第14話。新たなる仲間。目的地変更
馬車があった所までエルフ達と戻ってきた。
「あ、悠矢さん。無事で……っ‼︎」
セフィがラルフと合流している。
オレに気付くもすぐ後ろの二人に気付き戸惑う。
そりゃそうだよな…
クレアとキャスカ以外全滅しているのだから。
「悠矢さん達が見つけたエルフの方も…私が着いた時には既に…勝手ながら埋葬させていただきました」
セフィが申し訳なさそうに伝えた。
「みんなっ………おのれ盗賊風情がっ‼︎」
キャスカが怒りを露わにしている。
「キャスカ。この者達を埋葬します。手を貸しなさい」
さっき盗賊から助けた時はあんなに怯えていたのに。
今は打って変わって凛とした佇まいでキャスカに命令している。部下達の前では最後まで姫としてあろうという心構えなのだろうか。強いな…
「は、はい姫様」
「オレ達も手伝うよ」
「申し訳ありません。宜しくお願いいたします」
総勢30名程の遺体を埋葬する。
こっちの世界は土葬なのかと思っているとセフィが教えてくれた。
「土葬はエルフやドワーフ達亜人族の風習なんです。全ての命は自然の中に存在するのだから死んだら自然に帰るものと考えているんです。」
なるほど自然と共に生きるという考えか。
その後誰一人言葉を発する事のないまま、全てのエルフの埋葬が終わった。
皆無言のまま粗末な作りの墓を眺めている。
手を合わせる文化はなさそうだが…オレは日本人だからな。故人の冥福を祈る為に片膝を付き両手を合わせる。
「何故手を合わせているんだ?」
キャスカに聞かれる。代わりにセフィが答える。
「私と悠矢さんは転生者なんです。私達がいた世界では亡くなった方々のお墓に手を合わせてご冥福をお祈りするんです。」
答えながらオレの横に両膝を付き祈りを捧げる。
それを見たラルフも手を合わせる。なんとも粋な傭兵だ。
「死者の冥福ですか…そうですね」
クレアも跪き手を合わせる。その後ろにキャスカも続く。
「皆の者、大義でありました。このような粗末な墓で申し訳ありませんが…ゆっくりと休んでください。」
一言だけ言葉をかけ立ち上がる。
「お礼が遅くなり申し訳ございません。また、危ない所をお助けいただきさらに埋葬のお手伝いまでしていただきまして本当にありがとうございました。一族を代表して御礼申し上げます。」
クレアが深々と頭を下げる。キャスカもそれに続く。
「気にすんな。それよりこれからどうするんだ?」
「私達は大森林に帰る所だったんです。今後の事はそうですね…キャスカと話し合って決めます」
「その大森林ってのは近いのか?」
距離感もわからず尋ねる。案外近いのかもしれないし…
「ここからだとかなりあるな。相当な長旅になるだろう。ましてやここは人族の国だ。さっきみたいな輩が現れんとも限らんしな」
ラルフが教えてくれる。そうかやっぱり遠いのか…
「何にせよここで立ち話してても始まらない。一度村に戻るぞ。二人もまずはゆっくり休め」
全員で村へと戻ることにした。
道中セフィが埋葬してくれたエルフの元に立ち寄り再び手を合わせる。結局助かったのは二人だけか…
宿まで戻ってくる。クレアとキャスカで一部屋取り、みんなで食事に行くことにする。
「今後どうするかは明日決めよう。まずは飯だ」
クレアもキャスカもあまり食が進んでいないようだ。
こんな時は呑んで食って明るくバカ騒ぎするしかねぇ。死んだやつもそう願っていると信じてな…
さっきラルフが言っていた。
もしかするとその通りなのかもしれない。
結局夜更けまでしこたま飲んだ。流石にクレアには飲ませられなかったがキャスカは浴びるほど飲んでいた。意外な事にセフィが酒豪だった。得意じゃないとか言いながら水のように次々流し込んでいる。
そんなこんなでラルフとキャスカは酔い潰れ宿まで担いでいく事になった。
ラルフを運ぶのはもはや慣れた物である。
始めはセフィ担いでたが今ではもっぱら俺の担当になっている。1日の最後は駄犬を寝床に放り込むのが日課だった。
ワンコを強制的にハウスし、セフィと別れ寝ようとするも…寝付けない。
オレは初めてこの世界に転生して…目覚めたら戦場にいた。
セフィが助けてくれなかったら生きていなかったかもしれない。運が良かったのだ。
だがクレアとキャスカは…幸運ではなかった。
大切な仲間を失ってしまった。
死んだエルフ達はどこかで転生しているのだろうか…
もしかするとオレやセフィと違って『死』とは文字通り今生の別れではなく一時的な物なのだろうか…
色々な事を考えているうちに寝れなくなってしまった。
横ではラルフがワンワンイビキをかいている。
明日の散歩無しにすんぞこのヤロー。
すっかり目が冴えてしまい自分が散歩をする事にした。
どーせ寝れないのなら歩いて考え事でもしよう。
そう思い外へ出る。
地球と同じように月が見える。蒼い美しい月だ。
夜空を眺めながら歩いていると、ふと森の中に歩いていくクレアを見かける。
あれ?こんな時間にどこ行くんだろう。気になって跡をつける。
森の中、大きな木の根元にうずくまり…泣いていた。
声を出さぬよう必死で抑えながら、それでも抑えきれずに嗚咽を漏らしながら…
声をかけないほうがいいな…まだあんなに小さいのにオレらの前じゃ必死に毅然とした態度を取っていたのだ…隠れて泣いてるなんて知られたくないよな。
そう思い引き返そうとしたら
『パキッ』
枝を踏んでしまった…なんというかお約束だな…
ハッとして振り返るクレアと目が合う。
とても気まずい空気が流れるがもう無視はできないだろう。諦めて声をかける。
「ゴメン…森の中入ってくのが見えたから…」
「ユウヤさん…」
気丈に振る舞っていてもまだ子供…仲間の死なんて乗り超えらんねぇよな…
だがクレアはオレの前でも気丈に振る舞おうとした。
「お見苦しいところをお見せしました。私は大丈夫ですから…どうか心配なさらないで下さい。」
真っ赤な目と鼻でお姫様らしく振る舞おうとするクレアを見て…力になってあげたいと思った。
「別にさ、オレは部下じゃ無いんだし…キャスカだっけ?あの子には上手く言っとくからここで泣くだけ泣いてスッキリしてけよ」
そう言うと…再び王女の仮面が外れる。
「いえ私は…グズっ、ひ、姫として…臣下のて、手本に…うああぁぁぁぁん‼︎‼︎」
泣きながら抱きついてきた。
そうだよな、そりゃそうだわ…あんなんトラウマもんだよ。腕の中で泣きじゃくるクレアの頭を優しく撫でてあげる。仕方ない…泣き止むまで付き合うか。
しばらくその場で泣き続けるクレアを宥める。
どのぐらい泣いていただろうか…グズグズと鼻をすすりながらクレアが顔をあげる。
「すみません、お恥ずかしい所を…取り乱してしまいました。」
落ち着いたクレアが品を取り戻し始める。
「気にすんなって。人間溜め込んでばかりいるとどっかでパンクしちゃうよ」
「私には兄がいたんです。ちょうどユウヤさんぐらいの。優しくされてつい甘えてしまいました…」
「そうかオレに似てイケメンの兄がいるのかぁ」
過去形だったとこには触れずおちゃらけてみる。
「なんならお兄ちゃんと呼んでくれても構いませんよ。姫様」
男なら一度はこんな美少女にお兄ちゃんと呼ばれたい。
「…うん。お兄ちゃん」
鼻血出るかと思った。何この破壊力ヤバすぎだろ…
その後もお互いの事を色々と話し合った。
故郷の事…
家族の事…
楽しかった事…
面白かった事…
そして…これからの話をした。
「エルフというのは男女共に美しい種族だと言われています。神族ほどではありませんがとても長命です。」
美しいのはわかる。目の前に超絶美少女がいるしね。
つーかセフィ長生きすんの⁉︎オレが看取られるパターン確定か…再婚はしてほしくないなぁ。
「その美しさを狙う者が後を絶ちません。噂では剥製にされた者もいるとか…」
なんというアブノーマル。見かけたらお兄ちゃんが成敗してやる。いやマジで。
「私の夢はそういった虐げられてきた者達を1つに束ねエルフの楽園を築く事です。その為にも…志半ばで下を向くわけにはいかないんです。」
小さな声だが力強くクレアは断言した。
オレの半分ぐらいの歳なのにしっかりしてるな。
「そっか…じゃあ兄として微力ながら力になるよ」
そう言うとクレアは驚きながらも
「うん‼︎期待してるねお兄ちゃん」と
蒼月も顔負けのとびっきりの笑顔を見せてくれた。
「さて、もう遅いし戻って寝ようぜ。明日から忙しくなるんだから」
意味ありげな笑みを浮かべ言う。
「???」
意味がわからずに首をかしげるクレア。
オレの中でやるべき事は決まっていた。
そして翌日…
「おはようございます悠矢さん」
部屋の前でセフィに会う。天使は朝から天使だ。
「おはようセフィ。みんな揃ったら…話があるんだ」
「?はい。わかりました。朝食にしましょう。」
全員揃った所でみんなに打ち明ける。
「あのさ、オレとセフィは元の世界に戻りたいと思ってる。ラルフは稽古をつけてくれながら手伝ってくれてる。だったらさ!修行しながら元の世界に帰る方法探しながら…」ここまでは今までと一緒だ。
「クレアとキャスカを大森林まで送ってあげようぜ。ここでの情報収集は限界だしオレもどうせならこの世界を色々見てみたいんだ。ついでって言うとちょっと違うけど…ダメかな?」
セフィとラルフを交互に見る。クレアとキャスカはポカンとしている。そりゃそうだ唐突だもんな。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ‼︎有難い申し出だがそこまで甘えるわけにはいかん。」キャスカが答える。
「そうです。これ以上ご迷惑はかけられません。」
クレアも続く。
「だから迷惑でも甘えでもないんだって。オレが旅する先に大森林があるだけなんだから。一緒に行こうぜ。」
「賛成です。私もいつか大森林にいってみたいと思ってたんです。」
セフィが賛成の意を表してくれる。
「オレは元々傭兵だ。今は休業中だがな。ユウヤが中途半端で恥ずかしい魔導闘衣を極めるまではしごきを辞めるつもりはねぇぜ」
意外な事にラルフも反対しなかった。
駄犬扱いしてゴメンよ。あとでホ◯ッコをあげよう。
「決まりだな。行こうぜクレア‼︎」
その瞬間…クレアが抱きついてきた。
「ありがとうお兄ちゃん‼︎」
「ハハッ、旅は道連れって言うだろ。」
たった一日でクレアはオレに凄くなついてくれた。
可愛い妹が出来たな…そう思いながら頭を撫でてあげる。
「「………」」
セフィとラルフの凍てつく眼光が突き刺さる。
え?何その顔。
「マジかよ幼女好きかよ…お前とは女の趣味は合わんな。」
「悠矢さん…幻滅です」
あれ?なんか誤解されてない?
オレが抱きついたわけじゃないのに…
「き、きっさまぁ‼︎クレア様に何を吹き込んだのだっ!」
キャスカが顔を真っ赤にしてブチギレてる。
乳神様がお怒りじゃあ‼︎
つーかオレが言わせたわけじゃ…いや言わせたわ。
「キャスカそんな硬いこと言うなよ。」
(オッ◯イは柔らかそうなのに…)
『ドゴッ‼︎』
セフィのリバーブローが突き刺さる。
バカなっ、心を読まれただとっ⁉︎
会長、タオルをっ!早くタオルを投げてっ‼︎
「いやらしい顔になってますよ悠矢さん」
外は暖かい絶好の旅日和なのに何故こんなにも寒いのか…寒さのあまり脂汗が止まらないぜ…
「ま、まぁ目的も決まったわけだし。早速行くか!」
ラルフが無理やり締めてくれた。
かくして新たな仲間が増えた。
目指すは『大森林』
第1章はここまでです。ここから大冒険が始まります。これからも応援宜しくお願いします。




