35話 完封
「おい、亜樹。何が起きた?」
大男はそう言うと、背後にいた少女が言った。
「あんたの魔力を基準にして張ってた結界が欠損した。」
「マジかよ。あと何回耐える?」
亜樹と呼ばれた少女は冷汗を垂らしながら言った。
「3回……持てばいいけど。」
大男はテーブルから立つ。同時に玄関のドアが吹き飛んだ。
「もう破壊されたのか?」
いつの間にか男は玄関の前にいて、飛んだドアを押さえていた。
「いや、まだ一回分しか欠損してない。」
男はドアを放り投げ、外の光に目を細める。
「誰だ? お前。」
玄関のドアがあった場所には一つ人影があった。
「さぁ、誰だろうね。遅くなった、助けに来たよ、エル。」
人影はそう言い、家に侵入する。俺は息を呑んだ。
「レン……!」
俺の憧れがそこには居た。
「レンか、お前なんでここに居る?」
男はレンに問いかけた。
「なんでって……あぁ。結界を無視できる奴がいるんだよ。」
「そうか。それじゃあ、問おう。お前は何をしに来た?」
大男の問いにレンは答えた。
「勿論、友達を助けに来た。」
「そうか。邪魔をするって言うんなら死ね。」
大男はそう言い、旋風をレンに飛ばす。
レンは薄く魔力壁を作り、受け止めようとするが、あっさり破壊された。レンは地面を蹴り、後方へ飛ぶ。家を出る。
旋風は玄関の壁を破壊し、レンを追う。上空からいくつかの閃光が旋風を止めた。
「待つことを覚えてください。レンくん。」
そこに現れたのは国民なら知らぬ人はいない。――ゴールドランクの茂だった。
「まさか、国の最高峰が直々に来るなんてなぁ。流石は大賢者ニケだ。」
大男はそう言った。
大賢者だって? おばあちゃんが?
そんな考え事もさせてくれない。戦闘はすぐに再開した。
先に仕掛けたのはまたもや大男だった。瞬きするより早く、茂の目の前にいた。
「最高峰から潰してやる。」
大男は茂と肉弾戦をしながらチラリと亜樹に視線を送る。
今、目をやった?
俺は亜樹から視線を外さなかった。
手のひらに魔力の塊? 何かする気だ。知らせなきゃ。
どうやってこいつらにバレずに?
考え込んでいると肩を叩かれる。振り向くとレンの姿。俺はホッと息を吐いた。
「レン。あの亜樹って呼ばれてた女、何かやるかもしれない。」
レンは亜樹を見て、目つきを変えた。
「ありがとう。」
レンはそう言うと、即座に亜樹を襲った。
亜樹はレンに気づいた。手元で作られた魔法をレンへ飛ばす。レンは宙に浮く。宙で体をひねり、半身になるレン。
間一髪でそれを避けた。
間髪入れず、魔弾を放って反撃した。
しかし、亜樹は魔法を放った直後、すでに次の魔法を構えていた。魔弾は弾かれた。
「邪魔をするな。」
奇襲前とは打って変わって、怒鳴り声をレンに向けた。
「茂さんを狙った魔法だな。よく魔力練ってた。させねぇよ。」
亜樹は魔法を構えた。
「レン。」
聞き覚えのある声が戦場に響く。
様々な視線が声の元へ向く。そこには杏の姿があった。ルークも美雪もいた。
亜樹はそれを見て動きを止めた。目が見開かれる。
美雪の目から涙がこぼれる。
「ホープ! 仇を見つけた。」
亜樹はそう声を張った。大男はそれを聞き、茂と距離を置く。
「そうか、好きにしな。こっちは一人でいい。」
「ごめんなさい。」
一瞬だけホープに視線を向ける。すぐに逸らす。そして、亜樹は姿を消した。
レンは美雪へ走る。
亜樹は美雪の前に現れ、胸ぐらを掴む。レンは手を伸ばした。指先が亜樹の服をかすめる。
手のひらに魔力の塊。さっきのと似ている。
亜樹の視線が一瞬、レンに向く。
「レン。ダメだ!」
俺は叫んでいた。
だが、亜樹の魔法がレンを襲った。一瞬、動きが止まる。
亜樹は美雪とともに姿を消した。
レンの手が空を掴んだ。
「……っ。」
「ガキ3人にゴールドランク1人か……余裕だな。」
ホープは言った。
「余裕か。舐められたものですね。」
茂がそう言うとホープは返す。
「じゃあ、確かめてみようか。」
一つの影が、ホープの背後を取っていた。
「魔弾。」
形の崩れた魔弾を放つが、ホープは自身の周囲から上昇する暴風を発生させ、レンを上空へ吹き飛ばし、対処する。
ホープの動きに合わせ、茂が姿を消す。ホープは前方に軽いつむじ風を起こし、無数の埃や砂を舞い上げた。
光線は直前で位置がずれ、ルークの真横を通過する。間を置かず、茂が現れ、剣を振る。
「誤算だったよ。砂で光を可視化して反撃するつもりだったが、まさか壁を破壊した時のガラスの破片があるとは。」
「魔弾・バレット!」
上空から無数の魔弾がホープ目掛けて降り注ぐ。
ホープは口角をあげる。ホープの視線が上に向く。
「あいつだけ、動きが違う。」
そう呟き、大きな風の太刀を上空に放つ。それは無数の魔弾を次々と破壊していき、勢いは止まらず、ついにレンへと向いた。




