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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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85話 辺境伯子息に諭された

 僕、何かイジーにやらかした?

「アルと一緒にいる俺からすると、そんな大したことじゃないんだ。でもイグナーツ様は、今までアルと一緒に視察に出かけた先で、魔獣狩りをしたことなかっただろう?」

 王領の視察に行くことはあるけど、安全面のことで、基本僕とイジーは一緒に視察に行くってことはない。

 大体は個別で見に行くことになってる。

「それが?」

「だから、イグナーツ様は知らなかったんだ。それで驚いたんじゃないかって思う」

「ごめん。ネーベルが何を言いたいのかわからない」

 魔獣狩りの時になんかあったっけ?

 全く思い当たらないって感じの僕に、ネーベルは言った。


「アルは魔獣が強くて、自分が追い詰められた時とか、状況が悪くなった時に、笑うんだよ」


 え? なにそれ?

 どーいうこと? ちょっと、よくわかんないんだけど、僕が笑ってたぁ?


「そう、ちょっとキチってる感じの笑い方な」

「ヒポグリフの時、そうでしたよ」


 テオとクルトも同意する。

「う、嘘ぉ?!」

「嘘言ってどーすんだよ」

 思わず上げてしまった声に、テオがすぐさま否定してきた。


「まぁ、何んとなーく、アルは気が付いてねーとは思ったんだよな」

 事実なだけに言い返せない。

 グググッと歯を食いしばって、叫び出したい気持ちを抑える。

「なんだよ、その不満そうな顔」

 こことぞばかりに、テオは揶揄ってくる。

「不満とか、そんなんじゃないよ」

 感情の言語化ができないだけだよ。

 ネーベルやテオがそう言うなら、戦闘中に僕が笑ってるのは、本当なんだと思う。

 でも、それを認めたくないっていうか、やだなーって気持ちが大きい。

 だって、笑ってたってことは、楽しそうに見えたってことでしょ?

 あぁ、だからイジーはあの時、『楽しかったか?』って訊いてきたのか。


 イジーにも伝えたけど、魔獣はフルフトバールの民を脅かす脅威だから、増え過ぎないように間引かなければいけないだけで、楽しいとかそんなものじゃない。

 やだなぁ、イジーに誤解されるのは。


「アルって、なんか昔から、そーいうところに、拘り持ってるよな」

「拘ってるっていうか、生き物の殺生なんだから、軽く扱えないよ」

「考えすぎると、魔獣が狩れなくなるぞ」


 いつになく硬いテオの声音に、思わず顔を上げてテオの顔を見る。


「アルの言いたいことはわかる。メッケルだって、魔獣狩りを生業にしてる土地だ。領民に被害が出るから、魔獣を狩ってる。魔獣と相対することは、常に死と隣り合わせだ。中型以上になれば、一回の戦闘で五体満足でいられる保証だってない。楽しいとか、そんな話じゃない」

 あ……そうか。そうだった。

 魔獣狩りとしては、僕よりもテオの方がキャリアがある。

 メッケルで生まれ育ってるんだから、僕よりも早く魔獣狩りの実践を体験してるし、それにトゥルム山脈の向こう側は、ジャードノチノス帝国と同盟を結んでるトレアノス王国がある。

 そことの攻防で常に緊張を強いられてるから、テオは……僕と違って、対人戦もちゃんとできるのだ。


「フェアヴァルターも言ってたじゃんか。武器を手に持つことは、命を奪うことだって。それでも俺たちは武器を持たなきゃいけない」

 テオと出会った時のことだっけ。

「もちろん、俺たちが奪う命は、必要に迫られて奪うものだし、そこに嬉しいとか、楽しいとか、娯楽じみたもんなんかない。でもさ、そんなことばっかり考えてたら、魔獣狩りなんて長く続けてられねーんだよ」


 言葉に、詰まってしまう。

 テオの言うことはもっともで、魔獣相手でも生き物だから……って、そう考えるところも、少しはあるんだ。

 だからって、対処が遅れれば、確実に領民に被害は出るし、それこそ村一つなくなることなんてざらにある。

 それだけ魔獣は脅威で、人の手で制御できる存在ではないのだ。

 魔術師の中には、魔獣を従わせるような魔術が使えるのかもしれないけれど、この世界にはテイマーはいないんだよね。

 魔獣を使役するって考えは、爆弾を抱えて生活しますと言ってるようなもので、魔獣は駆除対象になる。

 獰猛でなくても、人里降りてきた魔獣は、森や山に返すなんてできない。

 それがいつ、人間に牙をむく物に変貌するかわからないから、飼いならせとか、共存とか、そんな言葉を容易に出すことはできないのだ。


 それはちゃんと理解できてるんだけど……。

「どうせアルが気にしてるところは、魔獣が強い弱い関係なく、生き物を殺す行為に、楽しそうだったって思われんのが嫌なんだろ」

「当たり前じゃん」

 そうなんだ。

 突き詰めれば、僕はそこに拘っちゃってるんだ。

「う~ん。あ~、う~ん」

 僕の返事を聞いたテオは腕を組んで、何度か首をかしげながら唸り声を上げる。

「なに、その反応。僕、変なこと言った?」

「言ってない。でもなんかがズレてる気がする。ちょっと待て」

 テオも僕に言う言葉を考えてるようだ。

「根本的に……。――ってわけじゃなくって。……視点が」

 ぶつぶつと呟いて、ヨシッと声を出して、テオは顔を上げる。


「そもそも、アルが戦闘中に笑うのはさ、自分の命の危険に迫った時。言うなれば、アルが死と直面してるやばい状況の時なんだよ」

「うん……」

「自分より強い存在と闘えることが、嬉しいんじゃないか?」

 強い存在と戦えるのが嬉しい?

「自分でも敵いそうにない、圧倒的な力を持ってる相手を前にして、アルの闘争心に火がついてるんだよ」

 そんな風に考えたこと、なかった。


「だから、生き物を殺すことが楽しいとか、殺し合いが楽しいとか、それで笑ってるって考えんなよ」


 テオは僕が一番懸念してるところを否定した。

「他のことに関しては自信があんのに、コレに関してだけは急にブレるよなぁ。難しいことごちゃごちゃ考えるんじゃねー。もっと自分の心に素直になれよ」


 素直に……。

 僕、なにを怖がってたんだろう。

 そうか、僕は、僕より強い相手と戦えることに、胸が躍るんだ。

 そのことから、目を背けるのは、もうやめようと思った。


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