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第27話 段取りこそ命

文化祭まで三週間。

放課後の準備に充てられる時間は、部活動や下校時刻の制限もあり、一日わずか二時間足らずだが、祝日や土日も、希望者は登校して準備を進められることになっていた。


その限られた時間の中で、教室を別世界へ作り替えなければならない。

模造紙で作る木目調の壁紙、レトロな柄のテーブルクロス、パイプ椅子に被せるカバー、黒板アートと立て看板の制作。


さらにメニューも、予算と手間の兼ね合いから厳選が必要だった。

メロンソーダやウーロン茶などのソフトドリンクに、ドリップコーヒー。そして喫茶『つむぐ』の看板メニューとして、手作りのカスタードプリンと、ボリュームのある卵サンド。


これらをほぼ百均の資材や各家庭の不用品の持ち寄りで賄うとなると、場当たり的な作業では確実にパンクする。


二時間目と三時間目の間の二十分休み。

教室の後ろの席に、湊、小春、大輝、美羽、そして紬が集まっていた。

机の上には湊のノートPCが広げられている。


「これ、大まかなスケジュール」


湊が画面を指差しながら、小春に向けてスライドをスクロールした。

画面には、細かな表が階層ごとに整然と並んでいた。


「……WBS(作業分解構成図)ね」


小春が手帳から顔を上げ、小さく目を丸くする。


「知ってるんだ。……うん、やることを一回全部バラして、順番と担当を決めてみた。壁紙なら、先に教室の寸法を測らないと切れないし、卵サンドも作り方が決まらないと材料の量が出せないから」


湊がマウスを動かすと、画面上の項目がいくつか線で繋がった。


「先にやらないと次へ進めない作業だけ分かるようにしておけば、途中で止まりにくいかなって」


「すごい……。知識としては知ってたけど、ここまで綺麗に落とし込めるものなのね」


小春が感心したように息を漏らした。

いつも完璧に仕切る小春が、素直に相手を認めるような目を湊に向けている。


「看板やポスターの版下データも、メニュー表も全部こっちのPCで作って印刷に回すよ。手書きで試行錯誤するより、文字詰めやレイアウトはデジタルでやった方が早いから」


「助かるわ。プレゼンの資料もだったけど、……瀬尾くん、こういうの得意だよね」


「まあ……こういうのは」


小春の言葉に、湊は少し気恥ずかしそうに鼻の頭をかいた。

隣で画面を覗き込んでいた紬も、画面と湊の横顔を交互に見つめ、小さく感嘆の息をこぼしている。


画面の工程表を腕組みしながら眺めていた大輝が、満足げに鼻を鳴らした。


「よーし! やること決まったな! 今日の放課後から気合入れて作業開始だー!」


勢いよく拳を突き上げる大輝の頭に、小春の手帳の角がコツンと落ちた。


「痛っ! 何すんだよ小春!」


「単純ね。今週は資材のリストアップと設計図の作成、分担決めの段階よ。手を動かすのは来週から。段取りも組まずにノリで段ボール切り始めないで」


「えぇーっ、今日からペンキ塗りたくり大会じゃないのかよ!?」


「だから、段取りこそ命だって言ってるでしょ!」


大輝の情けない叫び声と小春のため息に、美羽が吹き出し、紬も口元を手で押さえて小さく笑った。

机を挟んで笑い合う輪の中で、自分の作った工程表をもう一度見つめながら、湊も口元を緩めた。

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