強者の提案
短い金髪に引き締まった体。まさに絵に描いたような『英雄』だった。
「俺の手柄ってことでいいか?」
「はい。助かりました。」
「良かった。じゃあ俺はこいつを回収するが、君はどうする?」
「仲間の元に戻ります。本当にありがとうございました。」
「いいって言ったろ。そう何度も礼なんて言うな。まあいい。そんじゃ、またな。」
レンはルークたちの元へ向かった。
依頼主の家へ戻る坂道を歩いていると、前から杏が走ってくるのが見えた。
「杏。どうだった? 家の様子は。」
息を切らしながら杏が言う。
「それが、居ないの。ニケさんとエルが!」
「出かけてるとかは?」
「魔法で確認した。争った魔力の残滓があった。」
レンは息を切らした杏の横を通り過ぎながら言った。
「ゆっくりでいい。俺は先に戻る。」
レンは坂道を駆け上がる。
「レン。」
気がつくと前にはルークの姿。その背後には依頼主の家が見えた。レンは勢いよく玄関を開ける。しかし家の中は荒らされた様子はない。
いつもおばあちゃんが座っていた椅子に近づく。その足元の床に、小さな凹凸を見つけた。
なんだ?……こんなのあったか?
しゃがみ込み、それに触れる。剣のような刃物を突き刺したときにつく傷だ。
昨日掃除したときには無かった傷だ。……争った跡はこれか。
杏の言った言葉が現実味を増していく。
「……誘拐だな。ルークはどうするべきだと思う?」
レンは問う。
「今すぐに追うべきだ。」
「ギルドへの報告なしにか?」
「あぁ、ギルドはそう早く動けない。」
「美雪はどう思う?」
レンは問う。
「ギルドに任せるべきだと思うわ。あまりに危険すぎる。」
「お前……。」
ルークが美雪を睨む。
「ルーク!」
レンが強く言った。
「美雪が正しい。」
「でも、何もしないなんて。」
レンは立ち上がってルークを見る。
「あぁ。そんなこと出来ない。俺はギルドに報告したあとに犯人を追う。」
ルークは口角をあげる。
「やっぱりそうだよな。俺もついていくぜ。」
反対に美雪は呆れたように大きくため息を吐いた。
「美雪はどうする?」
レンが問うと、美雪は言う。
「いいわ。ついていく。死なれても困るわ。」
レンは杏の合流を待つ。杏は迷いなく同意する。
「それじゃあ、杏はルークと魔力の残滓を追ってくれないか。その間に俺と美雪は報告しにいく。
もし場所が特定できても必ず俺たちの合流を待て。」
「分かった。」
杏はそう返事をした。
二手に分かれ、レンは冒険者ギルドへ向かった。
「証拠がない以上、今すぐ動くことはできません。また後日、帰る事がなかったら来てください。」
そう言われギルドから追い出されてしまう。
「どうするの?」
「当てがある。」
そう言い、レンは北門へ向かった。
レンはある門番に話しかける。
「ジル、少し話がある。」
転移したとき助けてくれた門番、ジルだ。
レンはジルに事の顛末を伝える。
「まさか! ニケさんが。分かった。すぐに上へ伝えよう。」
「レン!」
後方から声がして振り向くとそこには杏とルークの姿。
「杏、ルーク。なんでここに。」
「魔力の残滓を追ってたら城壁を越えていったの。」
「外に出たのか。」
杏は頷く。
「まさか。お前ら犯人を追ってるのか?」
ジルはそう問う。
「あぁ。」
「外に逃げた……か。インターン生を外に出すことは許されてない。今回は諦めろ。危険だ。」
ジルはレンたちを説得する。
「エルは友達なんだよ。ここを通してくれねぇか?」
レンはジルに訴えかける。
「そうは言われてもなぁ。いくらレンでもさすがにここは通せねぇよ。」
すると突然、肩に手が置かれる。
レンは反射的に距離を取る。振り向いた先に立っていたのは茂だった。
「久しぶり。外に出たいんだろ? いいよ。出してやる。」
肩に手が置かれるまで、気付かなかった。レンは少しばかりの恐怖を覚える。
「条件がある。私に触れたら外に出してやる。」
茂は続けて言った。
「だれでもいいけど、どうせ、お前だろ? レン。いつでもいいよ来いよ。」
そう言い、レンを指さしながら「来い」と挑発するように手招きした。




