11 調査2日目(2)
3話にて、アルバートくんの名字を誤って掲載してしまっていたので修正しました、すみません!
王都の広場着いたので、辺りを見渡すとアルバート様が護衛もなしに1人で噴水の側で立っているのが見えた。
仮にも一国の王子なのだから、もう少し危機感を持ったほうがいいと思う。
式典や学校で見る時とは違い、白のシャツに黒色のズボンと随分目立たない格好をしている。
制服ではないところを見ると、一度帰宅して着替えてから来てくれたんだろう。律儀な人だ。
まぁ、それでもやはり王族ゆえのカリスマ的オーラが隠しきれておらず、道行く人々がちらちらとアルバート様の方を見ているが。
これ以上目立つ前にさっさとアルバート様の元へ行ったほうがいいだろう。
私がアルバート様の元へ足を進めると、アルバート様はすぐに私の接近に気づいて歩み寄って来た。
「やぁ、昨日ぶりだなシャルル。君に怪我がなさそうでよかった」
「こんにちは、アルバート様。早速ですが、情報を共有したいのでどこか違う場所へ移りましょう。ここでは少し目立ちます」
「それならいい場所があるんだ。着いて来てくれ」
街を出て森の中を通り本当に大丈夫かと思いながらアルバート様の後についていくと、終に綺麗な湖のほとりにある小さなコテージに着いた。
「ここだ、中に入ってくれ」
アルバート様に促されてコテージへと入ると、中は木製の机と椅子、それにベッドや棚など必要最低限の家具しか置かれていなかった。
アルバート様が流れるように自然な動作で椅子を引いてくれたので座ると、アルバート様も私の向かい側にある椅子に座った。
アルバート様の別荘か何かだろうか、いや、それにしてはあまりに外観や内装が質素すぎる。王族の別荘ならもっと豪華だろう。その上王都から距離だってあるし。
私が考えている様子を見て察したのか、アルバート様はこの山小屋について説明してくれた。
「ここは、僕が両親や使用人にも内緒でこっそり作った秘密基地みたいなものでね。ここなら誰かに居場所がバレることも、会話の内容を聞かれる心配もないだろうから、君と話し合うのにぴったりだと思ったんだ」
「アルバート様1人だけでこの小屋を?凄いですね」
「大したことじゃないさ、それに、僕1人で作ったんじゃない。僕の親友と一緒に作ったんだ」
アルバート様の親友……?少し気になったが、それよりも驚いたことがあった。
「アルバート様にもご友人がいらしたんですね」
「……前々から思っていたが、僕に対しての物言いが辛辣になってきていないか?」
失礼な、アルバート様の性格や日頃の私への言動を鑑みた上での発言なのに。
「アルバート様の勘違いでは?」
「まったく…まぁいい。それよりも、早く調査結果について報告しよう」
先ほどとは打って変わって真剣な表情になったアルバート様は、今日の学院での出来事を話し始めた。
「魔法科学の授業は5限目だったから、それまでは、休み時間は教室の外を歩いてイヴェリッチ教諭を探していたんだ――
最初はなかなか見つからなかったけど、昼休みに中庭のベンチで昼食をとっていると偶然、東練へ向かうイヴェリッチ教諭の姿が見えてね。
話しかけようとしたんだけど、教諭はちょうど僕より前を歩いていた男子生徒に話しかけに行ってしまったんだ。
だから、話しかけるタイミングを伺ってしばらく待っていると教諭が突然、顔を真っ赤にしてその男子生徒を怒鳴り始めたんだ。
男子生徒は当然困惑していたし、教諭の言っていることを聞く限り、明らかに生徒の方に非はない、些細で理不尽な理由で怒っていたんだ。
さらには男子生徒に魔法を撃とうと杖まで取り出したから、流石に僕が止めに入ったんだけど、教諭は急に割り込んできた僕を見て、
「おい!生徒風情が教師である私に逆らうつもりか!?王族だろうと調子に乗るなよ!………クソッ、こんなやつ黒魔石を使えば……っ!もういい、さっさと下がれ!」
そう言って、教諭はずんずんと不機嫌そうに歩いて行ってしまったんだ。
「あ、ありがとうございました!」
「気にしないでいい。それよりも、イヴェリッチ教諭はいつもあのような様子なのかい?」
子供の頃に一度、父上に連れられた学会で彼を見たことがあったけど、あそこまで情緒が不安定で、すぐに癇癪を起こすような人ではなかった。
この数年で彼が変わってしまったのか、それともここ数ヶ月の間に急変してしまったのか知りたかった僕は、そう男子生徒に尋ねた。
「いえ、入学式に会った時は、あんな風に俺を怒鳴ることはなかったんですが……最近は様子が変で、俺以外の生徒にも人が変わったように急に怒ることが増えて…」
「……そうか、ありがとう」
男子生徒と別れた後、授業に行く前にイヴェリッチ教諭の研究室を調べようと思って立ち寄ったんだけど、普通の鍵に加えて強力な施錠魔法がかかってあったから、入るのは諦めたんだ。
解除することはできたけど、後で教諭にバレたらまずいからね。
その後教諭の授業を受けたけど、昼休みのように豹変するようなことはなく、普通に授業は終わったんだ。
――というのが一連の出来事あらましだよ」
うーん、気になることがたくさんあるな……
まず、教諭の様子がおかしすぎるのもそうだが、一体何が、教諭をそんな状態にしたんだ?
それに、研究室に施錠魔法がかかっていたことも気になる。
普通は備え付けの鍵だけで事足りるはずなのに、教諭がわざわざ施錠魔法をかけた理由は?研究室に何か見られたくないものでもあったのか?
真実を解明するためにも、明日、イヴェリッチ先生と直接話をする必要があるな。
私は顔を上げアルバート様を真っ直ぐ見つめた。
「アルバート様、お願いがあります」
「もちろん、喜んで聞くよ。――君のために、僕は何をすればいい?」
「明日、イヴェリッチ先生を呼び出して話をします。だからアルバート様は――」
計画を伝えた私は、アルバート様と別れ帰路へとついた。
明日、明日で私の運命が決まるんだ。
漠然とした緊張で早くなった鼓動を感じながら、私は家へと足を急いだ。




