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第11話 偶然の産物。魔力干渉&身体強化

目覚めると昨日の宿屋のベッドの上だった。

「よぉ、起きたか」

ラルフが声をかけてくる。

そうか…昨日見返してやりたくて全力を出したら魔力切れを起こしたんだった。

相変わらず身体は怠いが起き上がるには支障なさそうだ。起き上がりベッドに腰掛ける。まだ少しぼーっとするな。

「飯行こうぜ。動けるようなら昨日の続きだ」

そういえば腹減ったな。夕飯も撮らずに朝まで寝ていたのだ、当然だろう。

「宿まで運んでくれたのか。ありがとう」

「あのまま放置しても良かったんだがな。この間、酒場からここまで運んでもらった借りを返しただけさ」

うん、運んだのはセフィなんだけどね…勿論黙ってる。

「嬢ちゃん心配してたぜ。声かけてやれよ」

そりゃいかん。余計な心配をさせてしまったか。

セフィに声をかけに行く。既に準備は出来ているようだ。

「あ、悠矢さん。おはようございます。もう大丈夫ですか?」

朝から優しい。癒される…

「ゴメンね心配かけて。もう大丈夫だよ」

ホントはまだ少し怠いがわざわざ言う事ではないだろう。

「無理しないで下さいね。キツかったら私とラルフさんで依頼こなしてきますよ?」

「いやホント大丈夫。2人に任せてサボるわけにもいかないし。それに2人でデートなんかさせられないよ。文字通り送り狼なんざ許さん‼︎」

心配させまいとわざとふざけて答える。

「ふふっ、平気そうですね。じゃあ朝ごはん食べに行きますか」

「昨日なんも食べてないから腹減っちゃったよ」

仲良く談笑しているとラルフも出てくる。

「よしじゃあ行くか」

3人で朝食を取りに行く。

その席でふいにラルフが訪ねてくる。

「なぁユウヤ。昨日何やったんだ?一瞬とはいえ最後の動きは完璧だった。ちょっと本気出そうか悩んじまったよ」

「私も聞きたかったです。急に見違える様な動きになって…コツを掴んだんですか?」

2人から質問される。

あれ?気づいてないのか?

「いや、普通に魔力干渉を併用しただけだよ。身体強化だとどうしても急な変化に対応しきれないから魔力干渉で風を纏って体を軽くしたんだ。そうすれば多少身体強化がおぼつかなくても何とかなるんじゃないかと思ったんだ。森からここまで来る間ずっと練習してきた甲斐があったよ」

ただなんとなく事実を伝える。

食事をしながら答えると2人が何も喋らない。

ん?なんだ?ふと見上げると2人とも口を開けてポカンとしている。

「ちょっと待て…全身に風を纏うってなんだ?」

「森から村に来るまでずっとそれを練習してたんですか?手から出す練習じゃなくて???」

ん?なんかリアクションが変だぞ。

「え?いやだから手から出すより全身使った方が効率いいかと思ってずっと練習してたんだよ。ただ出してるだけだと体の周りに纏わり付いてるだけだったから火とかじゃなくて風がイメージ的にあってるかなって…なんか変だった?」

別に特別な事をしてきたつもりはないんだが…

「おい嬢ちゃん。コイツ自分で何言ってっかわかってんのか?」

「いえ、間違いなくアレはわかってないですね。最初に教えた時もコツを掴むのは早かったので才能はあるんだな、ぐらいにしか思ってなかったんですが…」

なんかコソコソ話し出した。一体なんだってんだ。

「コイツが言ってるのって魔導闘衣だよな?いくら低レベルの闘衣とはいえこんな駆け出しが出来る事じゃねえぞ。一体どうやって教えたんだよ⁉︎」

「私は普通に使い続けて経験を積むとしか…あ」

なんかセフィが気付いちゃったみたいな顔してる。

「私…使い続けてとは言いましたが…『手から』とは言ってないかもしれません。だって普通手から出す練習するじゃないですか…」

「それだな。コイツはこっちの世界の常識が無いから勝手に手より全身って思ったんだ…しかもそんな無謀な事をあの森からとはいえずっとやり続けてたわけか…こりゃもしかすると思わぬ拾い物したかもしんねぇな」

「おかしいとは思ってたんです。きっかけを与えてスキルを使えるようになったのに全く出来てる様子がなかったんで…まさか魔導闘衣の練習をしていたとは…」

お、話がまとまったか?

「ユウヤ、結論から言おう。お前さんは基礎をすっ飛ばして応用、それも超上位クラスのスキルを身につけてる。だから脚力強化とかの簡単な事も出来ないのに風を纏う、魔導闘衣ってんだけどな、魔力干渉で身体能力を上げるっつう、ある意味矛盾したスキルを身につけてるんだ。」

ん?褒められてるんだよな?バカにされてるようにしか聞こえないんだが…

「昨日それを知ってりゃ教える事も変わってきたんだが…まぁまだ一日だ。大した事じゃない。嬢ちゃんがポンコツで助かったな」

あ、セフィがガッカリしてる。

フォローしたいが…教え方下手すぎだろ。

俺スキルの事なんもわかんないんだから…

「すみません…。私、転生してすぐスキルは一通り使えたので…この世界の常識も旅をしながら覚えたので人に教えるの初めてだったんです…」

「なるほど天才は教えるのが下手っていう典型だな。自分が苦労した事ないからできない奴の気持ちがわからんのだな」

ラルフやめてあげて。セフィが息してない。

だが考えてみるとセフィは何も悪くない。

そもそも悪い事が起きてるわけじゃないんだし。

泣きそうになってるセフィを慰める。

「じゃあさ、オレじゃどうすればいいのか決められないからラルフとセフィでオレをどう鍛えるのか決めてくれよ」

話題を変えよう。未来の話の方が有意義だ。

「とりあえずお前さんがやるべき事は2つ。まぁほとんど一緒だ。『魔導闘衣』と『身体強化』。魔導闘衣ってのは本来、身体強化を極めた人間が更なる力を得る為に使うスキルなんだ。お前さんの場合、普通スタートから始めるものをゴールから始めたようなもんだ。だが覚えた以上は有効活用するに越した事はない。わずか一日で方針が変わっちまったが今日から魔導闘衣を常に使いながら鬼ごっこだ」

あんま変わってない気もするが…

まぁいいや。強くなって2人の役に立てるならなんでもやるぜ。

「そうだちょっと魔導闘衣見せてくれよ」

ラルフのリクエストだ。よし見てろ。吠え面かくなよ。

むしろ吠えるなよ。お座りしてろ。

お望み通り見せてやる…これがオレの魔導闘衣だっ‼︎

全身に風を漲らせる。あまりの技術に2人とも唖然としている。どうだ参ったか‼︎

「こ、こりゃあ…たまげた」

「で、ですね…気付かないのも納得です」

ん?なんか変だぞ?

「ユウヤ、訂正させてもらう。確かに魔導闘衣ではあるが…ほぼ形になってねぇ」

え?あれ何この空気…さっきまで天才扱いだったのに…

「濃度が圧倒的に足りない。まぁ一日じゃこんなもんかもな」

上げて落とすという虐待を受け、既にオレのHPは一ミリしか残ってない…せめて一思いにやってくれ。

「だが形になれば大きな戦力だ。期待してるぞ」

任せろ。主人をたてるとは見上げたハチ公だ。

と言うわけで昨日の草原へ来た。

本日のご依頼はこちらっ‼︎ ジャンッ‼︎

『大ウサギの肉が欲しい。最低十匹は捕獲してほしい。肉も皮も必要だからなるべく生け捕り。無理なら死体でも構わないがなるべく損傷させないでほしい。報酬:一匹につき銅貨一枚。最大二十匹まで支払います』

今日は納品クエスト兼リベンジマッチだ。

リオ◯ウスとの遭遇は避けたい…

「さて、始めるか。嬢ちゃん索敵頼めるか?」

「ハイ、行きますね」

昨日のスキルを発動させているようだ。

ほどなくして草原の至る所が光りだす。

相当な数がいるようだ。アレ全部ウサギかよ。もはやウサギ畑だ。

「こんだけいりゃ依頼失敗とはならないな。少なかったなら依頼失敗とはならなさそうだな。そういや嬢ちゃんは魔導闘衣出来るのか?」

「え?あ、はい。あまり得意ではないんですが…」

とかいいながら発動させる。

一目見てわかった。オレのが形になってないと言われる理由が。

全身を荒れ狂う竜巻で覆われている。

肉体に触れることすら出来ないだろう。

これが『魔導闘衣』…

偶然とはいえオレが身につけたスキルの最終形態…

身震いがした。柄にもなく興奮しているのかもしれない。

「この世界の上位の人間はこんなもんじゃねぇぞ。こんな至近距離じゃ立ってることすら出来ないほどだ」

既に吹き飛ばされそうなんだが…

何だよそれ最早災害レベルじゃねぇかよ‼︎

「まぁ扱える人間はほとんどいないし対峙する事もないだろう。オレも数えるほどしかお目にかかった事がない。それほど珍しいスキルなんだ」

絶対にお会いしたくない…会っても全力で逃げよう。いや身体強化の更に上のスキルなら逃げられないか…よし、会ったら即降参しよう。固く心に誓った。

「それにしても…改めて思ったが嬢ちゃん何者なんだ?索敵性能といい魔導闘衣といい、まだまだ使えるスキルあるだろ?」

オレも気になった。一体セフィはどれだけのポテンシャルを秘めているのか…あ、そういえば…

「えっと…まだお話してませんでしたね。実は私…」

そう言ってローブを外し背中の羽根を広げる。

いつ見ても美しい。女神降臨や。

「驚いた…神族かよ。……そうかだからあれだけの干渉スキルを持ってるのか」

気づいてなかったのか。その鼻は飾りか?

でも羽根さえ隠していれば普通の美人でどこにでもいる超絶美人だ。わからなくても無理はないか。

「あまり言いふらしたくはなかったので…隠しててすみません…」

「いや神族なら仕方ないだろ。隠すのも無理はない」

ん?そうなのか?神族ってのは内緒にするもんなのか?

「わかった。教えてくれてありがとな」

セフィは羽根を折りたたみローブを羽織った。

「さてユウヤ、今日はお前さん一人でウサギを集めろ。捕まえたらここまで持ってこい。ノルマが達成出来なかったらまた魔力切れで倒れて晩飯抜きだな」

コイツとセフィがいれば楽勝な依頼なんだろう。

オレがいなくてもどうとでもなると顔に書いてある。

ここはひとつ、本気を出させてもらおう。

かくして壮絶な鬼ごっこが始まった。

時間を忘れひたすらウサギを追いかける。

昨日覚えた脚力強化に身体強化を重ねる。

発動は出来たがとても長時間使える代物ではない。

ソッコーで依頼達成しなければっ‼︎

だが縦横無尽に逃げ回るウサギに中々追いつかない。

気性の荒いヤツは向かってくる。

てんやわんやのなんやかんやで結局…

ゼロ匹デシター

日が暮れるまで追い回したが結局捕まえられずこの日は終了。結局ラルフとセフィで依頼をこなしてしまった。

「まぁそんなもんだろ。予想通りだ。むしろ超高等技術の魔導闘衣をそんなアッサリ身につけられてたまるか」

なんだその嫉妬心の塊は。

「難しいスキルですから。ゆっくり覚えていきましょう」

セフィの優しさが沁みる…

かくしてこの日から連日鬼ごっこの日々が始まる。

オレの修行方針が固まったのでしばらくこの村に滞在してウサギ相手に経験を積もうという算段だ。

そして月日が流れた…






主人公無双…とはまだいかないようです。これからも応援宜しくお願いします。

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