5、リスター市と買い物と
僕、父さん、ミア(メイド)、シア(メイド)、御者の5人を乗せて馬車が出発した。リンクス公爵家領で行われる領主会合に参加するために。目的地までの約100kmの旅が始まった。
僕たちは運よく魔物に遭遇しなかったので、順調に進めて3日目の昼前には、もうリンクス公爵家領に入っていた。さすが公爵家領ということはあって、人通りがグラント町(父さんが領主をやっている町)と比べて格段に多かった。農民、商人、冒険者、衛兵など色々な職業の人がいた。
3日目の昼過ぎに、リンクス公爵家領の中心地のリスター市に到着した。門の警備を超えると、ザ・大都市のような光景が広がっていた。領主会合があるのは明後日なので、今日と明日はゆっくりすることになった。
「レオ、色々なお店があるな。どれから見に行きたい?」
「うーん...まずは野菜とか果物とかの食べ物が良いな。」
「じゃあ、あの店に行こうか?」
父さんが指差した先の店には、店先に野菜がたくさん置いてあった。あそこなら、良さそうなものも見つかるであろう。
「うん!」
「いらっしゃいませ!今日は何をお求めですか?」
「少し遠くから来たので、家族に珍しいものを買って帰ってあげたいなと思いまして。何かちょうど良さそうなものはありませんか?」
「お客さんたちはどこから来たんですか?」
「私たちはグラント町からです。このリスター市(リンクス公爵家領の中心地)に少し用があったもので。」
「グラント町と言いますと...。」
(一応思い出してるふりはしてるけど、どこか分からないんだろうな。)
「未開地を開拓している辺りです。」
「ああ、あの辺りでしたか。開拓は順調に進んでいますか?」
「まあ、ぼちぼちです。それで。」
「ああ、珍しいものをお探しでしたね。このナスはどうでしょう?この近くで採れたものなので、まだ新鮮ですよ。」
「何か他にはありませんか?」
「そうですね...あ、レンコンなんてどうでしょうか?今日は珍しく納入できたんですよ。」
「...レンコン?」と、何を言っているのか分からないと、父さんの顔も教えてくれていた。父さんも顔に出やすいタイプなのかな?どうりで、僕も顔に出やすくなった訳だ。
(父さんはレンコンを知らないのか。まあ、うちの辺りでは馴染みが無いもんなぁ。でも、レンコンを買うのは決定だな。)
「お客さんは蓮って知ってますか?」
「ああ、あの蓮だろ。これと何の関係があるんだ?」
「レンコンは、蓮科の植物の地下茎なんですよ。シャキシャキとした歯ごたえで結構美味しいので、おすすめですよ。」
「ふーん、レンコンねぇ。レオは何がほしい?」
「そうだね。僕はレンコン、ナス、ネギ、ショウガが良いな。」
「...。」と、なぜか黙りこくってしまった店員さん。
「どうしたんだ?何か問題でもあったか?」
「...あ、いえ、すみません。お子さんはまだ小さいのにスゴいですね。野菜の名前がしっかり分かってますよ。」
「ありがとうございます。では、レンコン、ナス、ネギを3本ずつ、ショウガを2つください。」
「レンコン、ナス、ネギを3本ずつ、ショウガを2つですね。......はい、どうぞ。合計で1580ウィーズになります。」
*ウィーズはこの世界の金額の単位で、1ウィーズ=約1円である。
「じゃあ、これで。」
「1600ウィーズですね。20ウィーズのお釣りです。では、また買い物に来てくださいね。坊やもまた来てね。」
「うん、分かりました。」
野菜の買い物が終了したので、次は母さんへのお土産としてあげるための紅茶を買うことにした。僕の母さんは大の紅茶好きなのである。目指すはティーショップ(紅茶などの茶葉を売っている店)である。
野菜を買ったお店から、城門とは反対の方角に歩いていくと、すぐにそれらしい看板を掲げたお店が見えてきた。
「父さん、このお店だね。」
「そうだな。じゃあ、入るぞ。」
「いらっしゃいませ!今日は何をお求めですか?」
「妻への贈り物として、紅茶の茶葉を送ろうと思いまして。」
「それでは、少し高級なものの方がよろしいですね。」
「そうですね。何か良い茶葉はありますか?」
「今だと、100gあたり4000ウィーズのこの茶葉が人気ですよ。」
(まあ、この世界の物価を考えると、少し高級な紅茶1杯分が100円なのは仕方ないのだろう。)
「では、それを200gもらえますか?」
「分かりました。ちょうど8000ウィーズです。」
「では、これで。」
「ちょうど8000ウィーズ頂きました。またのご来店をお待ちしております。」
ティーショップを出ても、まだ太陽はちょっと見上げるくらいの位置にあった。お店はあと2つくらい行けそうだった。さて、どこに行こうかな...。
「なあ、レオ。父さんも行きたい所があるんだけど、そこに行っても良いか?」
「うん、良いよ。」
父さんと手を繋ぎながら、商店街沿いを歩いて行った。すると、父さんがある1つの大きくて立派な建物の前で止まった。入口の上にある看板には『冒険者協会・リスター支部』と書かれていた。
「父さん、冒険者協会に用があるの?」
「そうだよ。正確には、この2つの建物のうち、左側の冒険者ショップに用があるんだよ。ちなみに、右側が冒険者協会だよ。」
「冒険者ショップ?」
「冒険者用のアイテムとか、魔物の素材とかが売っているんだよ。」
「へえー、そうなんだ。」
「じゃあ、行くよ。」
「うん。」
冒険者ショップには具体的に何が売っているのか、魔物の素材はどんなものなのか、何か面白いものはあるだろうかと、僕の好奇心が刺激されている。今、その欲求を満たすために、お店のドアを開けた。
レオは、冒険者ショップで何を見つけることができるのか?そして、明かされる母さんの過去の一部とは?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。