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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第二部  作者: マスター


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8/12

第8話 「環境にいい会社でいたい」と「今年も決算を出さなきゃいけない」のあいだで

第6話では、農家の「締め切り」。


第7話では、自治体の「締め切り」。


その中に、土を戻す話をどう差し込めるのかを見ていきました。


第8話では、視点を「企業」に移します。


環境配慮やサステナビリティを掲げながらも、四半期決算、株主、取引先との契約の中で、土壌や流域への投資をどこまで現実の数字として扱えるのか。


主人公が、食品・流通系の企業に話を聞きに行く回です。

「“環境にいい会社でいたい”って気持ちは、本気なんですよ」


そう前置きしてから、その人は少しだけため息をついた。


ガラス張りの会議室。


壁には、会社のミッションステートメントと、SDGs風のカラフルなピクトグラム。


向かい側に座っているのは、大手食品メーカーのサステナビリティ担当。


名刺には、そんな肩書きが書かれていた。


『舞台が一気に変わったな』


タブレットの隅で、AIが文字を出す。


「いや、土の話を書いていて、まさか“サステナ担当”って役職の人と会うと思ってなかったよ」


俺は心の中で返した。


第1節 「サステナ担当」は、“未来のこと”ばかり考えているわけじゃない


「サステナって聞くとさ」


俺は正直に言った。


「勝手なイメージですけど、“十年後、三十年後の世界”みたいな話ばっかりしてる部署なんだろうな、って思ってました」


担当者は苦笑した。


「半分くらいは当たってますね」


「半分は違う?」


「もう半分は、“来月の取締役会のスライドをどう作るか”とか、“来期の目標をどう決めるか”とか、“今期のレポートをどう出すか”とかですよ」


「あ、そっちも締め切りなんですね」


「締め切りだらけです」


担当者は、手元のノートPCを軽く叩いた。


「環境の話って、“長期視点が大事です”ってよく言われますけど、実務としては“今期どう見えるか”から逃れられないんです」


「今期」


「はい」


「“この取り組みで、今年どれくらいコストが増えるのか、あるいは減るのか”」


「はい」


「“どれくらいブランド価値に効くのか”」


「はい」


「“どれくらいリスクを減らせるのか”」


「はい」


「それを、数字とスライドで説明しなきゃいけない」


『企業にも締め切りがあるわけだな』


AIが、静かに文字を出した。


第2節 「土壌再生」は、スライドに載せるには地味すぎる


「正直に言ってしまうと」


担当者は少し身を乗り出した。


「土壌再生の話って、めちゃくちゃ大事だと思っているんです」


「ありがとうございます」


「でも、“スライドに載せる題材としては地味すぎる”っていう現実もある」


「やっぱり、そうなんですね」


「太陽光パネルとか、再エネ導入とか、電気トラックとかは、写真映えするんですよ」


「分かります」


「“この工場の屋根に、こんなにパネルを載せました”って、図で一発で分かる」


「はい」


「でも、“この畑の土壌の団粒構造が良くなりました”って、どうやって五秒で伝えるんですか」


「たしかに難しい」


「“この流域の栄養塩流出が五年で何%減りました”も、説明すれば分かるけど、直感的ではない」


「スライドの一枚目に置きにくいわけですね」


「そういうことです」


担当者は、苦笑しながら言った。


「土は大事なんです。でも、地味なんです」


『第4話からずっと言っているな』


AIが小さく出す。


「地味なものほど大事問題、また来たな」


俺は心の中で返した。


第3節 「サプライチェーンのリスク」としての土


「でも、土って」


俺は、さっきから気になっていたことを口にした。


「御社みたいに食品を扱っている会社からすると、かなり“ど真ん中”のインフラじゃないですか?」


担当者は、少しだけ真顔になった。


「その通りです」


「収穫量が不安定になる」


「はい」


「品質がばらつく」


「はい」


「干ばつや豪雨で、一つの地域の供給が止まる」


「はい」


「それって全部、土と水と気候の話ですから」


「サプライチェーンのリスクそのもの」


「そうです」


担当者は、手元の資料を一枚めくった。


「社内でも、“土や流域をどう扱うかは、中長期的なサプライチェーンリスクの話だ”っていう意識は、少しずつ出てきています」


「それなら、土壌再生の話も通りやすくなりそうですね」


「理屈の上では、そうなんですけどね」


担当者は、そこで少し苦笑した。


「でも、理屈が通ることと、社内で優先順位が上がることは、別なんです」


「ああ」


俺は、思わず声を漏らした。


「第6話と第7話でも聞いたやつだ」


『分かる、だがすぐには動けない』


AIが文字を出す。


『第2部の基礎文法になりつつあるな』


「便利ワード増やすな」


第4節 「いいこと」が多すぎて、優先順位で負ける


「問題は、“いいこと”が多すぎることなんですよ」


担当者は言う。


「多すぎる?」


「はい」


「再エネを増やすのも、いいこと」


「はい」


「工場の省エネを進めるのも、いいこと」


「はい」


「プラスチック削減も、いいこと」


「はい」


「フードロス削減も、いいこと」


「はい」


「土壌再生も、いいこと」


「はい」


「でも、全部を一度にやる予算も人手もない」


「ああ……」


「だから、“どれからやるか”を決めなきゃいけない」


「優先順位」


「そうです」


担当者は、ノートPCの画面を少しこちらに向けた。


そこには、いくつもの環境施策が、表のように並んでいる。


コスト。


効果。


説明しやすさ。


規制対応。


実施難易度。


リスク低減。


「そこで、“すぐ見える”“今期数字に出る”“お客様に伝えやすい”“規制対応に直結する”ものが、先に選ばれやすい」


「土は、その条件からすると、かなり不利なんですね」


「残念ながら」


担当者は、小さく頷いた。


「土は、長いんです」


「長い?」


「時間軸が長い。効果が出るまでの時間も、説明に必要な文脈も、関係者の数も」


「だから、短期の表では弱く見える」


「そうです」


第5節 「でも、何かやっておかないと怖い」という感覚


「それでも、土の話を完全に無視することもできないんですよ」


担当者は、少し不安そうな表情で言った。


「どういう意味ですか?」


「気候が不安定になってきているのは、現場の農家さんからも聞いていて」


「はい」


「豪雨が増えたり、干ばつが続いたり、病害虫のパターンが変わったり」


「はい」


「そうなると、“今まで通りの仕入れ前提”が、だんだん危うくなってくる」


「たしかに」


「だから、“土と水の状態を良くする方向に、どこかで投資しておかないと怖い”って感覚もあるんです」


「怖い」


「はい」


担当者は、少しだけ声を落とした。


「ただ、その“怖さ”は、今期の損益計算書には乗らない」


「見えないリスク」


「そう」


「だから、“今すぐ投資すべきリスク”として扱うには、まだ社内の言葉が足りない」


『見えないリスクを、見える数字に変換できない』


AIが書く。


『自治体の回とかなり近い』


「土はどこに行っても見えにくいんだな」


俺は、心の中で呟いた。


第6節 「土に投資する」と言うと、どこにいくら出す話になるのか


『今のところ、構造の話は農家と自治体とかなり似ているな』


AIがタブレットに文字を出す。


「“分かっているけど、どこから始めるかで止まる”って点は、同じですね」


俺は、小声で返した。


担当者は続ける。


「“土に投資する”って、言葉としてはすごく良いんですけど」


「はい」


「実務に落とすと、“どこに、どういう条件で、いくら出す”話になるじゃないですか」


「たとえば、契約農家の圃場で土壌再生の実証をする、とか?」


「そうですね」


「でも、そこには“移行期に収量が落ちたらどうするのか”、“コスト負担はどう分けるのか”、“成果が出なかったときにどう評価するのか”という現実の設計が付いてくる」


「確かに」


「“いいことだからやりましょう”だけでは、契約書にならない」


「そこに、制度設計が必要になる」


「そうなんです」


担当者は、少しだけ疲れた顔で笑った。


「サステナビリティって、きれいな言葉なんですけどね」


「はい」


「実務では、けっこう契約書と稟議書の世界なんです」


「急に胃が痛くなる言葉が出てきた」


「毎日そんな感じです」


第7節 「長期契約」と「土の時間」


「とはいえ、やりようが全くないわけではない」


担当者が、少しだけ声のトーンを変えた。


「たとえば?」


「長期契約です」


「長期契約」


「はい」


「土壌再生って、三年とか五年とか、時間がかかるじゃないですか」


「はい」


「だったら、こちらも“短期スポットの買い付け”ではなく、“何年か継続して仕入れる約束”を前提にした契約を作る」


「それによって?」


「農家側が、“移行期のリスクを少しは見込んで動ける”ようにする」


「ああ、なるほど」


「もちろん、それだけで全部のリスクが消えるわけではないですけどね」


「でも、“明日からどうなるか分からない取引”に比べれば、だいぶ違いますよね」


「そう思います」


「土の時間に、契約の時間を合わせるわけか」


俺がそう言うと、担当者は少し目を細めた。


「それ、いい言い方ですね」


『今日の収穫だな』


AIが文字を出す。


「土の話で収穫って言うな」


第8節 「物語としての価値」と「市場としての価値」


「もう一つ、個人的に感じているのは」


担当者が、少し照れくさそうに言った。


「こういう取り組みって、“物語としての価値”も大きいと思うんです」


「物語として?」


「はい」


「“この商品の後ろには、土を戻そうとしている農家さんがいて”」


「はい」


「“そのために、こういう契約と支援をしていて”」


「はい」


「“この地域の洪水リスクや、海への負荷も減らそうとしている”」


「はい」


「そういう話って、ちゃんと伝えれば、お客様の一部には響くと思う」


「“なんとなく良さそう”を超えたストーリーですね」


「そう」


担当者は、少しだけ慎重に言葉を選んだ。


「ただ、それを“市場としての価値”に変換できるかどうか」


「市場としての価値」


「つまり、どれくらい売上やブランドの安定につながるか」


「はい」


「そこは、まだ手探りなんです」


「物語と市場のあいだ」


「はい」


「そこを繋ぐ言葉と事例が、まだ足りない」


第9節 主人公は、「企業と農家のあいだの物語」を書く役割を見つける


『お前にできることは?』


AIが、ここでも聞いてくる。


俺は、担当者の言葉を反芻しながら考えた。


「第6話では、“技術の話と暮らしの話を一緒に聞いてくれる人”って役が、農家側にとって助かるかもしれないって話が出た」


『出たな』


「第7話では、“土を戻す話を、防災の文脈で書く”って役が見えた」


『そうだ』


「第8話では、“企業と農家のあいだにある契約とリスクと物語を、セットで見せる”って役がありそうだな、って思ってる」


担当者が、少し首をかしげた。


「どういう意味ですか?」


「御社みたいな企業が、“土を戻したい農家と、長期契約や実証プロジェクトを組もうとしている”ところを、ちゃんと物語として書いて、外に出す」


「はい」


「それも、“きれいなPR”としてじゃなくて、リスクや葛藤も含めて」


「葛藤も含めて」


「“うまくいった話”だけじゃなく、“途中でつまずいた話”も一緒に書く」


担当者は、少し驚いた顔をしてから、笑った。


「なかなか胃の痛くなりそうな物語ですね」


「でも、そのくらい正直じゃないと、第2部としては意味がない気がしていて」


「第2部としては、ですか」


「はい」


担当者は、少し考えるように視線を落とした。


「でも、確かに」


「はい」


「きれいな成功例だけ並べても、現場はたぶん信じないんですよね」


「そう思います」


「失敗や調整も含めて見せるなら、逆に信頼になる可能性はある」


「そこを書けたら、少しは意味があるのかなって」


『かなりある』


AIが、短く出した。


第10節 「環境にいい会社でいたい」と「今年も決算を出さなきゃいけない」のあいだ


会議室を出て、ビルのエントランスで一息つきながら、俺はノートを開いた。


“環境にいい会社でいたい”


“今年も決算を出さなきゃいけない”


その二つのフレーズを書いて、線で結ぶ。


企業は、どちらか一方だけを選べる世界にはいない。


片方だけを選んだ瞬間、どこかが破綻する。


だから、そのあいだで揺れる。


土を戻すことは、企業にとって、


コストであり、


リスクであり、


長期の安全保障であり、


物語であり、


ブランドであり、


社員の誇りでもある。


その全部が混ざった、ややこしいテーマだ。


『ややこしいまま持ち帰れ』


AIが言った。


「まとめさせてくれないのかよ」


『今まとめると、きれいにしすぎる』


「それも第2部か」


『そうだ』


俺は、少し笑ってノートを閉じた。


第8話は、そのややこしさを、そのまま持って帰る回として、ここで区切っておく。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


第2部第8話では、土壌再生や流域への配慮を「企業」の視点から見に行きました。


特に、サステナビリティ担当という立場の人が置かれている現実――「長期視点」と「今期の数字」のあいだで揺れる構図――が浮かび上がってきました。


企業にとって、土壌や流域はただの環境テーマではありません。


食品や原料の安定供給という意味では、サプライチェーンリスクです。


洪水や干ばつによる供給途絶という意味では、気候リスクです。


そして、それをどう取締役会や株主、取引先に説明するかという意味では、言葉と数字の問題でもあります。


土壌再生は、再エネ導入や省エネ設備更新に比べると、どうしても伝えにくいテーマです。


写真やスライドで一目では伝わりにくい。


成果が数年から十年単位で現れる。


直接的な規制対応や短期のコスト削減に結び付きにくい。


そのため、“いいこと”であるにもかかわらず、優先順位の競争で後回しにされがちです。


一方で、気候の不安定化に伴って、「今まで通りの仕入れ前提」が危うくなっているという実感から、「どこかで土と水に投資しておかないと怖い」という感覚も、企業側には少しずつ出てきています。


その間をつなぐ具体的な手段の一つとして、今回は「長期契約」が出てきました。


短期のスポット取引ではなく、数年単位の仕入れを前提にすることで、農家側が土壌再生への移行リスクをある程度見込んで動けるようにする。


土の時間に、契約の時間を合わせる。


ただし、それも「コスト負担の分け方」「移行期の収量変動」「成果が出なかった場合の評価」といった設計を伴います。


単純な“いいことだからやりましょう”では済みません。


主人公自身は、「物語を書く市民」として、企業と農家のあいだにある契約・リスク・物語を、PRではなく“葛藤も含めて”描いていく役割を見つけ始めています。


それは、土壌再生を「環境によさそうな取り組み」という表層から、「サプライチェーンリスク」「ブランド」「社員の誇り」まで含んだ、立体的なテーマとして共有する試みでもあります。


第8話は、“企業にもまた、土を戻す話と決算のあいだで揺れる現実がある”ことを、読者と共有する回でした。


次回以降では、同じ問いを「市民」の側――安さと安心と未来のリスクのあいだで揺れる日常の選択――に当てはめながら、「土を戻すって、つまり誰が何をやるのか」を、第2部後半の着地点に向けて、さらに具体的に描いていきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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