77 フルフトバールで魔獣狩りだぁ! そのじゅうなな
大爪熊に絡みついた縄鏢の縄を掴んでいるネーベルが、力負けして引きずられるのを見て、イジーが剣をしまい一緒に縄を掴む。
「兄上! テオ! 俺とネーベルが押さえ込むので、攻撃をしてください」
拘束され身をよじる大爪熊。
拘束を外そうと暴れ、縄鏢の縄がきしむ音が聞こえる。
「させるかよ!!」
テオが横から大爪熊の後ろ脚を攻撃する。
駄目だ。それじゃぁ、大爪熊に手傷を負わせた程度で、致命傷にも至らない。
動きを止めるなら、もっと強く、斬らないと。
でも、動きを止めるだけじゃ、駄目だ。
急所、急所を狙わないと。
大爪熊を拘束している縄鏢の縄を掴んでいるネーベルとイジーの足が、地面を削りながら引っ張られてる。
このままじゃ、ネーベルとイジーが持たない。
「テオ、隙を作って」
インカム越しに伝えると、テオが大きく踏み込んで大爪熊に連撃の攻撃を入れる。
大爪熊の意識はテオに向かい、攻撃対象をテオの方へと移す。
所詮は魔獣だね。
お前を狙ってるのは、もう一人いるぞ!
強く宵闇の柄を握り締めて、魔力を全身に巡らせて……、刃先に、僕の魔力を乗せた。
後脚で立ち上がるために、上半身を起こす大爪熊の背後を取る。
跳びあがって、大爪熊の首をめがけて、宵闇を振り入れる。
魔力が乗った肌から毛皮と肉は、スッとはいるけど、なにかに阻まれて、途中で止まる。
骨か。
でもここで、止めるわけにはいかない。
このまま、骨まで断ち切る。
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
硬い骨の感触が刃に伝わる。
少しだけ刃に乗せる魔力を増やすと、抵抗がなくなり、大爪熊の首が宙を舞う。
首を失くした大爪熊の巨体が傾き、ドシャリと崩れ落ち、時間差で跳ね飛ばされた首が地面に転がっていった。
「やったー!!」
動かなくなった大爪熊に、テオが剣を掲げで叫ぶ。
「俺たちだけで、狩れたぞ!!」
テオの声を合図に樹の上にいた、フェアヴァルターたちが下りてくる。
「よく頑張りました。ですが、まだ、終わりじゃないですよ」
フェアヴァルターの言葉に、きょとんとするイジーとは裏腹に、僕らはすぐに作業に移る。
「解体だよ」
こそっとイジーに耳打ちをして、息絶えた大爪熊に近づいた。
大爪熊から素材になるもの、皮、爪、魔石、を回収する。
トレッフは腕を組み顎に手を添えながら、解体されていく大爪熊を凝視していたが、すぐに、僕らの方に振り向いて訊ねてきた。
「肉、食べてみますか?」
「え? 食べれるの?」
ジビエで熊を食べるのは知ってるけど、これは魔獣だし、爪に痺れの毒? それとも麻酔?があるから、食べるとやばいのでは?
「食えるなら、食いたーい!!」
テオは相変わらず好奇心が勝った返事をする。
「前脚の部分は危険なんですが、胴の部分には毒性はないんですよ。でも、まぁ処理が大変なんで、このクラスの魔獣の肉は、余裕があるときに回収って形ですかね」
陽気に答えるピートの話を、感心しながら訊く。
食べれることは、食べれるのか。
ただし、一部は食べれないと。
なんか……フグみたいだな。
「今回ガーベルがいるから、安地まで持って帰ってもいいんじゃないか?」
トレッフの言葉にフェアヴァルターが答えた。
「一部持って帰って、ガーベルに頼んでみましょう」
トレッフの言葉を受けてピートとフェアヴァルターが、大爪熊の胴の一部の肉も回収した。
「処理もありますから、今日の今日で食べれるかは不明ですが、明日には食べれるでしょう」
確かにガーベルがいるなら、処理もちゃんとやってくれそうだ。
それに、ちょっと、食べてみたい気もする。
「回収はこの辺で良いだろう。さぁ、若殿たち。戻りますよ。」
フェアヴァルターの言葉に、僕らは安地拠点へと引き返した。
安地拠点に戻ると、すでにクルトたちは戻っていて、ピルツと一緒に何かの作業をしていた。
「お帰りなさい」
僕たちに気付いたマルクスが笑顔を向ける。
「なにしてるの?」
「薬草、見つけたんです!」
「今ピルツさんに薬草の処理の仕方を教えてもらってる最中です」
マルクスに続いてリュディガーが答えた。
広げた布の上に、ちぎられた薄紫の小さな花びらがある。
クルトたちはとってきた薬草の分解作業をしているようだった
「眠り花ですね」
花を見てそう言ったのはトレッフだった。
「眠り花?」
「不帰の樹海に群生している薬草の一つですよ。鎮痛剤になるんです」
眠り花は、花びら、茎、葉、根の部分によって効能効果が違ってくるらしく、根の部分は劇薬で魔獣でも動けなくなるそうだ。
基本的に、この薬を使っての魔獣狩りはしないようで、採取の際は、根を残すようにしていると、トレッフが説明してくれた。
「根の部分を使うと、斃した魔獣の肉が食べられなくなるんですよ。魔獣の肉はフルフトバール領の領民で消費しますからね」
へー。ってことは、根の方が、効能が強いってことになるのか。
使い方を間違えたら危ないよね。
「テオ様たちはどうだったんですか?」
クルトが分解作業しながら、訊ねてくる。
「俺とアルとイジーとネーベルの四人だけで、大爪熊、狩ったぞ!! フェアヴァルターたちの手は借りてない!」
胸を張って答えるテオに、フェアヴァルターとトレッフが苦笑いを浮かべている。
「ガーベル。これ、大爪熊の肉。今日食べれる?」
ガーベルに大爪熊の肉を渡す。
「処理に少し時間がかかりますね。新鮮なうちに解体してもらっていますが、血抜きと臭み取りに一日時間がかかります。最短で明日には食べれますよ」
明日、明日には食べれる?!
どんな味がするんだろう。
ガーベルは魔獣の肉の扱いも慣れてるから、処理や調理も上手いだろうし、どんな料理作ってくれるんだろう。
今から楽しみだ。





