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30話 誘い

 ユキで終わりかと思っていたが、ダンスを踊り終えてもまだ音楽が流れ続けていた。


「あれ? まだ終わらないのか」


 すると、アイスさんがステージの奥から現れてきた。


 彼女は豪華な白いドレスをきていた。


「ユウト王子を確認。ぜひ私とも相手をよろしくお願いします」


 いきなりの誘いで少し驚いたが、断るわけにもいかないので俺は誘いを受けることにした。


「あ、はい。よろしくおねがいします」


 相手も相手なので少し緊張したが、いざはじまってみると……


 リズムにあった動きも出来るし、足も完璧にそろう。


 これ以上ないほど上手くできていると実感できた。


「す、すごい……」


「おそれ入ります」


「アイスさん、こんなに社交ダンスがお上手だったんですね」


「いえ、社交ダンスは今初めて行いました」


「えっ? 初めてですか」


「はい。私はただ、学習した膨大なデータのなかからユウト様の動きに合った理想的な社交ダンスの動作を探索し、それを実行しているだけですので」


「えっと……」


「要するに、私は過去に行われた社交ダンスの動作を組み合わせて動いているだけです」


「そ、そうですか」


 言っていることはいまいち理解できなかった。


 それでも、アイスさんが今すごいことをしているのだということだけは伝わってきた。





 社交ダンスがおわり、そろそろ閉会式だろう。


 進行役のアナウンスが再び流れてきた。


「皆さま、今回の舞踏会を楽しんでいただけましたでしょうか? それでは、本日の社交ダンスの最優秀ペアを発表したいと思います」


 最優秀ペアなんて聞いていないんだが。


 まあ、たぶん俺にはカンケイな……


「最優秀ペアは、ユウト王子&アイス国王です! このお二方はステージにおあがりください」


 まあ、そうなるよな。


 俺はしぶしぶステージに上がり、アイスさんといっしょにステージ中央に向かって歩き出した。


 ステージ中央に行くと、俺たちはスポットライトに照らされ盛大な拍手が送られた。


「それではこのお二人には記念として、ペアのネックレスと花束を贈呈したいと思います」


 俺たちに記念品が手渡された。


「さあ、ユウト王子、アイス国王にネックレスをかけてあげてください!」


 進行役の人がよけいな提案をしてきた。


 まったくメンドウなことをしてくれたものだ。


 だだ、ここでダダをこねてもしょうがないので、さっそく俺はアイス国王にネックレスをかけようとした。


 しかし、緊張してなかなかうまくネックレスを付けることが出来なかった。


「ユウト王子、どうなさましたか? 状態確認。……どうやら心拍数が上昇しているようですね。何が原因でしょう? 解析します」


「解析しなくていいですから!」


 俺がそういうと会場が笑いに包まれた。


「いやー。それにしてもお似合いなカップルですな」


「ええ、ちょうどお二人とも同じくらいの年齢ですしね」


 よからぬことまでいいだす客もいたので、俺は急いでアイス国王の首にネックレスを付けた。


「ありがとうございます。それでは次に私が……。あっ」


 俺にネックレスを付けようとしたアイスさんが倒れそうになった。


「あぶない!」


 倒れこみながらも、なんとか体を支えることができた。


「感謝いたします。それでは……」


 そういってアイスさんは抱き着いたまま、俺の首に腕を回した。


「装着完了。ユウト王子、そろそろ離していただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ、すみません」


 俺が手を放そうとした瞬間――


「……ユウト王子がそうしたいので私はそのままで構いませんが、いかがいたしますか?」


「なっ、何言ってるんですか!」


 俺がツッコミを入れると、またみんなが笑いだした。


 ……こうなることもアイスさんの計算通りなのだろうか?


 こうして、舞踏会は和やかな雰囲気のまま終了した。






「あーあ。私もネックレス欲しかったな」


「それならミーロンも同じネックレスを買えばいいじゃないか」


「そういうことじゃなくってさー。……もう、ユウくんはおばかさんだな」


 どうにも舞踏会が終わってからみんなのキゲンが悪い。

 

 特にユキは今までにないほど不機嫌だった。


「なあ、ユキ。もしかして怒ってる?」


「別に私は怒ってなどいません。ユウト様は良かったですね。アイス国王と仲がよろしくなって」


 そういってユキは、ほっぺたをふくらませたままそっぽを向いてしまった。


 ……これはしばらく時間を空けたほうがいいかもしれないな。


「ユウト王子。お時間よろしいでしょうか?」


 気まずい雰囲気のまま屋敷に帰ろうとした時、アイスさんに呼び止められた。


 ユキ達はアイスさんを見ると、牽制するかのように彼女をにらみつけた。


「状態確認。……お連れの方々は私のことを警戒している様子。別の機会にしたほうが良いでしょうか?」


「ああ、彼女たちのことは気にしなくていいですから。それより、いったいなんのご用件でしょうか?」


「はい。ですが要件を言う前に一言。ユウト王子、今回はお招きありがとうございました」


「あ、いや、こちらこそ……」


「あいさつをすませたところで、さっそく要件についてお話します。近々ユウト王子をAICⅡに招待しようと計画しているのですが、来ていただくことは可能でしょうか?」


「え、AICⅡにですか?」


「はい。ユウト王子はマスターのことも知りたがっていた様子でしたので、お礼ついでにどうかと考え提案させていただいたのですが」


 なるほど、そういうことか。


 ほかの国に行く機会なんてのもないし、行ってみてもいいかもしれない。


「それなら喜んで行かせていただきます」


「了解しました。お連れの方々もぜひいらしてください。何人きていただいても構いませんので」


「お心遣いありがとうございます。アイス国王」


「はい。それでは曜日が決まり次第、ご連絡させていただきます」


※次は明日の18時20分ごろに第31話を投稿します。


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