28話 恩人の行方
――冒険者ギルド本部前
喧嘩は起こらずとも険悪な雰囲気は続く。しかしそれは突然終わりを告げる。
それを終わらせたのは杏だった。
普段の柔らかさは消え、冷たく鋭い視線が周囲を支配した。
「いい加減にして。ルーク、謝って。」
声は平静だが、言葉に重みを感じる。その迫力は、レンにまで伝わってくる。
「すまん。悪かったよ。」
ルークは美雪に謝る。
「別に喧嘩するつもりはないわ。」
美雪はそう言った。
レンたちはインターン担当の冒険者に促され、静かにギルドの正面玄関へ足を進めた。
そのときだった。
正面玄関ですれ違った男が、突然立ち止まる。
「レン……でしたっけ? どうしてここにいるんです? 死んでしまえば良かったのに。」
その言葉に場にいた全員が絶句する。
「し、茂さん!?」
ルークは男を見てそう言った。
茂はルークを無視して話を続ける。
「まあいい。アーサーさんのことは覚えているな。」
「あの人はお前のせいで冒険者を辞めたよ。」
視線は一度もレンに向けられなかった。
それだけ言うと、茂は振り返ることなく去っていった。
足音だけが遠ざかっていく。
「なんの話だか知らねぇが気にすんなよ。」
ルークはレンの肩に手を置いた。
「……。」
レンは言葉を失った。
茂の言葉が、胸の奥に刺さる。
――俺のせいで。
あの日のことが、脳裏に浮かぶ。
「話せるなら話せよ。俺は絶対にお前の味方だ。」
レンはその手を振り払った。
杏は何か言おうと口を開いたが、言葉は出なかった。一方、美雪はレンから視線を外して静かに目を伏せていた。




