4、領主会合と出発と
梅雨が明けてから、しばらく経ったある日、珍しく父さんの部屋に呼ばれた。父さんの部屋に入ると、その性格に反して、きれいだった。
「普段は驚かないのに、どうして父さんの部屋に入るなり驚いた顔してるんだよ?そんなに意外なものでもあったか?」
(え、顔に出てたんだ。)
「次は、間違えたとでも言いたそうな顔だな。」
(また顔かよ。)
「また驚いてるのか?珍しい日もあるもんだな。」
「父さん、どうして僕の気持ちが分かるの?」
「まあ、父さんの27年間の人生をふまえてかな。それにしても、この27年間は色々あったな。親父を殴って家出したり、不良の集団を壊滅させたり、侯爵家に捕まりそうになったり、母さんと駆け落ちしたり、レオが生まれたり。」
「えっ!」
「まあ、そんなことは置いといてだな。」
(いやいや、聞き捨てならない事がいくつかあったんだけど。父さんの人生って波瀾万丈すぎない!?)
「実はな、今日レオを呼んだのは、1週間後にある領主会合の話がしたかったからだ。前にも話した通り、レオにも一緒に来てもらうぞ。それで、3日後に出発だよ。」
「領主会合?」
「何だ、忘れたのか?レオも意外といい加減だな。」
「いい加減なのは父さんの方だよ。領主会合なんて初耳だよ、僕。」
「本当か!まあ、レオが嘘つく訳ないよなぁ。」
「本当だよ。しっかりしてくれないと困るよ、もう。」
「ごめん、ごめん。謝るから母さんには内緒で頼むよ。なっ、お願い。」
「どうして母さんには内緒なの?」
「実はな、父さんが何かやらかす度に、昼食の弁当の量がドンドン減っていくんだよ。まあ、母さんにプレゼントをあげれば戻るんだけどな。」
(いや、うちの両親は2人とも子供かよっ!)
「今度は呆れた顔か。さて、領主会合について説明するよ。まず、王都を除くと、この国は6つの公爵家が分割して治めているんだ。それで、公爵家領を除いた土地を父さんたち領主が代わりに治めているんだ。ちなみに、ここの領地はリンクス公爵家の管理下なんだよ。」
「リンクス公爵家の領地を代わりに治めている領主は、年に1回リンクス公爵家に挨拶に行くってこと?」
「そう、勘が良くて助かるよ。他の公爵家の場合も同じことが行われる。」
「それで、どうして僕も行くの?」
「レオは父さんが思っている以上にしっかりした子だ。それなら、早い内に、世界を少しでも多く見せておいた方が良いと思ってな。一応言うけど、これは母さんの許可ももらってるぞ。」
(やっぱり誰かが自分のことを考えて行動してくれるのは嬉しいことだ。)
やっぱり僕はこの家、この環境が好きだ。だから、この場所は守らなくてはならない。この空間を侵すものがあれば排除しなくてはならない。たとえ何が待ち受けていようとも。僕は密かにそう心に誓った。
あっ、そうだった。まだ父さんとの会話が終わっていなかった。
「レオ、急にどうした?」
「ちょっと緊張しちゃってね。」
「2歳弱でこれなんだから、レオなら問題ないさ。みんな腰を抜かすぞ。」
「そうだと良いね。」
「あ、そういえば、この前言ってた『手すりの無い橋』の案をフィリップ(財務係)に見せたら、驚いてたよ。子供っぽい割には、斬新で良い案だって言ってたよ。」
「子供っぽくて悪かったね。」
「まだ子供なんだから、別に良いだろ。」
「確かにそうだね。」
フッ、フフッ、アハ、アハハハハ、アハハハハ
「ああ、笑いつかれた。な、レオ。」
「そうだね、父さん。それで、僕の案はどうなったの?」
「もちろん採用だよ。フィリップが何と言おうが、建造費が無かろうが、採用だよ。なんてったって、うちの自慢の息子の案なんだからな。採用しか選択肢が無いよ。」
「また強引にやって...。母さんに怒られても知らないよ。」
「実はな、今回のことは母さんも賛成だったんだよ。」
「えっ、そうなの!」
「そうだろ、驚きだよな。父さんも初めは耳を疑ったよ。だから、今回はいつもより大きく活動できたよ。おかげで、うちの領土にある橋は全部レオの案の橋になる予定だよ。」
「またそんなことして...。だから、親バカの両親が2人揃うと、手が付けられなくなるって言われるんだよ。誰かに反対されなかったの?」
「されなかったぞ。もちろん、されても無視だけどな。」
「次からは、もうちょっと遠慮気味に頼むよ。」
「父さんに任せておきなさい。」
「いや、父さんだから言ってるんだよ。」
「分かってる、分かってる。」
「はあー。」
「ハハハハハッ。」
父さんの部屋に呼ばれてから3日が経った。この3日間で、僕はリンクス公爵家領でしたいことをまとめた。本当は魔導書(魔法についての本)が欲しかったが、財布に優しくないので、美味しそうな食べ物を買うことにした。
出発の時間になった。一応これでも、うちは貴族なので、2頭立ての4人乗り馬車で行くことになっていた。出発の直前まで、母さんからいろいろと注意を受けた。
「いつでも貴族として恥ずべき行為はするな。」とか
「身分をわきまえろ。」とか
「自分の顔を売っておけ。」とか
「父さんがやらかさないように見張っておけ。」とかである。
御者が馬に鞭を打ち、馬が高く嘶いた。さて、出発の時間である。
「ねえ、父さん。」
「どうした、何かあったか?」
「今気付いたんだけど、護衛はいないの?」
僕らの2頭立ての馬車を除いて、街道には誰もいないのである。僕らの馬車にも、僕、父さん、ミア(メイド)、シア(メイド)、御者の5人しかいなかった。これでは、さすがに安全面で心配である。しかし、母さんが何も言わなかったということは、一応安全なのであろう。
「ああ、いないよ。そんな金は無いからな。自分の身は自分で守るんだよ。」
「父さん、僕も自分で守るの?」
「まあ、そういうことになるな。」
「まだ、戦いの仕方なんて教えてもらってないんだけど...。」
「そうだろうな。誰も教えてないからな。」
「え?」
「冗談だよ。父さんたちがいれば、どんな魔物が出てきても問題ないよ。」
「頼んだよ。」
「任せておきなさい。」
レオたちは、リンクス公爵家領へと出発しましたね。さて、リンクス公爵家領とは一体どんな所なのか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




