第16話 反撃の狼煙。俺は闇の組織を雇い悪魔の尻尾を掴みにかかる
毎月、五千万円。
俺は屈辱に奥歯を噛み砕きそうになりながら、須藤の用意した裏口座に最初の送金を済ませた。
日中の社長室。
須藤は相変わらず完璧な部下を演じている。
俺の好みの温度で茶を淹れ、一切の隙がない会議資料を揃える。
その涼しげな顔を見るたび、胃袋が煮えくり返るような殺意が湧き上がるが、俺は必死にそれを顔の奥底に隠し、完全に牙を抜かれた従順な飼い犬を演じ続けた。
だが、俺がこのまま大人しく搾取され続けるはずがなかった。
須藤を殺せないのは、あの「特別な薬」と「地下施設」が奴の管理下にあるからだ。ならば話は単純だ。
あの地下施設の正確な場所と、俺の体を維持する薬の出処さえ突き止めれば、須藤という仲介役は用済みになる。
別の裏の専門家を莫大な金で雇い、俺自身で施設ごと乗っ取ってしまえばいいだけの話なのだ。
数日後の深夜。
俺は歓楽街の路地裏に停めた黒い車の中で、裏社会で名を馳せる情報屋と向かい合っていた。
俺は分厚い札束の入った封筒を、後部座席の情報屋に向かって放り投げた。
「ターゲットはうちの役員だ。二十四時間、一切の隙を与えずに尾行しろ。立ち寄った場所、会った人間、すべて洗いざらい調べ上げろ」
「はい、わかりました。身内の調査ですか?社長業も楽じゃありませんね」
「口を挟むな。……特に、奴が出入りしているはずの秘密の研究所だ。その正確な住所と、内部の構造、出入りしている業者の正体を何としても探り出せ。もし見つけ出せば、今の三倍の額を払ってやる」
追加の報酬を聞いた情報屋は、札束の厚みを指で確かめながら下劣な笑みを浮かべた。
「お任せを。相手がただのしがないサラリーマンなら、三日もあればパンツの色まで丸裸にしてみせますよ」
「ただのサラリーマンではない。得体の知れない男だ。絶対に尾行に気づかれるなよ」
情報屋が音もなく闇に消えた後、俺は車の窓から冷たい夜風を深く吸い込んだ。
須藤よ。俺をただの金づるだと思っているなら、大きな間違いだ。
俺はこれまで、邪魔な人間はすべて実力と金で排除して、この地位に這い上がってきたのだ。
お前の尻尾を掴み、すべての権利を奪い取ったその時こそ、お前のその細い首をこの手でへし折ってやる。
俺は暗闇の中で、久しぶりに野心に満ちた黒い笑みを浮かべていた。
続く




