9 調査1日目(3)
よし、途中で馬車に轢かれかけたり道に迷ってマフィアが会合してるとこ突っ切っちゃったりしたけど、なんとか国有倉庫に着いたぞ。
門のそばには2人、倉庫を囲む塀の外には数メートルおきに衛兵がいて、どこから侵入しようとしてもすぐにバレて捕まってしまうだろう。
仕方ないが、ここは透明ポーションを使うしかないか。
私は白衣の内側のポケットに忍ばせておいたポーショ……ンの入った試験管を取り出して、栓を抜いて中の液体を飲んだ。
「ゔっ………」
まずい、まずすぎる。
これだからポーションを使うのは嫌なんだ、この世にあるどのポーションも不味すぎて飲めたものではない。
その中でも特に、透明ポーションは苦味と酸味が混ざり合ってレモン汁を拭いた後の雑巾みたいな味がするから、できるだけ飲みたくなかったんだよな………
しかも、不味さの割に効果は10分しか続かないからコスパが終わっているのも最悪なポイントだ。
私が不味さに悶絶しているうちに、どんどん体が服ごと透けてきた。
倉庫の前に建っている時計塔を見ると、針は14時50分を指し示していた。
つまり私は、15時ぴったりまでに倉庫を出てここに戻ってくればいいと言うわけだ。
門を見ると、ちょうど荷車がやってきて門を通ろうとしているところだったので、私は門が開いている隙に門番の横を通り過ぎた。
一瞬、一方の門番と目が合った気がしたが、その後すぐに前を向いたので、おそらくたまたまだろう。
さ、薬の効果が切れる前に早く調査しなければ。
確か黒魔石が保管されていたのは6番倉庫だったはずだ。
6と書かれた倉庫を見つけ、中に入ろうと扉に手をかけたが、南京錠があって開けることはできなかった。
しかし、焦ることなかれ。
こんなこともあろうかと、さっき門番の腰に吊り下げられていた鍵をくすねてきておいて良かった。
しかし、鍵のデザインはどれも同じで、どれがどの倉庫の鍵が見当もつかない。
タイムロスになるが、ここは一つずつ試していくしかないようだ。
結局、最後に試した鍵が6番倉庫の鍵だった。
今日も相変わらず、私の不運体質は絶好調のようだ。
時計塔の方に目をやると、時刻はもう55分になろうとしていた。
扉を開けるのに時間を使い過ぎたな…
一刻も早く調査をするために、私は急いで倉庫の中へ入っていった。
さすがは国家が保有する倉庫なだけあって、中はとんでもなくだだっ広く、どこまでも続いていると錯覚してしまうほど多くの棚が並んでいた。
黒魔石が置いてあった棚は確か奥の方に……お、あったあった。
その場で魔法が使用された形跡や、魔力の残穢などがないかを調べたが、全くと言っていいほどそんな証拠は残っていなかった。
なんだか腑に落ちないが、時間もないので私は塀の周りを調べるために倉庫から出た。
あの倉庫から急いで塀を乗り越えて逃走したとなると、この辺りの塀の上を飛び越えて犯人は逃げて行ったはずだ。
早速先ほどと同じように魔法や魔力の痕跡を調べると、非常に微弱だが、一つだけ魔法が使用された痕跡が見つかった。
創造魔法だ。
創造魔法はその名の通り、自分の脳内でイメージした物質、例えば鉛筆や鍋なんかを創造することができる魔法だ。
聞いていると便利な魔法に思えるが、魔力消費が大きく、その上物質を創造するにはその物質についての詳細で繊細なイメージを必要とするため、完璧に扱える人は少ない。
しかし、なぜイヴェリッチ先生はこんな大仰な魔法を使ったんだろう。
魔力痕跡を残せば自分が犯人だとバレるのも時間の問題なのに、わざわざこの魔法を使った理由は?それに、先生がこの魔法を本当に使ったとして、なぜこんなにも魔力痕跡が少ないんだ?
わからないことだらけで思考が止まってしまう、が、今はそんなことをしている暇はない。
時計を見ると、ポーションの効果が切れる15時の1分前だった。
流石に侵入がバレてしまうと今度は私も終わりなので、私は今世紀一番ぐらいの全力疾走をして、なんとか15時になる前に門をくぐることができた。
「ハァ、ハァ………」
やはり久しぶりの肉体運動は疲れるな。
まぁ、何とか無事に調査を完了できたし、今日のところの目標は達成できたと言ってもいいだろう。
疲れてヘトヘトになった私は、そのままゆっくりと家へと帰路についた。




