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第10話 特訓。微かな光明

「オラ朝だ朝‼︎起きろ飯行くぞ‼︎」

日が昇るが早いかラルフがオレを起こしにかかる。

寝かせてほしい…魔力切れに似たような気怠さを感じる。昨日の修行の影響だろうか…

ゆっくり寝ていたいがそうはさせてくれないようだ。

「さっさと酒場行かないといい依頼がなくなっちまうぞ‼︎ホラ起きろ‼︎」

ワンワンワンワンうるせぇな…散歩なら後で行ってやるから寝かせてくれよ…

コンコン。部屋がノックされる。

「おはようございます、悠矢さんラルフさん。よく眠れましたか?」

モーニングエンジェルだ。コンマ5秒で飛び起きる。

「おはようセフィ。今ちょうど行こうとしてたんだ」

呆れるラルフをよそに調子のいい応対をする。

「…さっさと飯食って依頼受けに行くぞ」

……

…………

村の南側の草原に来た。結論から言おう。

依頼は物の数分で達成してしまった。

受けた依頼は『解毒草に山菜まで何でもいいから薬草を集めてほしい。報酬は質によって応相談。多ければ多いほど助かります。納品期限:日没まで』

所謂初級クエストである。

ラン○スに遭遇したらどうしよう…

広大な草原でセフィの魔力干渉の応用『索敵』を用いてラルフの身体強化で高速採取しまくる。

魔力干渉で広範囲に干渉しそれらしい物があったらその場所を発光させ、ここ掘れワンワンで採取。

何なの魔力干渉万能かよ⁉︎

この2人で薬草採取すれば一生安泰じゃね⁉︎

「大気の粒子に干渉して感覚の違うところだけ発光させるんです。広範囲を一気に手探りで探るイメージですね。まぁ、たまに間違えちゃいますけど…」

テヘッと可愛く、サラッととんでもない事を説明してくる。

「いや、もの凄い精度だぜ。ほぼ外れ無しだ。相当優秀な魔術師だな嬢ちゃんは」

10分ほどで用意したカゴがいっぱいになる。

「いやラルフさんの身体強化も素晴らしいですよ。あれだけ高速で動いて地面がほとんど荒れてませんからね」

確かに一瞬で目の前で消えたかと思うと遥か前方、次の瞬間すぐ真後ろと目まぐるしく動いてはいるものの地面をえぐったり大きな音を立てたりといった事が全くない。シュッと消えてパッと現れ次の瞬間別の場所にパッと現れる、擬音が多いな…

「オレの場合は魔力干渉の才能がほぼないからな。せいぜい焚き火を起こしたりちょろっと水が出せる程度よ。その分この肉体1つで闘ってきたってわけさ」

ただの飲兵衛じゃなかったのか…ゴメンよ駄犬扱いして。内心でお詫びを申し上げる。

「さて、依頼はこんなもんでいいだろう。正直金策よりもまず…ユウヤの修行の方が重要だ」

いよいよ本番か。自然と気合が入る。

「まずやるのは身体強化の基礎、『鬼ごっこ』だ」

…は?何言ってんだこの駄犬。

「まぁ聞けよそんな顔すんなって。身体強化無しで鬼ごっこするだけならただのお遊びだが身体強化を駆使するとなると話は一気に変わってくる。お前さんはオレのことを絶対に捕まえられない。逆にオレが追いかけたら絶対に逃げられない。」

そりゃそうだ。さっきは全く目で追えなかった。

「そこで、だ。お前さんがオレを追いかける、身体強化の基礎『脚力強化』。たった今オレがやってたやつだ。それを身につけてもらう。安心しろコツは教えてやる」

なるほど、ただ走り回るより自分より速いやつを追いかける事により限界を常に経験し続けるわけか…

駄犬扱いしてゴメンよ。内心でお詫びを申し上げる。

「魔力干渉は大気に干渉ってのはわかってんだろ?それを体外に出さず内に留め続けるんだ。」

試しに行ってみる。魔力を両足に溜めるイメージ。

出来てるかわからんがとりあえずダッシュしてみる。

お、昨日ウサギを追いかけた時より速い???

「まぁまぁだな。大事なのはそれを常に維持する事だ。ただ体内に留めるだけならガキでも出来る。難しいのはそれを行いながら他の事をしなきゃならないって事だ」

なるほど…走るだけならただ脚力強化だけで済むだろうが戦闘となるとそうはいかないだろう。言ってる事は理解できる。

「まぁまずは簡単な追いかけっこからだ。魔力干渉と同じで繰り返し使って熟練度を上げ体に覚えこませる事だ。寝ながら身体強化出来る達人もいるらしいぜ」

その域に達するにはまだまだ先だな…

だが千里の道も一歩からだ‼︎やってやろうじゃないか‼︎

「さて始めるか。魔力干渉使ってもいいぜ。とにかくオレに触れられたら第1段階クリアだ」

追いかけっこスタートだ。

触るだけなら隙をつければ何とかなるだろう。

…そう思ってた時が私にもありました。

結論触るどころか追いつく事も出来ません。

理由は単純。方向転換が出来ないのだ。

まっすぐ追いかけるのは何とかなる。

直進するにあたり足を早く動かせばいいだけだ。

だがラルフが急激に方向転換するとそれを追いかけようと踏ん張った瞬間にバランスを崩してしまうのだ。

「よく考えろ。ただ筋力を強化するのとは訳が違う。動きが変われば使う筋肉も変わるだろ?それと一緒だ。お前さんは動きが変わってもただ漠然と強化してるだけだ。それじゃあ瞬発力は生まれないんだよ。足の力が強いだけだ。」

奥が深い…イメージが足りないのか。

速い動き…チーターをイメージしてみる。獲物に追従し素早い動きで獲物を仕留める映像を見た事がある。あんな感じで行けばいいのか。確か爪がスパイクの役目を果たしているとか何とか…

つま先の魔力配分を増やすのか?試してみるもイマイチだ。あまり変わらない。

「そうだ悩め。オレの感覚はあくまでオレのもの。自分なりのイメージを掴めないといつまでも使いこなせないぞ」

確かに個人の感覚は他人に説明出来るものではないだろう。試行錯誤以外に道はないのだろう。

その後も延々とラルフを追い続け日が傾きかけた頃…

不意にヤツが現れた。

大ウサギだ。セフィの目が輝いている。可愛い物好きか。

「お、いい練習台がいるじゃねえか。ちょうどいい。追いかけて捕まえてみろ。オレと違ってちょっかい出したら反撃してくるぞ」

知っている。昨日高額な授業料を払ったばかりだ。

違う個体と思われるがそんなの関係ねぇ。

コノ恨ミ晴ラサデオクベキカ…

呑気に鼻をヒクヒクさせてるウサギに狙いを定め…

一気に駆け寄る。

慌てて逃げる大ウサギ。

追いかける内に確信した。オレの方が速いっ‼︎

行ける‼︎と、思った瞬間、ウサギが急激に方向転換。直角に右に曲がる。

スパイクのイメージで踏みとどまって…

ドンガラガッシャーン‼︎

ウサギは悠々と逃げてしまう…

今日は体当たり無しだ。助かった…

「ハッハッハッ‼︎まだまだだな‼︎」

難しすぎるだろ身体強化。

「さて、今日はこのぐらいにしとくか。いくら大気干渉より消費魔力が少ないとはいえこれだけ連続で使い続けるとそのうち魔力切れ起こすからな。続きは明日にして酒場に行くぞ‼︎」

この野郎、ただ酒飲みてぇだけじゃねぇか⁉︎

ではこのまま反省会に突入…とは行きたくない。

最後に一泡吹かしてやりたい。

こうなったら出し惜しみ無しだ。

筋力強化と並行して魔力干渉も使ってみる。

全身に風を纏い、更に脚力を強化させる。

身体が軽くなった分、脚力のコントロールもうまく行くだろうという算段だ。

「お、まだ追いかけっこしたいのか?仕方ねぇな…いつでも来な」

調子に乗るなよワンコロ。行くぞっ‼︎

片手を前に出し人差し指でチョイチョイ、とおちょくってくるラルフに対し、先ほどよりも早く距離を詰める。ラルフは…直前までその場から動かず、ギリギリの所で横に飛ぶ。

右だっ‼︎

一瞬の判断でブレーキ&方向転換。

さっきまでは急激な方向転換が出来なかったが果たして…成功である‼︎

ラルフの後を完璧にトレースする。

ほぼ直角に曲がりラルフに手を伸ばす。

一瞬驚いた表情を浮かべたラルフの胸ぐらを掴もうとするが…届かない。

あと僅かな距離を縮められずまた見失ってしまう。

止まり切れず派手に転がり…力尽きた。魔力切れだ。

「今のは中々良かったぜ。コツ掴めたのか?…ありゃ、魔力切れ起こしてやがる。今日はここまでだな」

最後まで聞き取れず意識を手放す。

クソッ…あと少しだった…のに………


主人公覚醒……はまだまだ先になりそうです。これからも応援宜しくお願いします‼︎

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