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侵蝕の戦装機〈アーク〉  作者: なついろあきめ
【第1章】喪失編
5/11

第五話 配属

翌日。


朝から空気が重い。

だれも話さないのは変わらない。

理由は分かっていた。

結果が出る日だからだ。


戦術演算。


あれで振り分けられる。

前衛適正か、後方適正か。

人によっては、軍にすら入れない可能性もある。


通されたのは、昨日と別の区画だった。

広い。

中央には大型の表示板。

まだ何も映っていない。


ただ立って待つ。

沈黙。


やがて、複数の足音が近づいてくる。

教官だろうか。


「……揃っているな」


それだけ言うと、表示板が起動する。

一斉に視線が上がる。

画面には名前が並んでいる。


ーー今回の合格者


そういうことだろう。

左上から順番に自分の名前を探す。



あった。



それだけで、何も変わらない。

息を吐くだけでもない。

安心するわけでもない。


ただ、ここに残った。

それだけだった。


「ここに残るのは通過点だ」


低く、重い声。


「お前たちは、ただ選別されただけだ」

「ここから先は、落ちる奴の方が多い」


誰も動かない。


「覚えておけ」


短い沈黙。

そして、


「これから配属を行う」


空気がわずかにざわめく。

それを気にする様子もなく、名前が次々に呼ばれていく。


「第一訓練兵部隊、Aクラスーー」


数人が前に出る。

最後に担当教官らしき人物が現れ、引率して奥の通路へ消えていった。


「Bクラスーー」


また数人。

基準は分からない。

ただ、機械的に分けられていく。


「Cクラスーー」


カイの名前が呼ばれた。

前に出る。

隣に何人か並ぶ気配があった。


その中にーー


「お、同じか」


横から声がした。

隣を見ると、早瀬ユウトが立っていた。


「……ああ」

「まあ妥当じゃね」


何に対してかは分からないが、相変わらず軽い口調だ。

無視してさらに隣を見る。


短い髪の少女が一人。

無駄のない立ち方だ。

まっすぐ前を見ている。


もう一人は男。

落ち着きがなく、周囲をきょろきょろしている。

視線が一瞬だけ合い、すぐに逸らされた。


「ーー以上」


教官の声で区切られた。


「では今から移動する」


その声を合図に教官に続く。

さっきよりも少しだけ低い通路を進む。


「なあ」


ユウトが小声で話しかけてくる。


「クラスって、どういう分け方だと思う?」

「知らない」

「だよな」


ユウトが少しだけ笑う。


「まあでも、実力順だとしたらーー

  上でも下でもないって感じか」


カイは答えない。

ただ歩く。

やがて教室に着いた。

教官によって扉が開けられる。

中は普通の教室だった。

椅子と机、前方に教壇。

戦場とはまるで違う。


だが、ここで決まる。

どこまで行けるか、どこで死ぬか。その差が。


「適当に座れ」


教官の一言で全員が動く。

カイは一番後ろに座った。


その隣に、


「いい?」


ユウトが立っていた。


「……勝手にしろ」

「じゃあそうするわ」


躊躇なく隣に座る。

それを傍目に前に視線をやる。


教室は静かだった。

だが、昨日とは違う。

同じ場所に残った人間がいる。

同じ条件で、同じように選ばれた人間が。


それでもここから先は別だ。

同じにはならない。

誰かは落ちる、誰かは上に行く。

その中には自分も含まれる。


カイは何も考えなかった。

ただ、前を見る。

これからどうなるのかなど、誰にも分からないのだから。

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