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第23問 孤独なら何が必要か

 空野(そらの)は文化祭(ぶんかさい)を独歩(どっぽ)していた。

 東(ひがし)で、逸(はぐ)れた子供(こども)に縋(すが)られたら、慰(なぐさ)めながら運営(うんえい)のテントまで付(つ)き添(そ)った。

 西(にし)で、杖突(つえつき)に道(みち)を尋(たず)ねられたら、見守(みまも)りながら目的地(もくてきち)まで導(みちび)いた。

 南(みなみ)で、地(ち)に落(お)ちたぬいぐるみチャームが遊客(ゆうかく)に踏(ふ)まれそうなら、拾(ひろ)い届(とど)けた。

 北(きた)で、雑芥(ざっかい)が転(ころ)がれば、取(と)り去(さ)った。

 空野(そらの)は淋(さび)しむ暇(ひま)も無(な)かった。


 藤村(ふじむら)は目(め)を覚(さ)ました。

 藤村(ふじむら)は、寂(さび)しくて気(き)が狂(くる)ったら、困(こま)る。

 ところが、藤村(ふじむら)には情緒的(じょうちょてき)ケアをし合(あ)える家族(かぞく)が居(い)ない。

 藤村(ふじむら)の家庭(かてい)は崩壊(ほうかい)していた。

 兄(あに)は家(いえ)を出(で)て、行方(ゆくえ)も生死(せいし)も知(し)れない。

 母(はは)は心(こころ)を病(や)み、実家(じっか)に戻(もど)って療養(りょうよう)している。

 父(ちち)は別居(べっきょ)して、本宅(ほんたく)に帰(かえ)らない。

 両親(りょうしん)はまだ離婚(りこん)していない。


 両親(りょうしん)は離婚(りこん)するのか、しないのか。

 離婚(りこん)するとしたら、何時(いつ)か。

 藤村(ふじむら)の成人(せいじん)後(ご)か、成人(せいじん)前(まえ)か。

 成人(せいじん)前(まえ)なら、藤村(ふじむら)の親権者(しんけんしゃ)は何方(どちら)になるのか。

 何時(いつ)まで、藤村(ふじむら)は今(いま)の家(いえ)に住(す)めるのか。

 白蓮(びゃくれん)高校(こうこう)には通(かよ)い続(つづ)けられるのか。

 大学(だいがく)には進学(しんがく)できるのか。

 就職(しゅうしょく)して自立(じりつ)するには、何(なに)が要(い)るか。


 離婚(りこん)、成人(せいじん)、進学(しんがく)、就職(しゅうしょく)などのライフイベントを、順序(じゅんじょ)や時期(じき)ごとに、藤村(ふじむら)は何(なん)パターンも想定(そうてい)する。

 使(つか)えそうな法律(ほうりつ)や制度(せいど)を調(しら)べておく。

 結果(けっか)が最良(さいりょう)のケースでも最悪(さいあく)のケースでも、悔(く)いなく最善(さいぜん)を選(えら)べるように、計画(けいかく)しておく。

 その最善(さいぜん)さえ相対的(そうたいてき)なもので、藤村(ふじむら)は虚(むな)しくなる。

 絶対的(ぜったいてき)なものが無(な)い。

 藤村(ふじむら)は寂(さび)しかった。


 ホームのない孤独(こどく)が人(ひと)を狂(くる)わせるなら、藤村(ふじむら)はベースとして、友達(ともだち)を作(つく)っておく方(ほう)が良(い)い、と考(かんが)える。

 しかし、違和感(いわかん)が胸(むね)を咎(とが)める。

 お互(たが)いを社会的(しゃかいてき)リソースとして利用(りよう)し合(あ)う事(こと)を前提(ぜんてい)とするトモダチとは、果(は)たして、本当(ほんとう)の友達(ともだち)と言(い)えるだろうか。

 一方(いっぽう)、友達(ともだち)ではなく推(お)しであれば、対価(たいか)と交換(こうかん)で、サービスの分(ぶん)は利用(りよう)して良(い)のかもしれない。

 しかし、藤村(ふじむら)は推(お)しにぴんと来(こ)ない。

 推(お)しでは、藤村(ふじむら)の飢渇(きかつ)を満(み)たせないらしい。

 他(ほか)に、選択肢(せんたくし)としてはペットがあるが、藤村(ふじむら)には飼(か)い主(ぬし)としての責任(せきにん)が果(は)たせないので、除外(じょがい)する。


 藤村(ふじむら)は夢(ゆめ)で見(み)た空野(そらの)を思(おも)い出(だ)す。

 友達(ともだち)は、居(い)る方(ほう)が良(い)いが、居(い)なくても良(い)い。

 それよりも、一期一会(いちごいちえ)の御縁(ごえん)を、大切(たいせつ)にしたい。

 そうして、空野(そらの)が微笑(ほほえ)んでくれたら良(い)いのに。

 藤村(ふじむら)は、これで良(い)いのか分(わ)からなかった。

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