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遊と英子の出会い 其の8

保健室の中に入った怜先生は、遊と英子が一つのベッドで体を重ねているところを目撃します。もちろん、さっきまでしっかり二人の様子を盗み見ていたので、事情はわかっているのですが、そんなことをそのまま言ってしまっては、覗き見がばれてしまいます。その上教師という立場もありまして、とりあえず、説教と相成ります。


「あなたたちねえ、仮にも学校という場所で何しちゃってくれてるのよ」

「ち、ち、ち、違いますってば。柄見先生、これは違うんです。ねえ、英子さん」

「そう、そうよ、断じて違います。そうよね、遊さん。本当なんです。信じてください、先生」


遊と英子が言うことは嘘ではないと、百も承知の怜先生ですが、ちょっとしたいたずら心が頭をもたげます。


「どうだか。それにしても、遊さん。あなたねえ、編入したばかりであんな風にことに及ぶだなんて、度胸があると言うか、なんと言うか……」

「ですから、あたし、英子さんとそんなことしていません。ねえ、そうよねえ、英子さん」

「そうなんです。わたしは遊さんに変なことやってません。ここに来たばかりの編入生に、そんな風なことするような卑怯な真似、わたし、絶対にやりません」


遊と英子の懸命な弁明に、怜先生もようやく仏心を出してあげます。もっとも、出歯亀をしていた怜先生も怜先生なのですが、そんなことはおくびにも出しません。


「まあいいわ、遊さんに英子さん。別にことを録画した映像があるわけでもないし、証拠不十分につき、今回は勘弁しておいてあげるわ。あんなこと、二度とやっちゃあいけませんよ、二人とも」

「いえ、柄見先生。そんな、“こと”なんて物自体なかったんですから証拠映像なんてあるはずないですよ。そうですよねえ、英子さん」

「そうよ、遊さん。だいたいなんですか、先生。“二度と”だなんて、わたし達は、一回だってそんなことしてやしないんだから」

「あらあ、遊さんに英子さんは、二人とも鋭いじゃあない。てっきり先生の誘導尋問に引っかかってくれちゃうかと予想していたのに」

「もう、柄見先生ってば、いい加減にしてください。そうよねえ、英子さん」

「全く、遊さんの言うとおりですよ、先生。そのくらいで勘弁してください」


このままでは遊に英子が二人とも怒り出しかねないと感じて、怜先生は、この話題にけりをつけます。


「じゃあ、それでいいわ。でも、遊さん、今日はあなたにこの海応学園を案内するつもりだったけど、なんだかんだで、結局全然案内できなかったわね。もう時間も遅くなっちゃたし……ところで、遊さん。今日は学校にどうやってきたのかしら」

「あっ、はい。それは家から電車で、ここの近くの駅まで来て、そこからは歩いてきました」

「そうなの、英子さん、確かあなたも電車通学だったわよね。だったら、駅まで一緒に行きなさい。遊さんはまだこの辺りに慣れてはいないでしょうから」

「えっ、ええ、先生。わたしはそれで構いませんけれど、遊さんはそれでいいの?」

「はいっ、英子さん。是非ともお願いします」

「決まりね、二人とも。だけどね、一応言っておくけど、さっきは学校内であることを第一の問題としたけれど、校外だったら、ああいったことをなんの問題もなくしていいわけじゃあないからね。遊さん、英子さん、二人とも自分達が高校生であることをちゃんとわきまえておくのよ」

「だから、柄見先生!ほら、英子さんも、なに顔を赤くしているんですか。こっちまで恥ずかしくなってきちゃうじゃあないですか。思い出させないでくださいよ」

「いいえ、違うわよ、遊さん。これは違うの。別に顔を赤くなんてしてないわ。それより、先生の言うとおり早く帰りましょう。駅まで二人一緒に行くんでしょう」

「それもそうね、英子さん。それじゃあ、柄見先生、今日のところはこれで失礼します。色々ご迷惑おかけしました」

「迷惑だなんて、遊さん、とんでもないわ。どちらかと言えば迷惑をかけたのは英子さんの方だしねえ」


そう言って怜先生は、英子の方をいたずらっぽくちらりと見ます。


「もう、嫌だわ、先生。じゃあさようなら、また明日、学校で」

「はい、さようなら。遊さん、英子さん、二人とも気をつけて帰るのよ」


こうして遊と英子は帰路につきます。後に残された怜先生は一人思いを馳せるのでした。


「やれやれ、困った二人なんだから。でも、これからどうなって行くのか、楽しみったらありはしないわね」


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