第7話:朝食の既成事実と、天才を解き放つ褒めちぎり
すみません、突然主人公の思考が漏れ出てしまいました。
「そうだった! フォースメル星系の最高級ロイヤルスイートだもんな!」
俺はポンと手を打って納得した。
部屋自体が広大なプライベートエリアになっていて、独立したラグジュアリーなキッチンとダイニングが完備されている。前夜のうちに時間を指定しておけば、専門のルームバトラーや洗練されたルームメイドたちが音もなく入室し、恭しく温かい朝食をダイニングテーブルへ完璧にセッティングしてくれるのだ。
「……なるほど。だからフィアは、あの完璧に整えられたダイニングで二人並んで朝食を食べたこと自体を、『バトラーにまでお給仕された、公式なお披露目の朝食』として捉えていたわけか」
バトラーたちの「四条先生、ノア・レティ女史、お二人のお目覚めに合わせた至高の朝食をご用意いたしました」という恭しすぎるお辞儀と、フィアの誇らしげな笑顔。
そりゃあ周囲から見れば「完全に特別な朝を迎えた二人」にしか見えないわけだ。
今宵もまたお越しいただきありがとうございます!
前回、決意表明のカッコよさが裏目に出て(?)、フィアから甘すぎる猛アタックを受けた航。
今回は、ロイヤルスイートの完璧なおもてなしの中で迎えた朝のお話です!
最高級のお部屋だからこそ、専用のルームバトラーが恭しくダイニングにセットしてくれた至高の朝食。それがフィアの中でどういう意味を持ったのか……?
過去への未練を吹っ切り、新しい世界で生きるテーマを決めた航。
そして、どこか自信の持てないフィアを、プロのコンサルタント技法でこれでもかと「褒めちぎり」倒して覚醒させます!
どうぞお楽しみください!
*ピピピピ……*
フォースメル星系が誇る最高級ホテル『グランド・フォースメル』。その最上階に位置するロイヤルスイートの寝室に、心地よい朝の光が差し込む。
「……ん……ふあぁ……あ、ワタル……おはよう……」
俺の腕の中で、フィアがまどろみながら目をこすっていた。
誤解のないように言っておくが、昨夜は彼女を優しく抱きしめ、おでこにキスをして頭を撫で続けたら、安心したのかスースーと可愛い寝息を立ててそのまま朝を迎えたのだ。
……そう、俺たちは「ただ同じベッドで眠っただけ」である。
だが、この部屋はロイヤルスイートだ。
独立したラグジュアリーなキッチンとダイニングが完備されており、前夜に指定しておいた時間通りに、電子チャイムが優しく鳴った。
*ピンポーン*
「四条先生、ノアレティ女史。お二人のお目覚めに合わせ、朝食のご用意が整いました」
恭しく入室してきたのは、洗練された制服に身を包んだルームバトラーとルームメイドたちだ。
彼らは流れるような洗練された手つきで、焼き立ての星間クロワッサンや、フレッシュな果実のジュース、銀器に盛られた温かいメインディッシュをダイニングテーブルへセットしていく。
「お二人にとって、素晴らしい一日の始まりとなりますように」
バトラーたちが深々と一礼して退室すると、ダイニングには湯気と香ばしい香りが立ち込めた。
「すごいわね……さすがロイヤルスイートのバトラーサービスだわ」
フィアは少し照れくさそうに、でも誇らしげに胸を張ってダイニングの椅子に腰掛けた。
バトラーに恭しく給仕され、二人並んで食べる至高の朝食。
フィアにとってこれは、単なる食事ではなく「四条航のパートナーとして公式にお披露目された時間」そのものだったのだ。
「……さて、過去の未練をいつまでも引きずるのは、男としてもコンサルタントとしても三流だな。俺はこの世界で、四条航として新しいテーマを持って前に進むよ」
俺はスープを一口味わい、心の中で前世の妻に「あっちで幸せにな」と感謝を告げて腹を括った。
目の前でフォークを手にしながら、どこか上目遣いにこちらを見つめている、いとおしい第一号パートナーと向き合うために。
「ところでフィア」
「な、なに? 朝から改まって……昨夜のこと、やっぱり後悔してる……?」
急に不安そうな顔をするフィア。
人種・電脳・コーディネーターのハイブリッドという異次元のスペックを持ちながら、彼女はあまりの天才ゆえに周囲から孤立し、「自分は誰かに必要とされているのだろうか」という根深い自己肯定感の低さを抱えていたのだ。
俺はテーブル越しに彼女の手を優しく包み込み、まっすぐにその瞳を見つめた。
「後悔? 冗談じゃない。俺は今、世界で一番果報者だと思っているよ」
「え……?」
ここからが、プロのコンサルタントによる『超絶・褒めちぎりコーチング(リフレイミング)』の開始である!
「いいかい、フィア。君の並列処理能力はただのスペックじゃない。相手の不条理や痛みを瞬時に理解しようとする『優しさ』が根底にあるからこそ機能しているんだ! 昨日だって、俺の無茶なDW-QCSのデータ構築に文句一つ言わず、完璧以上の精度で応えてくれた!」
「っ……そ、それは私が天才だから当たり前で……」
「当たり前じゃない! 君の美しさ、その透き通るような肌や青い瞳の美しさはもちろんのこと、何より素晴らしいのは『正しくあろうとする誠実な心』だ! 君は自分を『ただの技術屋』だと思っているかもしれないが、俺にとっては1万の星系を救うための『最強で唯一無二のパートナー』なんだよ!」
「な……っ! 唯一無二……っ!?」
「君が隣にいてくれるから、俺は生身のバニラのままで世界と戦える。君の技術と俺の知恵が合わされば、僕たちは銀河のどんな不条理だって書き換えられる! 君は最高だ、フィア! 自分をもっと誇りなさい!」
「〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!(限界突破)」
怒涛の勢いで自分の存在価値、技術、美しさ、心を100%肯定され、褒めちぎられたフィア。
顔から火が出るどころか、頭のサイバネティクス回路からパチパチと嬉しい悲鳴のスパークが散った。
「う……うわああぁぁん! ワタルぇぇぇっ!」
感情が爆発したフィアは、テーブルを回って俺の胸に飛び込んできた。
「ずっと……ずっと寂しかったの! 誰も私の技術しか見てくれなくて……こんなに私自身を見てくれて、認めてくれた人なんて、ワタルが初めてなのぉっ!」
「よしよし、よく頑張ってきたね」
俺が彼女の背中を優しく撫でると、フィアの瞳から迷いが完全に消え去り、力強い輝きが宿った。
「私……もう迷わない! ワタルのためなら、1万の星系のデータベースだろうが、高次元存在の構造解析だろうが、全部一瞬で最適化してみせる! 私はワタルの最高の右腕で、最高のパートナーなんだから!」
自己肯定感が底抜けに覚醒した天才技術者・フィア・ノア・レティの誕生である。
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*カチャ*
ホテルのフロントでチェックアウトを済ませる俺とユーリア。
「ありがとうございました、四条先生、ノア・レティ女史。バトラーからの報告によりますと、素晴らしい朝をお過ごしいただけたようで何よりです」
フロント係の宇宙人がニッコリと意味深に微笑む。
フィアは俺の腕にぎゅっと抱きつき、胸を張って言い放った。
「当然よ! 私たち、あの朝食で『完璧な関係』になったんだから!」
「(※朝食を食べただけです)」と心の中でツッコミを入れつつ、俺は周囲の「あいつらやったな」という温かい(?)視線を爽やかな笑顔で受け流したのだった。
第7話をお読みいただきありがとうございました!
ロイヤルスイートならではのバトラーサービスによる朝食が、フィアの中で「完璧な関係の証明」として見事に成立してしまいました!
そして、過去の未練を吹っ切った航のプロの褒めちぎりコーチングにより、フィアの自己肯定感が爆発的に覚醒!
最強の相棒を手に入れた二人は、いよいよ次回、1万の生命根源種を統合・整理する『銀河大整頓』へ挑みます!
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次回もお楽しみに!




