる。

目を開けると、ヨーくんの寝顔が超近距離で――。


20歳に戻ったヨーくんは可愛かった……。


俺はヨーくんを起こさないように腕をほどくと、ヨーくんに背を向けて寝た。すると、俺の背中にヨーくんがピッタリと寄り添う。

ふと、ドッキリ動画でヨーくんの息が俺に入って来た時(人工呼吸シーン)を思い出す。


(ヤバい……!)


俺はキヨの腕立て伏せを必死に想像して、なんとか寝た。



朝、大阪へ向かう新幹線。俺はキヨの横に座った。

ヨーくんはリョウと隣の席だった。


ヨーくんは少しご機嫌のようで、本を読んでいるリョウの膝を枕に寝そべり、下から本越しにリョウの顔をイタズラな顔で見つめた。


「どうした?」

リョウが下を向いて、膝の上のヨーくんを見る。


「ちょっと寝不足なんで、こうして寝ても良いですか?」

ヨーくんが小悪魔のように笑う。


リョウはちょっと恥ずかしそうな表情を浮かべたが、ヨーくんを膝に乗せたまま、本をまた読み始めた。


(俺はヨーくんに甘え癖をつけちゃったかな……)


と思いながら、ちょっとだけリョウに嫉妬した。

いや、何を言ってるんだ俺は……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ