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39話 気に入らない女

 服が血で汚れた。……どうでもいい。早く美雪を助けないと。

 ザッ…ザッ……

 俺は足を引きずるように歩く。

 何もしたくない。

 それでも、足だけが前に出る。

 体だけが、美雪の方へ向かっていた。

 膝をつく。力の抜けた手で、美雪の傷を押さえる。

 ひどい怪我だ。王国……間に合うか?

 ……いや、こいつがいる。

 動かない女に視線を向ける。

 なんでお前が泣いている?

 ――その瞬間、何かが切れた。

 ……ふざけるな。

「お前なら、美雪の傷……治せるだろ? 治せよ。」

 沸々と膨れ上がる怒りを押し殺し女に問う。

「……なんで? 美雪も、あなたも……あたしにひどいことした。……なんで言うこと聞かなきゃいけないの?」

「いいから治せ。今すぐだ!」

「……無理だよ……あたし、もう……わかんない……夏くん。春樹。」


 チッ……。

 俺は手を振り上げた。――落とすとそこには誰もいない。

 刹那の風が吹く。

 視線を崖の奥に向ける。小柄の少女を抱える大男の姿がそこにあった。

「おい、よくも俺の仲間を傷つけてくれたな!」

 大男――ホープは俺も睨み言う。

「誰だか知らねぇが……ただじゃおかねぇ。」

 ……もう、覚えてないのか。

 ……なら、思い出せ。刻めよ。俺を。

 

 ホープが女を降ろし構えをとった。

「こ……」

 ホープが口を開く。

 その瞬間、距離を詰めて顔面を殴る。

 一発、また一発と迷いなく叩き込む。

「思い出したか? ……刻まれたか?」

 叩き込む先の顔が歪む。

 笑った。

 直後、腕を掴まれる。抵抗するが力は強い。

「お前、レンだな。どうした? イメチェンか?」

 掴まれる腕に負荷が掛かる。

 ぐっ……!

 後ろ足を突き上げ、膝を曲げる。

 ホープは半歩下がるが腕を離さない。

 緩んだ!

 俺は強引に腕を引く、ホープの手から腕はすり抜けた。

 膝を曲げ上がった足を伸ばす。腹部に母指球が突き刺さる。

 みぞを外したか。……関係ない。

 手のひらに魔力を溜める。俺は込み上げてくる笑いをグッと堪え魔法を放った。

 放たれた魔法がホープを襲った。――直後、ホープの右上半身が消し飛ぶ。流れる血もなくホープはその場で崩れ落ちる。

「見た目だけじゃない……。お前、誰だ?」

 瀕死のホープを見下ろし、俺は言う。

「……あぁ、見た目か。だから気づかねぇのか。」

 俺は髪をいじり言った。

「初めましてだな。俺は蓮だ。終わりだ。」

 ニコリと笑顔を見せ、俺はホープに魔法を放つ瞬間


 ――森の中からおぞましい気配が俺を襲った。

 来た!

 魔法をホープの心臓付近で放ち、様子を確認せずに気配の方へ視線を向ける。

 黒い霧が空を駆ける。

 気がつけば、懐に人影が現れる。叩き込まれる拳を腹で受け、顎に膝を蹴り上げる。

 しかし、それは霧になる。

 さっきの男だ。

 霧を目で追う。

 ここだろ?

 俺はホープのそばに魔法を飛ばす。――それは叶わない。

 引っ張られる激しい衝撃。

 身体が後方に持っていかれる。直後、雷が立っていた場所に落ちた。

「レンだな? 随分と頭に血が登っているようだが。」

「攻めすぎた。礼を言うよ。それで、あんたは誰?」

 背後から襟を掴まれ。崩れた服を雑に直し問う。

「私はレオパルド・ヴァルグランだ。」

「ヴァルグラン? さっきも助けられたよ。」

 レオパルドは目を細めた。

「きっとそれは弟だろう。それよりも今は戦いに集中してくれないか?」

 レオパルドが向く視線の先を俺も見た。

 霧の男はホープに触れた。すると、漆黒の闇が波紋のようにホープの身体に広がっていく。

 なん…だと? 身体が治っていく……。

 俺の動揺を無視してレオパルドは攻撃を仕掛ける。

 霧の男は魔法をかけるのをやめる。しかし、波紋は止まらない。

 

 ――――

  

 入れない。

 出れば、死ぬ。

 

 ……何も、できない。

 美雪を守らないと……。

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