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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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79 フルフトバールで魔獣狩りだぁ! そのじゅうく

 初めての中型魔獣(モンスター)とやり合ったから、心が落ち着かないのかな?

 僕がヒポグリフを斃したときは、シルバードラゴンに呼ばれたからなぁ。

 魔獣を斃したことの興奮よりも、シルバードラゴンから貰った情報の方が、頭がいっぱいになっちゃったしね。


 でもイジーは魔獣と対面して、怖かったって感じでもない気がするなぁ。

「……兄上」

「ん? なに?」

「楽しかったですか?」

 ん? 魔獣狩りが楽しかったかってことかな?


「達成感はあったし、強い魔獣を屠ったっていう高揚感はあるけど……」

 必死だったし、フルフトバールの民にとっては、不帰の樹海にいる魔獣を狩るのは、領民を守るのと同じ。

「楽しかったって、感じではないかな?」

 僕がそう言うと、イジーは目を見開いて僕を見る。

「楽しくは、ない」

「だってこれは、将来、僕がするべきことだからね」


 フルフトバールを継いで、不帰の樹海を管理するのは、マルコシアス一族の次期当主の仕事だ。

 僕の答えを聞いて、イジーは再びカップへと視線を落とす。

「そう……、ですね。兄上は……」

 あー、これは何か言いたいことがあるんだと思う。

 けど……、いろいろ考えて口に出していいのかどうか悩んでるんだろう。


 リュディガーが心配そうな顔をして、隣にいるイジーを見つめている。

 その視線に気付いたイジーは、小さな声でリュディガーに告げた。

「……あとで、話す」

「はいっ。絶対、聞かせてください」

 声を潜めて話してる二人を見ていると、ポンとネーベルに背中を叩かれる。

 わかってるよ。

 これからイジーを支えていくのはリュディガーだ。


 今までは比較的何かがあったとき、イジーは僕に相談してきてくれたけど、今度は自分で考えたりリュディガーと二人で話し合って考えたりすることが多くなるんだろう。

 それを考えると、何だろう? 少しだけ……穴が開いた気持ち。

 いや、これはイジーが自立してるって、喜ぶところ!

 だってイジーは王太子になるんだし、王になったら最終決断を下すのはイジーなんだもん。

 誰に言われるわけでもなく、側近と話し合いができるのは、良いことだ。


 だからこの穴が開いた気持ちっていうのはさ、「頼ってもらえなくなって、お兄ちゃん寂しいなぁ」って気持ちなんだ。

 イジーはもともとそんな僕にべったりって感じじゃないけど、でも、ほら……ね? 頼ってきてはくれてたからさ。


 でもそうか。うん、僕も弟離れしないとね。

 僕だって、このフルフトバールの領地と、領民を守らなきゃいけないんだもん。


 少ししんみりしてる僕らとは逆に、テオはマルクスに今日遭った大爪熊との戦闘話していた。


「それでな! こう、ドーンって来てさっ!」

 テオが身振りを手ぶりで、大爪熊との戦闘を再現する。

「そ、そんなに大きかったんですか?」

 目を丸くして、マルクスが訊き返す。

 ヒグマよりも大きかったからねぇ。

 魔獣って基本、通常の野生動物よりも大きいような気がする。


「魔獣だからなぁ。今日俺たちが遭遇したのは、大型よりの中型だって、トレッフが言ってた。不帰の樹海の魔獣狩りは、アレを一人で倒せるんだってよ」

「一人で?!」

 驚くマルクスにテオは腕を組んで頷く。

「メッケルは基本、中型でも四、五人のグループで魔獣を狩るだろ? 大爪熊と同じ規模の魔獣はいるけど、一人で狩るっていうのはほとんどねーんだよな」

「そう、でしたね。あの時、僕はまだ知識もなかったし、体力づくりの訓練しかしてなかったですけど、トゥルム山脈に行かれる方々は、グループで出立していたの覚えてます」

「トゥルム山脈は、不帰の樹海みたいに魔獣の危険階層がないから、入山するってなるとグループで入るのが一番効率的なんだよ」

 テオの説明を、目を輝かせて聞いていたマルクスだけど、徐々に寂しそうな表情をしていく。


「でも、こうやって兄様たちと一緒に居られるのは、来年までなんですね」


 そうだね。

 再来年の春に僕らは卒業し、成人して各々の道を進んでいく。

 こうやってイジーやテオたちと一緒に過ごす時間が、少しずつ終わりに近づいていくと思うと、やっぱり少し寂しいなって思う。


 もちろん、卒業して切れる縁ではないけど、成人したら各々忙しくなるのも事実。

 落ち着くまで、会う時間が取れなくなるのは間違いないだろう。


「僕、信頼できる友達を作ります。それで、その友達と一緒に、メッケルやフルフトバールに遊びに行っていいですか? 長期の休みに兄様たちに会いに行って、それで、こんな風に一緒に過ごしてくれますか?」

「そんなの、いいに決まってんじゃん! いつでも来いよ!」

 マルクスに声をかけるテオ。

 僕ももちろんって思ってるけど、それよりも……。

 イジーの方が気になるなぁ。


 イジーだってマルクスと同じで、僕やテオに会いに来て、一緒に過ごしたいって思ってる。

 でも、立場として、そんな気軽に行動を起こすことができないし、それを声に出すのも憚られるってものだ。

 それになぁ、イジーは僕らと同じ歳だし、マルクスみたいに甘えるのも、遠慮しちゃうだろうし。


「さぁさぁ、皆様。そろそろ横になってください。明日もまた朝が早いですよ」


 フェアヴァルターに言われて、みんなで後片付けを済ませて、寝床の天幕へと入っていく。

 その途中で、こっそりとイジーに声をかける。


「イジー、前に僕が言ったこと覚えてる?」


 僕がそう訊ねると、イジーは顔を上げて僕を見る。

「前に……?」

「イジーだけにしか使えない、魔法の呪文」

 あの時のことを思い出したのか、イジーは目を見開く。


「あれは困った時の呪文だったけど、もう一つの呪文を教えるよ」

 まぁ、これからイジーに教える呪文は、イジーが結婚して国王となった時には、使われなくなると思う。

 だってその頃にはきっと、イジーの周りにはたくさんの人がいるだろうし、伴侶もいるだろうからね。

「寂しくなって、一人でいることが辛くなったら使ってほしいな」

「辛くなったら?」

 すっかり目線が僕より高くなったイジーに、僕は告げる。


「うん。その時は、『お兄ちゃん会いたいよ』って言ってね」


 こんなこと言ったけど、イジーはそうそう簡単に弱音を吐いたりしないだろう。

 きっとこれをイジーが言うとしたら、本当にどうしようもなく寂しくなった時だ。

 だから、ね。

 その時は、影武者を用意して、僕とテオがイジーを王宮から連れ出してあげるよ。

 それで、今日みたいに、一緒に魔獣を狩って暴れようよ。



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