第12話 旅立ち。舞い込むトラブル(前編)
あれから幾ばくかの時を修行に費やした。
幸い旅人とかなり交流を深めることが出来、転生者に関する情報も聞くことが出来た。
どうやらこの世界にとって転生者とは決して珍しい存在ではないらしい。
オレやセフィがいた世界から来る転生者もいれば全く別の世界から来る事もあるのだという。
そして転生者達は皆、同じような行動を取るのだという。
それは大きな街を目指す事。
当たり前と言えば当たり前だが元の世界に戻る為、自分と同じ境遇の仲間と出会う為、目的地が似通うという。
つまり『王都フロリス』を目指すのである。
人族が住む世界において最も栄えている『都市』だという。
大きな都市なら元の世界に戻れる方法も見つかるのではないか…皆そう考えるのであろう。
ならば我々も王都を目指そう。
今後の方針も決まり間もなくこの村を旅立とうと話し合っていた。そして新たな事件が起きる。
その日はいつも通り依頼を受けつつ修行を行っていた。
『魔導闘衣』&『身体強化』を並行して修行する方針を固めたのち、ひたすら基礎と応用、反復と実践をひたすら繰り返し悠矢は大きく成長していた。
「よしっ、今日のノルマ終わりっ」
今日の獲物であるホワイトガゼルの首筋に手刀を打ち込み気絶させる。
逃げる獲物に対し完璧な手刀を打ち込む、オレじゃなきゃ見逃しちゃうね。
打たれたホワイトガゼルが派手に転倒し痙攣している。
「ラルフ。今日の依頼分ってこんなもんでいいんじゃないか?と言うよりこれ以上は運べないだろ」
山の様に仕留めたガゼルの山、全て生け捕りである。
「そうだな。ここまでにして…少しオレと組手でもするか」
おっ、久々に手合わせか。今日こそ勝ってやる。
魔力干渉にも大分慣れ、戦い方も少しはわかってきた。
初めは魔力干渉を使っての魔術師タイプの方が向いていると思っていた。面と向かって殴りあうのは怖いし…
セフィの様に離れた相手への攻撃の方が安全だし確実だと思っていたがどうも魔力干渉で相手に攻撃するのは向いていないようだ…
その結果、ラルフの様に身体強化により体術を向上させ更に魔導闘衣で補う今のスタイルが一番合っているという結論に達した。
かくしてタンク寄りの戦闘スタイルのラルフ、オールマイティだが後方支援を得意とするセフィ、そして魔導闘衣によってスピードを上げ、ヒット&アウェイで攻撃と撹乱を行うオレの3人パーティが完成した。
まぁラルフとセフィでほぼ片はつくのだが…
とりあえずせっかくの師匠からの組手のご提案だ、断る理由などない。
修行の成果を見せる時が来たな。
魔導闘衣を展開する。以前は全身を漠然と覆っていただけだが今では色々と応用が効く様になっていた。
攻撃やガードを行う時だけ強度を上げる『部分強化』。機動力を上げるために常に両足に展開する『常時展開』が出来るようになった。ラルフ曰くまだまだ荒削りらしいが…
基本のスタイルを発動、常時強化と身体強化を重ねがけし、更に両腕を部分強化する。
そのまま真正面からラルフに突っ込む。
微動だにしないラルフの目の前まで瞬時に移動し直前で真上に飛ぶ。高速移動で揺さぶりをかけるもラルフは慌てる事なく真上に上がったオレを見据えている。
自然落下しながら魔力干渉を発動。
バスケットボールぐらいの火球を作り出す。
実はこっそり干渉の特訓もしていたのだ。
それをダンクよろしく投げつける。
ラルフはそれを楽々躱す。左か‼︎
そしてそのまま燃え盛る足場に着地。
自分で生み出したスキルでダメージを負うことがないのは実証済みだ。
敢えて炎の中に身を隠す事により、オレの予備動作を隠す作戦だ。
部分強化で脚力を更に強化し突進力を上げる。
そして両腕の部分強化に炎を纏わせる。
右腕をより熱くより濃く…左手にはダミーで炎を同じような感じに纏う。
全力で突進し左手のテレフォンパンチ、敢えて大振りにする事で嫌でも左手を意識させる。
一瞬気を取られた瞬間を逃さず右ストレートを撃ち抜く。完璧に顔面を捉えた‼︎……かに見えた。
次の瞬間、右側に移動したラルフに腕を掴まれる。
え⁉︎熱くないの⁉︎
凄まじい威力のショートアッパーを鳩尾にもらう。
朝飯全部出るかと思う衝撃が腹に伝わり身体が激しく浮き上がる。だが腕を掴まれているため、そのまま腕を支点に半回転。地面に激しく叩きつけられる。
「グハッ‼︎」
背中から受け身なしで叩きつけられる。次の瞬間には目の前に拳が突きつけられていた。
「まだまだだな。魔導闘衣に炎を纏わせる発想は良かったが左右の練度がまるで違う。一目でどっちが本命か相手にバレちまうぞ。やるなら同じ威力じゃなきゃな。」
あの一瞬でそこまで気づくのかよ…
まだまだ敵わないな…
「闇雲に動き回るのはフェイントとは言わない。殺気を伴わないのはただの無駄な動作だ。危険を感じるから相手が警戒するんだ。殺す気で打ち込まないと格上には通用しないぜ」
さらりと難しい注文が入る。要はフェイントももっと全力で打ち込まなきゃならないって事か…
「さて…今日の所は村に……ん?あれは…」
ラルフが何かに気付く。視線の先を見ると誰かが歩いて…いやボロボロだ。倒れる寸前だ…と思ったら前のめりに倒れた。ただ事じゃなさそうだ。
二人で駆け寄ると……エルフだ。
美しい顔立ちだが血まみれで顔面蒼白の若い男のエルフが倒れていた。マジかよ初エルフだ。
「おいっ、何があった⁉︎誰にやられたっ⁉︎」
ラルフが抱き抱え問いただす。
既に事切れる寸前の様子のエルフは最後の力を振り絞りオレらに助けを求めてきた。
「じ…人族のっ…集団に…お、襲われ…た……頼むっ、ひ、姫様をっ…たっ、助けて……くれっ…‼︎」
オレも人族だがそこまで気にする余裕もないのだろう。
獣族のラルフに必死に頼み込んでいる。
「わかった任せろ。どっちだ?…向こうだな?すぐに加勢してやる。仲間を呼ぶからお前はここで休んでな」
優しく寝かしてやると息を吸い込み、
「ウオオォォォォォ………ンッッッ‼︎」と
遠吠えをした。セフィへの緊急用の連絡方法だ。何かあればラルフが遠吠えをする事になっている。
これで村で待っているセフィが来てくれるはず。オレたちはエルフの仲間を助けに行こう。
ラルフが立ち上がり、エルフの指差した方角を睨む。
ふとラルフを見た瞬間…寒気がした。
今まで見た事のない形相だ。
激しい怒りを露わにしている。
でも気持ちはわかる。オレもいくら知らないエルフとはいえ正直気に入らない。盗賊とか人攫いの類だろうか。
「ユウヤ、急ぐぞ。付いて来い」
言うが早いか走り出す。
慌てて後を追いかけるが…全く追いつけない。
ただの身体強化をしているだけのラルフに対し、魔導闘衣まで展開して全力で追いかけているのに徐々に差が開いていく。これが『練度』の差か…
草原を二人で駆け抜けていく。しばらく走ると燃えている馬車が見えてきた。周りに倒れている人達が見える。
数名のエルフを大人数で包囲している。圧倒的に不利な状況のようだ。
この世界に転生して二回目の敵との遭遇であった。
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