第十九話 元の世界に
しばらくしてタクシーが到着したのでエリカははるかをタクシーに乗せた。
「エリカ、明日もサバンナに来なさいよ。麻雀の特訓をしなきゃならないのだから」
とはるかはそう言ってタクシーに乗って帰って行った。
エリカは憂鬱で、これから練習しようという気にはなれなかった。道場に入ると他のレスラー達が練習に励んでいた。彼女達は少しでも強くなって上を目指そうと必死である。エリカにはそれがまるで別世界のように思えてきていた。
エリカはリングの上で練習をしている人達を横目に、二階に上がり事務所のドアを開いて
「ただ今送ってまいりました」
と事務仕事をしている沢野に言った。
「よしエリカ練習をするか?」
その一声を聞いてエリカは少しやる気が出て来た。しかし次の一言が
「麻雀だぞ」
とそれを聞いて一気にやる気が落ちる。
「馬鹿やろ!冗談に決まっているだろ。お前に麻雀を教えて、今度の勝負に勝てなくなったら困るからな」
とこんなことを言われたらエリカにやる気が出てこない。
「おい、練習だから早く着替えてこい」
と沢野に言われて、エリカはあわてて着替えに下に降りて行った。
一方はるかは相変わらず競艇のナイターレースの結果をチェックしていて、帰った後も麻雀もプロレスも忘れて、競艇の結果だけに集中していた。
エリカは着替えてリングに向かう。今度はリングの中は別世界には見えず、自分の居場所はここだと思えてきた。




