第25話 予選で大苦戦
久々の更新です。これからも頑張りますので見捨てないで…っ‼︎
予選が始まり闘技場へと案内される。
通路を抜けたその先には広大な地下空間が広がっていた。直径50mはあるかという巨大なリングが部屋の中央に設置されている。リングを挟んだ反対側に更に奥へと続く通路が見える。あの向こうが恐らく決勝の舞台へと続いているのだろう。
俺たち参加者は全員リングの上に上げられた。
「それでは只今より第4グループの予選を開催いたしま〜す。本戦に勝ち残るには皆様の内最期の2名になるまで争っていただきま〜す。残った2名が本戦出場となりますので皆様頑張ってくださ〜い」
なるほど。つまり20人で一斉に戦うバトルロイヤル方式だ。立ち回り方次第では上手く残れるかもな。
ざっと見渡した感じでは全員個人で申し込んでいるようだ。説明を聞いても近くの奴と話し合っている様子はない。集団で襲われたらひとたまりもないがその心配はなさそうに見える。
「それでは準備はよろしいですか〜?予選第4グループ…始めっ‼︎」
痴女の開始の合図と共に闘技場にいる参加者が一斉に戦いを始める。
『2名になるまで戦い続ける』
それ以外のルールは一切なし。極めてシンプルだ。
…でも場外とか反則技とか細かい説明は欲しかった。
思ったよりシンプルで野蛮な大会なのかな?
とにかく始まってしまった以上はやるしかない。
いつもの如く身体強化と魔導闘衣を展開する。
一気に集団で襲いかかられたらどうする?
使っている武器は?
知らない技で来た時にどう対処する?
オレの力はどこまで通用する?
頭をフル回転させ可能な限り対応策を考える。
腰を落としどこから攻撃を受けても対処できるよう身構え…ただけで誰からも攻撃を受ける事はなかった。
辺りを見渡すと皆手当たり次第近くの奴に襲いかかっていた。戦略も作戦もない本当にシンプルで野蛮な争いであった。ある者は鍔迫り合いをし、ある者は素手で殴り合っている。高度な術を用いているようにも特殊な技術を駆使しているようにも見えない。そこには原始的な争いが繰り広げられているだけであった。
しばらく様子を見るに留めていたがついに一人の魔族が襲いかかってきた。手に持った槍を真っ直ぐにこちらに向けながら迫り来る。素早く距離を詰め連続突きを放ってくる。
だが驚いたのは一瞬であった。突きの速さや身のこなしからそこまでの使い手には思えない。思った通りレベルは高くないようだ。素早い突きではあるがそれだけだ。ラルフと対峙したような緊迫感は微塵もない。冷静に躱し受け流すと途端に体勢を崩した。隙だらけだ。懐に潜り込み脇腹に一撃を放つと苦悶の表情を浮かべながら吹き飛んでいった。
特別弱いわけではないのだろう。この大会においては平均的な実力だったのかもしれない。
(思ったよりも大したことない大会なんだな…)
そんな事を考えていた時…背後から強烈な殺気を感じた。ロイドを追いかけていた魔族と対峙した時のような明確な殺意。振り向きざまに慌ててその場から跳びのくと…不思議な光景が広がっていた。
殺意の主は少年であった。ロイドよりも幼い。小学生ぐらいか?小さな身の丈が周りの屈強な男達の中ではかえって目立っていた。乱戦の中で時々姿を見失うが禍々しいまでの殺意が居場所をはっきりと告げていた。
あれだけの殺意を放っているにも関わらず周りの男達は気にも留めず戦いに没頭している。予選をクリアするのに夢中で気づいてない?いやここまで重苦しい空気の中で気づかないわけがない。そう思わせるほど凄まじい殺気であった。そうなると…オレに向けられてるって事か。でも何故?会ったことも無い少年から親の仇のような恨みを買うわけがない。誰かと間違えてるとか?
様々な考えが頭の中で浮かんでは消えていった。あまりの殺気に無意識の内にシヴァからもらった魔剣を抜いて構えていた。その姿を見てこっちが受けて立つつもりだと捉えたのか…ニヤリと笑うとこちらに向かって走り出した。そして…信じられない事が起きる。周りで戦っている男達が車にでも跳ねられたかのように少年に弾かれているのだ。ただ走っているだけなのに邪魔になる奴らはことごとく吹き飛ばされていた。そしてあっという間に距離を詰めると勢いそのままに右拳を大きく振りかぶった。そんなテレフォンパンチが当たるわけねぇだろ。
躱してカウンターを叩き込んでやる‼︎
案の定真っ直ぐ伸ばした右ストレートをかわしながらこちらも相手の顔面めがけ拳を突き出す。クロスカウンターだ。我ながら完璧なタイミングだと思った。確実に躱せないであろう一撃で完璧に顔面を捉えたと思った時…何故か自分の顔に凄まじい衝撃が走り後ろに吹き飛ばされた。
水切りの石のように地面に何度も叩きつけられながらリングの外まで飛ばされた。とっさに体を起こしたかが顔を上げた瞬間、目の前にまで少年が迫ってきていた。
(ダメだ防御も間に合わねぇ…やられるっ!)
そう思った瞬間…
「そこまでっ‼︎予選終了です‼︎」
痴女の突然の終了宣言。
少年は目の前で拳を止めながらこちらを見下ろしている。そして…
「命拾いしたね。あのお姉さんが無能だったらアンタを殺して俺一人本選出場だったのに」
そこまで言われて理解した。リングの上には立ってるのは一人もいない。オレらが最後の2名なのだ。
「本選が人数揃わないと盛り上がりに欠けるからだろうね。大したジャッジだよ。ただの露出狂かと思ったらちゃんと仕事も出来るみたいだねっ」
屈託の無い笑みを浮かべながら少年は言う。
こうして見ていると年相応の子供にしか見えないが先ほどの殺気とあの一撃がただ者では無い事を物語っていた。感心したように痴女を見ていたがこちらに視線を戻すと
「でもガッカリだよ。お兄さんがどれだけ強いのか楽しみにしてたのにこの程度だなんて…運良く本選出場出来たけど本当だったら今頃死んでたしね」
一言も言い返せない。コイツの言った通りだ。ゴングに救われ休止に一生を得たがこれが試合では無い命のやり取りであったら今頃オレは死んでいた。
「本選で当たったら…せいぜい楽しませてね?」
そう言い残すと笑いながら踵を返し去っていった。
その場から動く事も出来ず膝立ちのまま一人考えていた。リングの上では負傷者の救護や搬出が行われている。それを呆然と眺めながら一人思考の海へと潜っていく。
油断はしていないつもりだった。だが無意識の内に素手で来た相手に対し剣ではなく拳で反撃していた。あの時斬りかかっていたらまた違ったのだろうか、カウンターなど狙わず回避に専念していたらもっと善戦できたのか…頭の中で無駄なたらればを繰り返す。
あの一撃…何かの技なのは間違いないだろう。だが対策を打てなければ次も同じ事の繰り返しになる。
いくら考えたところでわかるわけないがそれでも悩まずにいられない。
ふいに頭上から声をかけられる。
「文字通り、試合に勝って勝負に負けたのう。」
見上げるとそこにシヴァがいた。レクスもロイドもいる。
「ユウヤ様…本選に進めたわけですから…お気になさらずに」
レクスが気遣いながら声をかけてくる。自分の事のように落ち込んでくれている姿を見て余計に凹む。
「なんだあのザマは。一体どのツラ下げて本選にしゅつじょ…ヒッ⁉︎」
見下しながら声をかけたロイドをレクスがひと睨みで萎縮させる。一瞬で虎耳が無くなり丸顔の猫が出来上がる。
「みんなありがとう。何されたのか全くわかんないけど…もし本選で当たったらもうちょっと善戦できるよう頑張るよ」
決意を込めて意思表明をすると…
「なんじゃやはり気づいておらんかったのか…」
「ユウヤ様…」
心なしかレクスも呆れている。
「やはり貴様は無能だな。本選は辞退し…ピッ⁉︎」
見下してきたロイドをレクスが睨み殺す。なんだか芸人の鉄板ネタみたいになってきたな。
つーかそれより今なんつった???
「え…?オレが何されたかみんなわかるの⁉︎」
「当たり前じゃ。一目でわかるわ。しかしあの小僧あの歳であそこまで使いこなすとは…もしや…」
なんかシヴァがブツブツ言いだしたぞ。
「ユウヤ様あの技は『待てレクス。教えるのは無しじゃ』…え?」
レクスの優しさをシヴァがピシャリ。
「あの程度自力で打ち破ってみせぃ。お主の力ならば決して不可能ではないぞ」
「いやいや、そう言わずに教え『皆様間もなく本選を開始いたしま〜す。本選会場へとお進みくださ〜い』…あっ、時間だ。」
まだ話をしていたかったがどうやらここまでのようだ。
せめてヒントだけでも聞き出さねばっ‼︎
「無い知恵絞って考えたところで無意味であろう。お主は策を練って戦うタイプではあるまい。もし本選で当たったとしても真正面からぶつかる以外に手はなかろう。せいぜい打ち破ってみせよ」
そう言い残し去っていくシヴァ。
それに続くロイドとヒントだけでも…という顔をしながらシヴァに続くレクス。一人取り残されたオレは心の中で叫んだ。
(知ってんなら教えてくれよおおおおぉぉぉぉぉっ‼︎」
結局ノープランで戦う事になりそうだ…




