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27話 馬車の中で――

「突然だが、今日から三ヶ月は職業体験に行ってもらう。」

 担任のローズから予告もなしにそう言われる。

「今からですか? そんな急に言われても無理ですよ。」

 銀髪とも水色とも取れる長髪の少女――アナスタシアが言った。

「今朝突然、校長先生に言われたことだからな。僕にはどうにもできない。」

 ローズは申し訳なさそうにそう言った。

「仕事とメンバーはもう決まっている。それじゃあ、今から言っていくから聞き逃すなよ。」

 ローズは生徒たちに情報を伝える。

 

 冒険者――レン、ルーク、杏、美雪。

 騎士団――ウシク、カレン。

 貴族――アナスタシア。


「アナスタシア、貴族ってなんだ?」

 レンはアナスタシアに問う。

「貴族のお屋敷に行くんだ。」

「なんで一人でそんなところに?」

 その瞬間、ルークがレンの肩に手を置いた。

「レン、もういいだろ。」

 ルークが置いた手の力は強く、アナスタシアの反応はどことなくぎこちなかった。

 レンはそれ以上聞かなかった。

「ウシクは騎士団に行くのか。」

「うん。俺ってこんなガタイだろ? きっと冒険者より騎士団のほうが向いてると思うんだ。」

「確かにな。ウシクは状況把握能力が高い。きっと騎士団でも活躍できると思うぞ。」

 レンはウシクにそう言った。

 すると、ローズが突然、口を開く。

「盛り上がってるとこ、悪いが馬車の準備が出来たそうだ。馭者を待たせるのも悪い。外に移動しようか。」

 こうして、二ヶ月の職業体験が始まった。

 馬車が進むにつれ、学園は次第に小さくなり、やがて見えなくなった。

 

 その頃――学園の前には、二人の若い男が立っていた。

 1人はローズ。

 横に立つ男は、純白の獣毛を持つローズとは対照的に、漆黒の髪をしていた。

 学園では見かけない漆黒の髪の男が、ローズに言った。

「今回の生徒はそんなにハズレか? それともまた失うのが怖いか?」

 ローズは柔らかく微笑む。

「そうだね。また誰かを失うのは怖い。本来なら生徒たちとともに王国に出向きたいところだけどね。君との任務がある。2ヶ月の間は王国の人たちに生徒を預けることにするよ。」

「悪かった。冗談だ。もう二度としない。」

 黒髪は悲しそうな顔を浮かべる。

「あの生徒を失ってから、お前も丸くなったよな。そんな顔なんてするようになってよ。」

 

 ――王国に向かう馬車の中

 

 レンは頭を抱えていた。

「おい。杏が話してんだろ。無視してんじゃねえよ。」

 ルークと美雪が喧嘩を起こしたのだ。今回の喧嘩はレンの時とは違う。怒りによる暴走だ。

 冒険者ギルドへ向かう馬車の中。揺れる車内で、彼らは男子と女子に分かれ、向かい合う形で座っていた。

 きっかけは杏が美雪に話しかけたことだった。

 美雪は杏の問いかけを全て無視したのだ。

 美雪は入学して以来、レンを含め誰ともつるまず、クラスで浮いていた。

 杏の親切心を美雪は無下にした。それがルークを爆発させた。

「ルーク大丈夫。私は気にしてないから。」

 杏は必死にそう言うがルークには伝わらない。

「ほら、ルーク。杏も気にしてないって言ってるんだ。そこまで怒ることないだろ。

 美雪も無視は良くない。どうして、無視をするんだ?」

「私の目的に必要ないからよ。」

 レンの問いかけに美雪は応じる。

「てめぇ。」

 勢いに任せルークは立ち上がろうとする。

 しかし、レンはそれを抑える。

「ダメだ、ルーク。少し頭を冷やせ。」

 こうして言い争いは収まった。

 しかし、険悪な空気は王国に到着するまで消えることはなかった。

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