表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侵蝕の戦装機〈アーク〉  作者: なついろあきめ
【第1章】喪失編
7/11

第七話 再接続

「――始め」


カイたちの後も訓練は途切れず続いていた。どのチームも動きは固い。最初だから当然だが、それでもカイよりは形になっている。噛み合わないなりに役割は分かれていて、崩れ方にも一応の筋があった。


足りないものは分かっている。


頭では理解している。だが、実際にやるとなると別だ。他人に任せるという前提が、どうしても噛み合わない。この世界では誰も助けてはくれない。そう思ってきたし、それでここまで来た。一人で全部処理する。それが一番早いし、確実だと、今もどこかで思っている。


「5分休息の後、再開する」


全チームの模擬戦が終わる。区画の緊張がわずかに緩むが、完全に抜けることはない。カイはその場に座り、頭の中でさっきの動きをなぞる。同じ失敗は繰り返さない。状況を分解し、別の選択肢を組み直す。何パターンも想定して、崩れない形を探す。


――一人で完結させる形を。


「何考えてんだよ。そんな顔して」


ユウトの声。

そんなに出ていたのかと思いながらも、視線は向けない。


「いや……何も」

「それならいいけど」


言い終わる前に、ユウトが隣に座る。距離が近い。だが気にならない。むしろ余計な干渉がない分、やりやすい。


「次の戦闘なんだが、俺が囮になってお前が叩くってのはどうだ?」

「なんだと?」


想定していなかった発想だった。囮という役割自体、頭から抜けていた。ましてや、それを他人にやらせるという選択は、最初から除外していた。


だが思い返せば、似たような動きをしているチームはいくつかあった。前に出て引きつけるやつと、横から差し込むやつ。単純だが、崩れにくい形だ。


「俺が注意引く。その隙にお前が入る。それだけ」

「それじゃだめだ。俺が囮をやる。お前が叩け」


即答だった。


危険な役を任せる理由がない。前に出るなら自分が出ればいい。その方が距離も詰められるし、対応も早い。


ユウトは一瞬だけ間を置いてから、肩をすくめる。


「そうか。じゃあ任せた」


それ以上は何も言わない。踏み込んでこない。その距離感がちょうどいい。カイは再び思考に沈む。さっきの形を組み替える。囮を自分に置き換える。前に出て、引きつけて、崩して、そこを叩く。単純だが、余計な迷いが減る。


「おい、時間だぞ」


肩を軽く叩かれる。

思考が引き戻される。


「ああ、行こう」


立ち上がる。さっきと同じ位置に並ぶ。隣にユウト。相手は別のチームだった。どちらも体格がいい。正面から当たれば不利なのは明らかだが、関係ない。


「始め」


合図と同時に踏み込む。速度は落とさない。相手も正面から来る。読みやすい。衝突の直前、軌道をずらす。横へ流す。勢いを殺さずに抜ける。


一人がバランスを崩す。


もう一人が後ろから振りかぶる。見えている。カイは後方にステップを踏む。空振り。その一瞬の隙に、ユウトが入る。


「――っ」


鈍い音。顔面に入る。

起き上がりかけた相手に、カイは間を置かずに蹴りを入れる。完全に体勢を崩す。


「やめ」


合図で止まる。終わりだった。

呼吸は乱れていない。余計な動きがなかった分、消耗も少ない。


「な、悪くないだろ?」


ユウトが軽く言う。


確かに、悪くはなかった。流れは途切れていない。無理もなかった。だが――


「……そうだな」


短く返す。

それ以上は言わない。ユウトも追わない。


列に戻りながら、さっきの動きを思い返す。確かに崩れはしなかった。だがユウトが入る前に、自分一人で処理できた可能性もある。そう考える思考が、自然に残る。

その間にも訓練は続いていく。別のチームがぶつかり、崩れ、立て直す。流れは止まらない。

気づかないうちに、視線が一点に固定されていた。


少し離れた位置で、教官がこちらを見ている。

カイはそれに気づかないまま、思考の中に沈んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ