第23話 忘れたかの様に立ちすくむ
スポーツショップ店から愛車までゾンビに出会わず無事着くと慎吾と瑠偉ちゃんは乗り込む。
「そういえば、瑠偉ちゃん歩き方も普通になってるよね?」
部屋からスポーツショップ店でジャージ上下をありがたく拝借するまでは気が付かなかったが、愛車に戻る途中に真横をいつも通りに付いて来るのを見て気付く、出会った頃は両手を突き出してゆっくりユラユラ左右に揺れて歩いて慎吾が思うゾンビ歩きで、途中からは両手は突き出さないがゆっくりユラユラ左右に揺れて歩いていてこれも慎吾が思うゾンビ歩き、そして今は両手も突き出さないしゆっくりユラユラ左右に揺れる事も無く普通の人間が歩く様に付いて来ていて慎吾が見慣れている人の歩き方。
「ウ”ァァァァァ」
瑠偉ちゃんは助手席に座りこちらを見ながら呻き声で答える、慎吾は『そうだよ』と解釈する。
「なるほど・・・これも成長のお陰やな、俺気付くのが今やけどな・・・・・」
「ウ”ァァァァァ」
瑠偉ちゃんの呻き声を『そうだね』と勝手に解釈する。
「うんうん、子供の成長はあっという間ですな・・・ゾンビですが。それで他には何か成長したとか有る?」
「・・・・・・・・・・」
瑠偉ちゃんは無言で答えが分からない。
「なるほど・・・・・瑠偉ちゃんは自分自信では何が成長したか分からんのやね、成長は見てのお楽しみって事やな、オッケー分かりました」
慎吾は納得すると愛車のエンジンを掛けて次の目的地の商店街のショップに発信させる。
『これで3人目っスね、ゾンビ多いっスね』
女ヤンキーは午前は1階の変形学生服ショップの天国の商品に囲まれて上機嫌で時間を過ごしていたが、一通り見て回り試着して楽しんでいたが午後になると流石に飽きてきたので軽く食事をして2階の窓際で外の商店街を眺めている、ここから眺め出しただけでも最初の1人目は高齢のおばあさんが腰を曲げ必死に逃げてはいるがゾンビに見つかり追いつかれると喰い散らかされて、2人目3人目は背広姿の男性2人組だが果物屋に隠れていたが食料が無くなったのか?何か住めなくなった理由があるのか?建物から出た時に、運悪く走るタイプのゾンビに見つかり狂気の叫び声で他のゾンビも呼ばれると急いで出て来た果物屋に逃げ込むがシャッターを閉めるのが間に合わず建物の中にゾンビ達に侵入されて長い悲鳴が聞こえた後に何も聞こえなくなり静かになった。
『見始めてから3人喰われてるっスからね・・・昨日の夜と合わせるともう人数は分かんないっスね・・・ここから当分出れそうに無いっスね~』
駅付近の商店街という事も有り人口が密集しているので昼夜どこかで呻き声と叫び声を聞いていた。女は諦めた声を出すと「ウウウウウウァァァァァ」と悲鳴が聞こえて来た駅とは反対側の商店街の入り口方向を『あ~あ、また誰か見つかったっスね・・・・・』と視線を送る。
「はい、到着~とりあえずここなら愛車大丈夫やろ」
スポーツショップ店から車を発車させるともう見慣れた光景となった。フロントガラスが割れ白煙を上げて停車する車、車の後部のトランクに前方から突っ込んでクラクションを鳴らし続けてバンパーを潰している車、対向車線で横転してルーフをへこませている車、クラクションの音に集まるゾンビ、何もしないで立ち尽くすゾンビなどを振り切ったりやり過ごしたりしながら無事商店街近くに到着すると駐車場をスマホのマップで見つけてなるべく奥側に停車させるとハンドブレーキを引いて車から降りる。
「それじゃあ~こっから少し歩くよ、マップで見ても商店街の真ん中あたりやからすぐに分かると思うけど、それじゃあ~行きましょ!」
「ウ”ァァァァァ」
瑠偉ちゃんの低い呻き声を『分かった』と解釈する。
スマホのマップの赤いマーカーをチェックして、瑠偉ちゃんのピンクのランドセルを背負わせながら話しかけて金属バットを肩に担ぐと商店街の入口に歩き出す。商店街は生存者の気配は感じずでシャッターも殆どしまっており『この商店街の人達はどうなったんやろ?、逃げたんかな?、喰われたんかな?』と考えながら商店街の中に普通に瑠偉ちゃんと入って行く。
「うおっ!?いきなりおった」
慎吾が商店街に入り少し進むと前方に後ろ姿のボロボロのシャツにジーンズのゾンビがユラユラ揺れている。見つけた瞬間は少し驚くがすぐに走り出すと野球のバッターのスイングの形の勢いを殺さないバージョンで、手前で両足に力を込めて地面に踏ん張ると腰を回して遅れて来た両手に握る新しく拝借してきた金属バットの真芯の部分を、無防備のゾンビの後頭部にフルスイングで勢いそのままに思いっきり当てると、木っ端微塵に粉砕して首から上が飛んで数秒後に胴体部分が前のめりに倒れる。すると始末したゾンビが偶然に地面に並べられて置かれていた空き缶の上に倒れて『ドサッ』と『カランカラン』の2つが少しの時間差で生存者の気配を感じない静かな商店街に音を鳴らす。
「マジか・・・まぁ~ええんやけど、見つかったら見つかったで、ゾンビ共の頭フルスイングして行きましょうかね!」
そう慎吾が散らばる空き缶と始末したゾンビを見て呟いていると、4軒先の路地から2匹の走るタイプのゾンビが飛び出して商店街のメインストリートに出ると、首を左右に動かして慎吾を発見して目が合うと「ウウウウウァァァァァ」と狂気の叫び声をハモらせながら全速力で突っ込んで来る。瑠偉ちゃんは先程倒したゾンビのお食事に行きかけていたが、ゾンビの叫び声を聞くと慎吾の真横に戻り右腕を上下に『ピクピク』させて待ち受ける。
「聴力良すぎやろ・・・そんなにさっきの音響いたか?・・・しゃーない頭しばきましょうかね」
慎吾が向かって来るゾンビは1匹が女性でボロボロの汚れた黄色いTシャツに黒のミニスカートを履いており2匹目は少年でこちらもボロボロの体操服に短パンで目を血走らせ一直線に慎吾達の距離を詰める『おおお・・・怖っ!この突進には早く慣れやなあかんけど・・・怖い物は怖いしな・・・・・てかっ黒のミニスカの女と小学生の少年ってどんな組み合わせやねんっっっ!!』とツッコむと同時に金属バットを握り締めるとグリップの感触を確かめる、すると2匹同時に猛突進していたが慎吾から1メートルぐらい手前で急に『ピタっ』っとその場で立ち止まると呻き声も止めて突然左右にゆっくり揺れ出し両腕を下げて頭をゆっくり動かすと上空の商店街のアーケードを見上げて何もかも忘れたかの様に立ちすくむ。
「・・・ファッ!!・・・」
空を見上げ脱力状態のゾンビ達を唖然と見て変な声を出していると、商店街の奥の道から歩くタイプのゾンビが5匹両手を突き出し左右に揺れて慎吾目掛けて歩いて来る。
「・・・・・あっ?また来た・・・・・」
すると5匹のゾンビ達も一直線で襲いかかってきていたが、1メートル手前で足が地面に接着されたみたいに『ピタっ』っと急に止まると両腕をゆっくり下げて空を見上げると脱力状態になる。今慎吾の目の前では7匹のゾンビがボロボロの服装で全身腐り果て悪臭を放ちながら上を見て突っ立っている。
「・・・・・少し前と襲われない事とは何も変わりは無いけど、前は俺の前で襲ったり襲わなかったりの繰り返しをしてて叫び声も上げてたし、こんなに突然止まって棒立ちじゃなかったけどな・・・もしかして・・・これも瑠偉ちゃんが成長したから変化したんかな?」
目の前のゾンビ達の青白く喰い千切られた醜い容姿と耐えにくい悪臭を『いかつい』と気にしながらも、慎吾はそれしか考えられないので瑠偉ちゃんに視線を移し聞いてみる。
「そ”オォォう”ウゥゥお”オォォも”オォォう”ウゥゥゥゥ」
瑠偉ちゃんは見つめながら『そう思う』と苦しそうに呻き声で返事してくれた。
「・・・・・やな・・・それしか考えられへんもんな!・・・」
動揺している中考えられる答えは1つしか無いがその答えを聞いて安心と納得をした慎吾は『それしか考えられへんもんな』ともう一度脳に叩き込むと、目前で上を見て突っ立っているだけのゾンビ達に目線を戻すと手前のゾンビの頭から両手で強く握りしめた金属バットをフルスイングで振り抜いて行く。




