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武道場にて 其の9

「それにしても、柄見先生ったら」


怜先生に盛大にからかわれて、遊はすっかりご機嫌斜めです。一方、英子の方とは言えば、変に照れ臭そうです。


「ま、まあ、遊ちゃん、そんなことより、早く教室に行きましょう。遅くなっちゃうわよ」

「それもそうね、英ちゃん。だけど、やっぱり英ちゃんに申し訳ない気がするわ。何から何まで面倒かけちゃって」

「め、面倒だなんて、わたしはそんな風には思ってはいやしないのよ、遊ちゃん」

「だけど、英ちゃん。ほら、昨日だって、あんなに素敵な『時そば』、英ちゃんが聞かせてくれたのに、あたしったら、お礼の電話もしなかったじゃあない。英ちゃん、武道場に行く前に、教室で、あたしが柄見先生と昨日の夜電話したって言ったら、どうもがっかりしたみたいじゃあない」

「そ、そんなことないわよ、遊ちゃん。わたしだって、遊ちゃんが『時そば』聞いてくれて、嬉しかったし、そもそも、遊ちゃんがわたしを助けてくれたわけだし……」

「ねえ、英ちゃん。英ちゃんの電話番号教えてくれない」

「で、電話番号を、遊ちゃん」

「うん、やっぱり、昨日のお礼は昨日のうちにするべきだったわ。お礼の言葉なんだから、ラインとかだと駄目よね。直接の言葉で伝えなきゃあ。まあ、面と向かって礼をいうのが一番だけど、一刻も早く言いたいことだって出てくるだろうし。それとも、嫌かな、英ちゃん。いちいち電話なんかされちゃあ」

「いいえ、遊ちゃん。番号、交換しましょう、今、すぐに」

「う、うん、英ちゃん。本当にありがとうね、昨日も、今日も。あたし、英ちゃんが海応学園にいてくれてすっごく良かった」

「わ、わたしもよ、遊ちゃん。遊ちゃんが編入してきてくれて本当に嬉しいわ」


こうして、遊と英子は互いに電話番号を交換しあったのでした。

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