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遊と英子の出会い 其の4

 いったんは照れていた遊でしたが、ふと思い出して英子に質問をします。


「そうだ、英子さん。英子さん倒れる前に『時そば』してましたよね。『時そば』、しかも英語で。なんで英語なんですか? 外国人にでも聞かせるんですか」

「ええ、まあ、日本語が理解できない人に、落語をやって見せることも考えてはいるけれど……」

「すごいです、英子さん。そうですよねえ、今の時代、忍者とかなんとかでジャパネスク的な物が海外で大いに受けていますものねえ。日本由来の落語が日本国内より、むしろ外国で人気が出るっていう事も大いにあり得ますよねえ」

「いえ、そうじゃなくてね、遊さん」

「それで、『時そば』を英語でやっちゃうんですかあ。うん、いいですね。外国人なら日本文化になじみがない人も大勢いるだろうから、とっつきやすい『時そば』っていうのはいいチョイスですね。そうかあ、英語でかあ。あたしにはできなかった発想ですよ、英子さん」

「そうじゃないのよ、遊さん」

「そうじゃないってどういうことですか、英子さん。さっきの『時そば』はどう聞いても英語だったじゃあないですか。それがどうして」

「えっとね、遊さん。確かにわたしは海外出身の人に落語をすることもあるとは思うけれどね、あの時していたのは、そういったものじゃあなくて、『時そば』を自分なりにアレンジしたものというか、パロディというか……」

「うそっ、アレンジ! パロディ! それって英子さんのオリジナルっていう事ですか。英子さんってば、話の創作とかやっちゃうんですか?」

「いや、オリジナルなんてそんな大層なものじゃあなくてね、あくまでパロディよ、おおもとの、『時そば』あってのお話だから」

「それでもすごいですよ。自分で落語作っちゃうだなんて。そうなんだ、あたし、聞きたいなあ。英子さんが作ったていう、その、ら・く・ご」

「だから、作った落語なんて、そんな大したものじゃあなくて」

「でも、英子さん。さっきあたしに借りができたって言いましたよね。だったら」

「うっ、それはそうだけど、遊さんって結構意地悪ね。まあいいわ。でも、少し恥ずかしいから笑わないでね」

「笑っちゃあだめなんですか? 落語なのに?」

「そういうことじゃあなくてね、そうね、好きに聞いてちょうだい。ちょうどここは保健室でベッドも二つあることだし、私がこっちのベッドで一席やるわ。遊さんはそっちのベッドで楽に聞いててちょうだい」

「はい、わかりました、英子師匠」

「師匠はやめてよ、遊さん。そんな御大層なものじゃあないったら。全くもう、それじゃあ始めるわよ。


 こうして英子は遊ひとりのため、落語をすることになりました。一方、遊は英子に『楽にしてて』と言われたものの、少々緊張しています。そういえばほかの人が落語をするのを生で見ることは、あたし初めてだなあ、と思いながら。

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