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29話 魅惑の社交ダンス

 俺は着替えを終えて、いそいで会場へと戻った。


 会場に入ると、部屋全体が照明によってきらびやかに輝いていた。


(しまった。もうすでにはじまってしまったか?)


 そう思っていると突然、音楽がなり始めた。


 そしてすぐに進行役のアナウンスが聞こえてきた。


「ただいまユウト王子がとうちゃくされました。それではさっそく開始したいと思います! ユウト王子はステージ上におこしください」


 みんなの視線が俺に向けられる。


 こうなってしまってはもうどうしようもない。


 俺はあきらめてステージを上った。


「それではみなさん。男女でペアを組んでさっそくスタートしてください」


 アナウンスがあった後、みんな続々とペアを組んで踊り始めた。


 まあ、俺も踊るとするか……





「ユウト、まずはあたしと踊るわよ」


 最初にアンリとペアを組んで踊った。


 しかし、アンリの動きはぎこちなくうまく踊ることが出来ない。


「アンリ、もしかして練習してないのか?」


「うっ、そ、そうだけど」


 マジか……


「なっ、ちょっと! あきれてないで何とかしてよ! 王子なんだから私をアシストしてちょうだい!」


 そんな無茶な……


「うわっ、あとちょっとで転びそうだった……」


 結局、終始グダグダになってしまったが、まあこればかりはしょうがない。




 次はランディアと踊ることになったが、どうやら彼女の少し様子が変だった。


「ユウトさん、こ、こんかいは、よ、よろしくおねがいします」


「ランディア、もしかして緊張してる?」


「い、いえ、そんなことはないです! なにぶん人前で踊るのが初めてなだけで……。っていっても、決して緊張しているとかではなく……」


 ああ、間違いなく緊張しているな。


 ランディアは意外と緊張しいな一面があったんだな。


 そんなことを知れて俺はうれしかったが、音楽に合わせたダンスは全くできなかった。




 次はミアと踊った……


 いや、実際は踊ったというよりミアを抱っこして俺が左右に揺れているだけだなこれは。


 見物人からは赤ちゃんをあやしてる父親のように思われているだろうな……


「ゆうと、なんでわたしだけだっこしておどってるの?」


「なんでっていわれても、俺とミアの身長差でまともな社交ダンスなんてできるわけないだろ」


「できるもん! わたしにあわせて、ゆうとがかがみながらおどればいい」


「そんなことしたら腰がいたくなるからだめだ」


「こしがいたくなるから? ……ゆうとおじいちゃんなの?」


「そういうことじゃない!」


 結局、一度もペアを組んで練習していない子たちとはうまく踊ることが出来なかった。




 3人と踊り終わったところで音楽が変わった。


 さきほどのものとは異なり、かなり激しめの曲に変わった。


「ユウくん、次は私だよ」


「ああ、よろしく頼む」


「まかせて! 私この音楽すごく好きだからノリノリで踊っちゃうよ!」


 どうやらミーロンは緊張せずに楽しめているようだ。


 それに一緒に練習したこともあってか、非常に踊りやすかった。


 しかし、曲のテンポが速いこともあって、途中で少しよろけそうになってしまった。


「おっと、フフッ、だいじょーぶ?」


「ああ、すまん。ちょっとバランスをくずした」


「疲れちゃったのかな? あとは私がしっかりエスコートしてあげるからユウくんは頑張ってついてきてね」


 なんとも頼もしい限りだ……


 男として少し情けないような気もしたが、今だけはミーロンに甘えることにするか。




 ミーロンと踊り終えたタイミングで、再び音楽が変わった。


 今度はあいしゅうのあるさみしげな曲だった。


「よ、よろしくお願いします。ユウト王子」


 次のパートナーあまねちゃんか。


「こちらこそ」


 そう言ってあまねちゃんの手をとると、ひどくふるえていることが分かった。


 どうやらあまねちゃんも緊張しているようだった。


「心配しなくて大丈夫だよ。俺がちゃんとエスコートするからリラックスして」


「は、はい。ありがとうごさいます!」


 ミーロンのときとは真逆で、俺が終始エスコートし続けた。


 さすがに女の子に頼りっぱなしってわけにもいかないしな。


(それにしても、社交ダンスってのは一緒に踊る相手に動きを合わせる必要があるんだな)


 ふとそんなことを心の中で思った。




 あまねちゃんと交代するかたちでユキがステージに上がってきた。


「お相手よろしくおねがいします。ユウト様」


「うん。それじゃあ踊ろうか」


「はい」


 俺たちは互いに手を取り合って踊り始めた。


「おおっ、すごく踊りやすい!」


 意識的にエスコートしているわけではないのに、自然と曲にあった動きが出来ているのを感じた。


「当たり前です。私が一番ユウト様と一緒に練習したのですから。ユウト様の動きのクセなどはすべて把握しておりますので、ご安心してください」


「そんなことまでしっかり把握してくれていたのか」


「はい。もるろんです」


「……驚いたな。やっぱりユキはすごいな」


「フフッ、恐れ入ります」


 間の取り方などもほとんど完璧だった。


 練習以上のことが本番でできるとは……


 しばらくの間、俺は優雅な音楽を聴きながら社交ダンスを楽しむことができた。

※次は明日の18時20分ごろに第30話を投稿します。


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