6、観光と料理と
父さんと手を繋ぎながら、冒険者ショップのドアを開けた。その瞬間に、僕の目には、今まで本の中でしか見たことがなかった光景が広がっていた。冒険者の装備から魔物の素材まで何でもありそうな雰囲気だった。
「父さん、冒険者ショップってスゴいね。色々なものがあるよ。」
「レオは魔物を実際に見るのは初めてか?」
「うん。ずっと家の近所にいたからね。へえー、食べ物を売っているお店もあるんだね。父さん、ここならずっと見てても飽きなさそうだよ。」
「そんなに喜んでくれたなら良かったよ。ちなみに、あの食べ物ショップにある主な食材は、全部魔物から採れたものだよ。」
(確かに、商店街でお肉屋を見なかったな。)
「それで、父さんは何の用があったの?」
「父さんは新しい剣を買いたかったんだよ。今のは、もうボロボロだからな。」
父さんに連れられて、武器ショップに行くと、同じ剣でも色々な種類があった。剣の長さ、重さ、材料、刃の幅などがそれぞれ違っていた。
「どの剣を買うの?」
「そうだなぁ。安いけど使いやすいのが良いな。」
父さんが剣を実際に触りながら考えているので、僕は邪魔にならないように他の武器を見に行くことにした。よく分からないが、剣の値札に『付与したもの』、『付』、『未』と書かれていた。困ったら父さん、これは確定である。
「父さん、どうして値札に、『付与した効果』、『付』、『未』が書いてあるの?」
「ああ、そのことか。『付与した効果』はその剣に付与されている効果、『付』は買った時に好きな効果の付与が付けられること、『未』は何も付与されていないことを表しているんだよ。」
「どうして、父さんは『未』を買うの?」
「『未』が一番安いからな。使いにくかったら、すぐに他の人に渡せるだろ。それに、『付』には当たり外れがあって、下手な付与師がやると失敗するんだよね。」
「そうなんだ。それで、父さんはどれを買うの?」
「折角だから、少し高めのを買うことにしたよ。長持ちしそうなのをな。」
「いくらなの?」
「15万ウィーズ(1ウィーズ=約1円)だよ。」
「え、そんなにするの?」
「いや、これでも安い方だからね。高い剣だと、何も付与されてなくても40万ウィーズかかるんだよ。じゃあ、お会計をしてくるから、ここで待っててね。」
「うん、分かった。」
父さんがお金を払っている間、周りのお店を眺めていた。やはり冒険者協会なだけはあって、色々なものが置いてあった。
「レオ、会計終わったよ。」
「何か他に買うものはある?」
「いや、これで全部かな。ところで、向こうに串焼きの店があったが、食べないか?」
「うん、良いね。僕もちょうどお腹が減ってたんだ。」
良い匂いが漂ってくる方向へ歩いて行くと、串焼き屋がジュージューという音を立てていた。夕食の時間帯ということもあり、串焼き屋などの食べ物屋がある区域は少し混んでいた。
「お客さん、何にしますか?」
「何かおすすめはありますか?」
「今日は良いエクセルボアが入ってて、それなんかどうだい?」
「では、それを2本お願いします。いくらですか?」
「はい、2本ね。750ウィーズだよ。」
「エクセルボアにしては安いですね。普通なら1本450ウィーズはしますよね?」
「お客さん、よく知っているな。ここだけの話だがな、近々領主会合があるらしくてな。このリスター市の活気を上げとけって、リンクス公爵から言われているんだよ。」
(串焼き屋のおっちゃん、僕の父さんも、一応領主だよ!まあ、そんな風には見えないかもだけど...。)
「それは大変ですね。はい、750ウィーズちょうどです。」
「確かに750ウィーズ受け取った。ほら、エクセルボアの串焼き2本だよ。熱いうちに食べなよ。」
「はい、ありがとうございます。」
エクセルボアの串焼きを食べながら、宿まで帰ることにした。エクセルボアの串焼きは、塩と胡椒で程よく味付けされていた。肉もジューシーで柔らかく、とても美味しい。それに、この肉は......いけない、いけない、このままだと、食レポになってしまう。
「父さん、エクセルボアってどんな動物なの?」
「ん、エクセルボアか。あれは美味しい動物だよ。」
「父さん、そういうことじゃなくて、大きさとか、見た目とかだよ。」
「ああ、そっちか。」
(いや、選択肢はこっちの1つしか無いよ。)
「エクセルボアは他のボアと比べて、大きくて強いんだよ。でも、食肉用に使えるから、それなりの値段が付くCランクの魔物だよ。」
「へえ、そうなんだ。父さんは倒したことあるの?」
「あるよ。何回か、うちの領地に入ろうとしてたからな。でも、市場で全部売っちゃったから、レオは食べたことないと思うよ。」
「そうだったんだ。」
「ほら、そんなこと話している間に、宿に着いたよ。荷物を置いて、4人で夕食を食べに行くよ。」
僕と父さんが宿に着くと、同じタイミングで買い物に出たシアとミア(僕の世話係を務めているメイド)はすでに宿に戻っていた。2人を入れた4人で、夕食を食べに行くことになった。
夕食も、エクセルボアの串焼きに負けないくらい美味しかった。この世界で初の外食は大満足である。宿に戻ると、シアとミアに、貴族の儀礼の練習をさせられた。さすがに無礼なことをして死刑にされても困るので、これは真面目にやることにした。
次の日も、午前中は貴族の儀礼の練習、午後はリスター市の観光をした。リスター市には、たくさん良い所があったが、やはり母さんの待つグラント町が一番落ち着ける気がした。
夕食は昨日と同じ料理屋で済ませ、宿に戻ると、父さんに「もう寝なさい。」と言われた。なんでも明日の領主会合は朝からあるらしく、早起きして用意をしないといけないらしい。
(おやすみ。明日は5時起きだよ。父さんがミスらないと良いけど......zzz。)
翌日に行われる領主会合は一体どうなるのか?
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。
今後とも八咫烏をよろしくお願いします。




