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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
西の国の動乱
119/194

侵略と言われない為に

いやほんと会話分少ないな



 その後はとりあえず狸親父の動きだけ気を付けておいて、西の国の残りの小領地を片付けに向かった。

 大領地の合間にいくつもあった小領地だが、通り道は既に降伏している。

 元々戦えるだけの力が無い事もそうだが、バウワーの狸親父が逃げただけではなくデニス・フォン・オイレンブルクも投獄されたとなると、最早残った領主達に反攻の意思があるわけも無く。

 ただ、実際行って領主と話を付けなければならないのと、それが力によるモノではなく自主的な降伏であって欲しい旨を説明し、その通り了承してもらわなければならない。

 それについてはピレネー公爵家の分家の長男がやると言うことだったのだが、どう考えても怪しい、と言うか恐らくなんかしらの取引を持ちかけて抱え込む気だろうと思ったので、この場で一番発言力があるのは誰だと問いかけて交渉を譲ってもらった。

 中々簡単に譲らなかったので、勝手な予想だがノイベルトと何かしらの話し合いが行われていて、ノイベルト統治の方向で現地の人間を纏めようとしたのではないかと思っている。


 今回の戦い、まぁ言ってしまえば戦争だが、このままだと王国による侵略戦争と取られかねない。

 立場上はノイベルトの救援要請を受けて、ノイベルトと共同戦線でバウワーやオイレンブルクを倒した事になっている。

 だが、それはバウワーが兵を差し向けてきたから、オイレンブルクが兵を準備していたから、そして両者が結託していたからと言う理由があるから両者を倒す事が出来たのであって、他の小領地に関しては絡んで来ない限り手を出したら侵略になってしまう。

 それでは結局王国が西の国を征服したのだ、と言う事になってしまって外聞が悪い。

 あくまでノイベルトを助けに戦い、結果的に西の国を王国に併合する事になっただけ。

 この場合、ノイベルトの亡命の理由が問題になって来ると思ったら、そう言った部分はデリケートな内容が含まれる可能性があるので、外に漏れない事になっていると言う。まぁほぼ確実に好き勝手噂される事だろう。

 だから、結果的に亡命をしただけだと言う事にしておいて後はぼかす。

 これで統治をノイベルトに任せていたら、それこそノイベルトが王国に西の国を丸ごと売ったと言われるだろう。

 逆に王国の公爵家の長男なんかが領主になったら、結局侵略戦争だったのだろうと言う人は多くなると思う。

 そこに来てイフナース元教皇猊下様の登場、と言いたかったが本人が隠しておきたいと言うせいで、聖地で高位の僧侶だった公爵家所縁の人が統治する、と言う事にしておかねばならないが、高位となればこの付近一帯のジャポニー教徒は不満を言えないだろう。

 恐らく遠目に見て前教皇だとわかるだろうし、すぐに噂は広まって落ち着くと思う。

 政治と宗教は切り離した方がいいと思ってるくせに、こう言う部分では利用してしまうのを大変心苦しく思うが、ここまで話が進んでくると前教皇が領主になるのって、実は凄くいい思いつきだったんじゃないだろうか。


 デニスを投獄した翌日には領民の志願兵をバウワー領に帰し、オイレンブルクの周りの溝や西側の大穴を埋める作業も終えた。

 そのついでに西の海の事を調べて見たが、どうやらかなりの遠浅で大型の海の魔獣はまず入って来ないらしい。

 オイレンブルクがこれまで生き残って来た理由の一つが海の幸に恵まれていた事のようで、漁獲量は以前のマーレンの町よりあるらしいが、遠浅の海でそんな獲れるのかと思ったら地引網でゴッソリ行くと言う。

 どうやら外洋に面してることもあって豊からしく、週三日のほぼ隔日の漁なら漁獲量も殆ど均一に安定しているとか。

 他に何かないかなと探した所、どうやら海苔が採れるらしい。

 この世界では乾燥させないで煮たりして食べるようだ。

 海産物で何か出来ないか考えはしたものの、外に売りに出すには距離があり過ぎて干物等の保存食にする位しかなく、各国少量ながらそう言った物を作っている。

 それを大体的に売りに出せる環境整備は山越ルートを何とかしないと無理そうなので、海産物は領内消費が関の山だろう。

 それならコボルトの集落みたいに布作りはどうだろうと考えてもみたが、ワーム系を飼えそうな環境が古城くらいしか無い。

 南の山中にファームでも作ればいいのかもしれないが、西の国の南側の山間部を切り開くのは魔法で一発ドカンでいいとしても、その後の街道作り等を考えると手間がかかり過ぎる。

 ちょっと考えた程度じゃ一発逆転の案なんて出て来そうに無いので、とりあえず目先の小領地巡りをしつつ狸親父の動向を探った。


 バウワー領の南の山間部にある古城は、その立地から山側から攻めるにも行軍できるような道が無く、かと言って少数精鋭で山を越えて裏手から攻めようにも、地脈の真上にある設置式の探知魔法に引っかかってバレるらしい。

 その辺りまでは以前下見に来た時に調べた。

 城の歴史としては王国の物よりあるようで、こんな所に建てる以上防衛特化にしたかったのか、状態固定の魔法以外にも設置式のシールドまで常時発動していて、ちょっとやそっとの魔法じゃ壁に傷も焦げも付けられないらしい。

 流石に常時発動式なのでシールド自体は結構弱い物理と魔法複合方のシールドらしいのだが、それにプラスして劣化等を防ぐ状態固定の魔法も効いているので、通常の遠距離攻撃や魔法程度物ともしないようになっているらしい。


「それでトモヤ。お前はアルフレートを何とか出来る案があるらしいが」


 四日で全ての小領地を回って、自主的に降伏してもらう事に成功した。

 今後王都に招いて調印等を行い、王国の一員として町長くらいの立ち位置でやって行って貰う事になると思う。

 それ以上の権限を与えても厄介そうだし。

 その後で、バウワーの街に兵を集めて拠点とした。

 理由は、単純に食料が多いからだ。

 毒を調べて貰った所、案の定いくつかの倉庫の穀物が汚染されていたので、それは焼却処分した。

 しっかりこっちをハメるつもりで、真っ先に目が付く街の大きな倉庫と街から近い町の倉庫まで。

 ただ何となくそうだろうなと思う部分もあった。

 付近の住人が、その倉庫に近づかないのだ。

 多分付近の人には毒が散布されてると伝えてあったのだと思う。


「古城攻略自体はそんな難しくないです。シャルが飛ばしてくれるので、接近出来ないと言う第一関門は突破出来ますから」

「第二関門もあるのか」

「城内は身を隠しながら戦闘が出来るように作られていて、待ち構えている側が有利です」

「それは不味いぞ」

「こちらのシールドを破れるのならですが」

「……そうだったな」

「そもそも負ける要素が無いんです」


 難攻不落と言われるのは、そもそも敵が城に取り付けないからだ。

 裏から攻めるにも発見される可能性が高く孤立して倒されるので、結局正面から殴り込むしかない。

 だが正面は馬車がギリギリ走れる程度の急坂で、ついでに谷間に道があるので広くは無く、高低差を利用して防衛側が好き勝手弓で攻撃出来る作りだ。

 山の影にあるせいで、ウィザード隊による遠距離魔法攻撃をするにも弓の射程範囲まで近づかねばならない。

 その上門の位置が奥まった位置にあり、そこに到達する為には城壁沿いに進むしかなく、上から好き勝手攻撃されてしまう。

 フライで飛んで上から魔法攻撃をするにしても、普通のウィザードの最高高度では結局は弓隊の餌食だ。

 生活には便利とは言えない城だが、こんな山間に無理やり作っただけあって普通じゃ攻め落とせそうにない。

 例えばだが、大盾持ちにシールド重ね掛けして防御を担当してもらい、その盾の下に隠れて城壁沿いを進む。

 大盾持ちが前衛の殆どを占めてしまうだろうが、これくらいしないと入り口に到着するまでにかなりの数が消える。

 城内に入っても死角からの攻撃を受け続ける事になる。

 ちょっとした物陰が多く、その上に外側からは暗くて中が見えず、中からは光を浴びた兵が見えるので攻撃し放題だ。

 日中の日が当たらない時間でも、ランタンの位置で明暗の差は作れてしまう。

 相手がライトを使って照らしたとしても、物陰が隠れて攻撃しやすいように人一人隠れられるだけのスペースと、反撃されても絶妙に狭い隙間だったりして剣が障害物に弾かれてしまう。

 それをさらに物量で押して押してとやると弓兵がいた中層の外に出るが、恐らくここで精鋭の前衛と弓隊に攻撃されて兵の殆どを失うだろう。

 上がって来れる階段一か所しか無いので待ち構えている側が十倍の兵力差でも殆ど倒してしまうだろう。

 まともに攻めたら、恐らくこの辺りで勝負がつく。

 道中罠や死角からの攻撃で着実に数を減らし、表に出た所で一気に数を減らし。

 上手い事待ち伏せを乗り越えて倒す事が出来たら攻め側の勝利だが、恐らくよっぽどの精鋭揃いでも、この城の特徴を知らなかったら無駄な犠牲を増やして不利になるだろう。

 だが、昔の装備の水準は今よりも大分低かったらしいので、恐らく防衛側有利で終わる事だろう。

 事実この城は破壊されずに残っている。


「いつやるんだ」

「今偵察してもらってます」


 シャルと楓子の隠密力最大状態でのスパイ活動だ。

 シャルの透明化はそこまで精度が高く無いので、動き回ると透過した景色が歪んで見えてしまう事があるらしい。

 だが楓子が魔力的に遮断するシールドを使って、尚且つフライで天井すれすれに飛びながら探る分には、管理能力の優れたウィザードでも見つけられないと思う。

 と言うか俺でも二人に結託されたら見つけられないと思う。


「バウワーの領主は地下にいると思います。恐らく地脈に近い位置にいるので、俺でもここからでは探知できませんが」

「確か一回王城に来と言ったな。それだけで魔力を覚えているのか」

「魔力の感触は人それぞれですからね」


 実際は二回会ってるけど、嫌った相手の魔力なのでしばらく忘れないだろう。

 そう言うツヴァイは、『むーん』と唸ると俺を見た。


「トモヤって戦闘中とそうで無い時で人が違うよな」

「そうですか?」

「戦闘中は敬語じゃない」

「あー、切羽詰まってるからでしょう」


 目上の相手だし、通常は敬語だし戦闘中もそのつもりなのだが、短く指示を出したりする時に敬語は文字数が多くなるから好まない。

 ただそれだけなんだと思う。

 思う、と言うのは無自覚だからだ。


「いや、指揮官として俺はいるが、立場上トモヤの方が上になる。ああ言う場ではむしろその方がいい」

「立場上って、俺の立場って中途半端ですよ?」

「国王代理だろう」

「……なんかそれも語弊ある気がするんだよなぁ」


 そもそも、そう言った仕事をしているのは公爵家の爺様方だ。

 最終決定とか式典なんかでは国王の存在は必要になって来るが。

 そう言えば最近余計に見なくなったと思ったら、セシールさんと二人で仲睦ましく城内でひっそりと生活してるらしい。

 最初の内はセシールさんが尻を叩いていたが、国王の決裁が必要な物は全て片付いたらしく、また仕事が出来るまでしばらくのんびりするんだそうな。

 しばらくもなにもいつもと変わらないと思う。

 国王業務で長い事世界樹に帰れなかったせいか、実に五百年ぶりの夫婦生活を楽しむんだとか。

 まぁシャルが産まれてる事からわかるように、極たまに区画長の奥さんであるソランジュさんに転移門の魔法で連れて来て貰って会っていたようだけど。


「ただーい」

「ま」


 何で分けたと突っ込む前に、『ただーい』担当シャルが飛びついてきたので反射的に手で押しとどめてしまった。


「うー……」

「どうだった?」

「豚はいなかった。多分もっと地下。隠し通路が狭くて探りに行くには兵を倒さなきゃ無理だからやめた」

「そんなんがあるって事は、あの狸親父は実はあの城に詳しいな」

「おかしなことは無い」


 自領内にある防御性能だけなら一級品の城だから、何かに使えないかと調査するのはおかしくは無いか。

 何なら自宅に過去の調査資料があっても不思議じゃないし。


「楓子から見てどうだった?」

「直接乗り込むなら隠し通路手前に十人くらい一気に連れて行ける広さの部屋があるから、多分すぐ終わると思うよ?」


 意外とやる気の御言葉だった。


「それでトモヤ、どうする気だ?」

「まず、ツヴァイが優秀な兵を二十人くらい選んで、狸親父確保に十人、城内で敵を倒すのに十人に分ける。だからそのつもりの人選で」

「わかった。だが少なくは無いか?」

「城内で暴れる方は楓子を付けるから鉄壁。狸親父確保の方は俺も付いて行くとして、シャルにシールド張ってもらって一応の防御を固めつつ護衛の兵を排除、狸親父を拘束してシャルに牢へぶち込んできてもらう」

「それだけか」

「一応外では千絵がサンバーストの発動前状態を維持して威圧してもらう。アレ以上にビビる魔法は中々ないと思うから」

「この目で見た事が無いからわからないが、熱とか大丈夫なのか?」

「多分かなり熱いんじゃないかなぁと」


 威圧に丁度いいのもあるし、低空、それこそ千絵と城の間で膨張と圧縮を繰り返して大きくすることで、あの辺りの草木は灰になり、相手の矢も燃やし尽くしてしまう。

 一応護衛にシエルを置いておくつもりだけど、千絵自身自分で無自覚にシールドを使ってるはずなので大丈夫だと思う。

 間違ってでも城にサンバーストを打ち込んだら、俺達は何とかシールドで生きてるかもしれないが前教皇の住処が無くなってしまうわけで、千絵には気を付けるようにと再三にわたって言っておかねば。


「なんせ、劣化版の太陽がそこに現れるようなものだから」

「あのような物が……」


 熱いと思えば千絵も調整するだろうし、大丈夫だろう。


「そもそも威圧も囮で、こちらの転移が相手に即座に気付かれないようにする為だけだから、城内で戦闘が始まれば消してもらうつもりだし」

「そんな熱量を消せるのか?」

「消せない程度のを作られても困る。まぁ最悪上空に打ち上げて貰えばいいし」


 俺達が城内に入れさえすれば、後は遠くで見ていてもフライで飛んできて適当に援護してくれてもいい。

 それこそシエルだったらある程度戦ってくれてもいいし。


「ふむ……。ではそれをいつやる?」

「今晩とかどうかなぁと。恐らくここ数日何も無かったから、いきなり夜襲でサンバーストなんて見せつけられたら混乱すると思う」

「混乱し過ぎて相手の動きが読めなくなるのではないか……」

「それはあるけど、それにしてもまず表に出て見ると思うんだ」

「確かにそうだな」


 その後で恐怖に駆られて逃げるのもいるかもしれないが、その頃には城内に入り込んでいる。


「では速やかに兵を選ぶ」

「よろしくお願いします」


 ツヴァイはそう言って兵の集まる広場へ行った。


「さて、こっちも準備するか」

「ふふ……ふふふ……豚は丸焼き……」

「煮ても焼いても揚げても食えそうに無いな」

「ええ……私あんなのやだ……」


 一応だが、古城すら囮で本人は国外逃亡を狙っている可能性もある。

 だから一時間置き位に何となく魔力探知の範囲を広げて見ているのだが、今の所それっぽいのは見つからない。

 狸親父お抱えのアークウィザードが、バウワー領から王都まで一発で来れる使い手だった。

 だからもっと範囲を広げた方がいいとも思ったのだが、最大距離をバウワーの街から王都までとしてざっと見てみると、一回関所辺りに出て一晩魔力回復をしないと町が無いのだ。

 流石に王都とか公爵領の街に現れるとは思えないし、西よりの町に飛んできたとしても人相書きの手配をしてあるので即座に捕縛される事になっている。

 元々古城が最初から囮で、本人が馬で関所付近まで行っていたら話は別だが、ノイベルト領内を行く事になるので結構なギャンブルだ。

 それに俺がこんな広域探知できるとは思ってもいないだろうから、やるなら万全を期して関所を超えた森の中でこっそり一泊して他国へ飛ぶのが一番逃げ切れる可能性がある。

 王国を経由せずに直接北方向へは恐らくない。

 ここから北方向は険しい山々の先に標高が高い土地が広がっていて、逃亡生活を送るには夏でも少々寒い上に町も高い土地では無く更に北東、魔人の国に近い方の低い土地にあるので、転移門の魔法一発で飛べる距離から大幅にオーバーしている。

 もしかしたら小さな村でもあるかなと思ったが、魔力探知で一切かからないので多分無い。

 そもそも、毎日何度もこうして探っていて反応が無いので、狸親父が既に国外逃亡している可能性は低かった。

 馬とキャンプ道具一式を持って転移門で最大距離飛んで、その後で馬での移動もしていたらもう見つからない恐れはある。

 王国のどこか平地に飛んで出て、そこから馬で移動して夜はキャンプし、また転移門の魔法でどこかへ飛ぶ。

 これをバウワー兵をオイレンブルクに送った時点でやっていたら、それはもう俺の感知範囲外まで逃げているだろう。

 他所の国で一からやり直すような奴には見えないけど、命が掛かっていたら逃げざるを得ない。

 さて、果たして蓋を開けたら狸親父がいるのかもぬけの殻か。



花粉で気管支をちょっとやられていたのが、ここ二日調子いいぞー!

と思ったらやっぱりだめでした。

スギ花粉撲滅委員会まだ?

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