78 フルフトバールで魔獣狩りだぁ! そのじゅうはち
ガーベルの作ってくれた夕食を食べながら、今回の戦闘のフィードバックをすることにした。
「食事をしながらでいいから、今日の戦闘のフィードバックしようか?」
僕とネーベルは、いつもと違った魔獣を狩った後や、想定以上の魔獣の集団と遭遇して戦闘になった時などは、毎回フィードバックをすることにしている。
今回の大爪熊は初遭遇、初戦闘。
今後のために自分たちの動きを振り返って、改善点を洗い出しながら、今後どうそれを活かすかを話し合うのだ。
「まず、初遭遇の大爪熊相手に、全員重傷を負うことなく斃せたことは上出来だと、僕は思った。今回の戦闘を五段階評価の、秀、優、良、可、不可をつけるとするなら、全体の評価としては優と良の中間、といったところかな」
僕の評価に全員の顔は引き締まっていく。
「確かに今回、俺たちは大きな怪我を負うことなく、大爪熊を斃せたけど、駄目だったところや改善点はたくさんありました」
僕の言葉を引き継いで、ネーベルが喋り出す。
「とりあえず各々、自分が駄目だったと思うところ出していきましょう」
ネーベルが丁寧語になってるってことは、僕の側近としての顔になってるってことだ。
「はい! 俺から!!」
テオが迷いなく手を上げる。
「俺はちゃんとした連携が取れなかった。っていうか戦闘が始まった当初、連携するってことが、頭の中に入ってなかったのが正しいかな。集団じゃなくって個人の動きだったと思う。アルから隙を作れって言われて、そこで一人での戦闘じゃないことを思い出した。最初から連携のことを意識してたなら、隙を作るための動きも、言われる前にできたはず。いろいろ遅すぎた」
テオが今までどんな魔獣と対峙してきたかってことにもよるけど、大爪熊は慣れなければ単体での討伐は難しいからね。
「では次に、イグナーツ様」
ネーベルに声をかけられたイジーは、ハッとした様子で顔を上げる。
「俺……、俺は全てにおいて、判断が遅かったと思う」
そこで一度言葉を切って、イジーはゆっくりと話し出す。
「自分の立ち位置がわからない状態だった。全部指示があってからの行動で、自分から動くことができなかった。テオの動きに合わせることはできたけど……。ちょっと言葉が出てこない。どう話せばいいんだろう」
考え込んだイジーは、答えがまとまったのか、顔を上げて口を開いた。
「誰の援護に回るか、それともサポートに徹するか、どれかに振り切ってればよかったと思う」
そこはなぁ……。イジーが自ら戦場に立ったり、魔獣狩りをするっていうのは、本当に有事の際だからなぁ。
特に魔獣狩りを国王がすることなんてないに等しいことだ。
かといって、ここでそれを言うのは違う。
「そうだね。今回は、中型の魔獣だったけど、大型よりだったのも、動けなかった理由の一つかな?」
「……精進します」
しなくていいんだよ~!
イジーは国王になるんだから、魔獣の戦闘に慣れる必要はないんだって、そう言いたい。
でもここでそれを言うのは、野暮だ。
「じゃあ、俺の番ですね」
手をあげながら、ネーベルが発言する。
「今回、火力にアルベルト様、イグナーツ様、テオドーア様のお三方がいたので、俺は頭からサポートに徹するべきだったと思いました。途中で切り替えて、スタイルを変えたのですが、メンバーを考えれば、サポートと大爪熊の拘束に従事するべきだったと思います」
途中って言ってるけど、わりかしすぐに足止めに動いてたから、ネーベルはそこそこイケてた。
「最後に僕ね。僕が駄目だったところは、すぐに急所を狙わなかったことかな。戦闘が長引けば、体力が疲弊するわけだし、だからこそ急所を狙うっていう戦闘スタイルなのに、急所を狙うっていうよりも攻撃を流す方を優先しちゃった」
もっと積極的に攻撃に入ってよかったと思う。
ただ今回、それができなかったのは、暴れん坊な宵闇の制御に手間取ったせいもある。
あいつ、今まで僕のこと舐めてたんだよ。
だから言うこと聞かないで勝手に動こうとしたんだ。
今後の課題は、あいつを完全に制御することかな。
「総じて、良い戦闘でした」
僕らのフィードバックを聞いていたフェアヴァルターが静かに口を開いた。
「もちろん課題点はたくさんありますが、途中で役割が自然と分かれていました。テオドーア様が前に立ち、ネーベル様が拘束し、イグナーツ様が補助に回って、若殿が決定打を担う。意図していなかったにしても、それが成立していたのは素晴らしかったと思います」
えへ、師匠のフェアヴァルターに褒められたぞ。
僕とネーベルはずっとフェアヴァルターに戦闘を教わっていたから、こうやって褒められるのは嬉しいし、ちょっとだけ誇らしくなる。
「先ほど若殿たちが、各々不足であったところを述べていましたので、私から特に何か言うことはありません。今回の戦闘を今後に活かしましょう」
フィードバックが終わったのを見計らって、ガーベルが食後のお茶を出してくれる。
まぁ、野営中だから、カップだって木製のカップだし、お茶も庶民が飲んでいる一般的なものだけど、食後のデザートはガーベルの手作りパイ。
それだけで、僕は大満足だ。
湯気の立つカップを手に、フーフーと覚ましながら口をつける。
日が沈んで気温が下がってきてるから、この温かさがちょうどいい。
ほっと一息ついて、雑談タイム中。
イジーがずっと黙ってカップの中お茶をを見つめている様に、リュディガーがそっと声をかける。
「どうかされましたか?」
「……うん。すごかったなって」
「大爪熊、すごく大きいんですよね? おれ、実物見たことなくって」
「大きかった。でも、不思議と怖くはなかったぞ。傍に兄上やテオがいたからだな」
声を潜めて話してるイジーとリュディガーを見て、ほっこりしてしまう。
でもなんか、イジーの様子がおかしいな。
どうしたんだろう?





