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侵蝕の戦装機〈アーク〉  作者: なついろあきめ
【第1章】喪失編
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第四話 最初の会話

訓練が終わっても、地下は相変わらず静かだった。

誰も騒がないし、結果の話をするやつもいない。

ただ、それぞれ勝手に散っていくだけだ。

カイもその流れに混ざって歩いていた。


区画を出ると、少しだけ空間が広くなる。

壁際に自販機とちょっとした休憩スペースがある。

何人か立ち止まっているが、やはり静かだ。


そのまま通り過ぎようとしたとき、


「なあ」


声がかかった。

カイは足を止めて、振り返る。


壁にもたれてるやつがいた。

同じ制服、歳も同じくらいだろうか。

でも、どこか余裕がある。


「さっきの演算のやつ、途中で崩れたろ」

「……なにが言いたい」


小さく笑うでもなく、ただ息を吐く。

少しだけ間が空いた。


「お前さ」

「……」

「ちょっと無理してないか?」


言い方は軽いのに、妙に引っかかる。


「何が」

「動き」


即答される。


「詰めすぎっていうかさ、全部一人でやろうとしてる感じ」


言葉が止まる。図星だった。

でもそれを認める理由もない。


「別に」

「そっか」


あっさりと引いた。

それ以上突っ込んでこない。

そのまま終わるかと思った。


「まあさ」

「長くは持たないと思うけど」


口調は相変わらず軽い。

だが、言っていることは軽くない。


カイは視線を外す。


「関係ない」

「うん、まあな」


再び間が空く。


「でもさ……死に急いでいるやつって、だいたいああいう動きをする」


その言葉だけ、少しだけ重みがあった。

カイは思わず顔を上げる。


「……は?」


そいつは肩をすくめる。


「いや、そう見えただけ」


軽い口調。

でも目は逸らさない。


カイは何も言わない。

言い返す言葉がなかった。


少しの沈黙。


「ま、いいや」


そいつが壁から離れ、横を通り過ぎる。


「早瀬ユウト」


名前だけ置いていく。

一瞬遅れて、


「……久城カイ」


自然に口が動いた。

いつぶりの感覚だろうか。


「知ってるさ」


振り返らずに返ってくる。

そのまま歩いていく。

足音が遠ざかる。


カイはその場に立ったままだった。

さっきの言葉が頭に残る。


無理してる。

持たない。

死に急いでいる。


どれもーー


否定はできなかった。


通路の先では、人の流れがまだ続いている。

早瀬ユウトの姿はもうない。


再びの静寂。

しかし、さっきより静かじゃなかった。

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