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異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
西の国の動乱
118/194

制圧



 翌朝、あっさりと開戦した。

 なんて事は無い、食事を摂ってミーティングを行い、相手は下がれないから包囲して着実に削って行けばいいと言う話で決まり、前列を盾持ちで固めて遠距離攻撃でバウワーの兵を一纏めに追い込んだ。

 こちらの方が人数が多いので、分断してしまって撃破でもいいのではと言う話にもなったが、少し押せば掘り返された柔らかい土の山を背に動けなくなり、大勢の方が身動きが余計取れなくなるから一纏めにしてしまえと言う事に。

 集めてしまった方がファイヤーボールでの延焼効果も期待できる。

 向こうもそれを恐れてシールドで固めて来るだろうが、最早一纏めに追い込んだ時点で勝負は決していた。

 いや、昨日の夕方に布陣した時点で勝負は決しているのだ。

 それなのに白旗を上げる者は無く、一枚、また一枚と相手の前衛が倒れて行く。


「とりあえず行ってくるねー」

「ああ。無理すんなよ」


 シエルはそんな戦闘をしてる脇を駆け抜けて土の山に剣を振り下ろして吹き飛ばした。

 そうして道を作ったと思ったら助走を付けて大ジャンプした。

 そして門前に着地し、勢いを殺せずそのまま門に激突したかに見えたが門に剣を突き立てていて、勢いそのままに一撃で破砕してしまった。

 規格外もいい所だ。

 あの門、破城槌みたいな物でぶっ叩いて破る程度には大きく分厚いってのに。

 門は縦に分厚い板を並べて鉄で繋いでいるタイプで、シエルはその一枚を綺麗にぶち抜いて突破していた。

 遠目に五十センチはありそうなのに、ガーディアンとしての攻撃性能の異常具合がわかる。


「ねぇ智也、おかしくない?」

「うん。おかしい」


 ある程度削れば白旗を上げるだろうと誰もが予想していた。

 オイレンブルクからの援護は一切無く、門番が上から逐一観察して報告している姿だけが見える。

 バウワーの兵は諦めてしまったのだろうか。

 オイレンブルクからの助けも無く、大穴の際まで追い詰められ、王国兵とノイベルト兵の混成軍にタコ殴りにされ。


「ツヴァイ」

「うん? どうしたトモヤ」


 圧倒的有利な為に指揮官として後詰になっていたツヴァイも、つまらなそうな顔で戦闘を眺めていた。


「何であいつら降伏しないんだろう」

「俺も考えていた。反王国の教育が染みついていて降伏するくらいなら死ぬ方がいいと思っているのか、待っていれば援軍が来ると思っているのか、ハナから全てを諦めているのか」

「ちゃんと防御と反撃をしてくるし、死ぬ方がいいと思ってるなら向かって来そうなものだし、かと言って諦めてるようにも見えないから援軍かな」

「来ると思うか?」

「来ないと思う」

「それを信じ抜ける程に両家に信頼があると思うか?」

「それは知らないけど、援軍があるならとっくに門の向こうに集合してるだろうに、魔力探知では広場とオイレンブルク邸付近に集まってる」

「哀れ、と言っていいのかなこれは」


 何が哀れって、壁にされているのはバウワーの私兵本隊では無く領民からなる志願兵だ。

 装備の差で大体わかるが、本隊は一部しかいないように見える。

 これは狸親父の防衛に人員の殆どを持って行かれたのか。

 その本隊がすぐ駆け付けるとでも言ってあるのだろうか。


「降伏勧告を出そう。援軍は来ない、勝ち目は無いって」

「それが狙いかもしれんぞ? 武装解除したとしても、こちらの数人を殺せるだけの力を持つ奴がいないとも限らん」

「楓子のシールドがある以上、こちらが致命傷を負う状況は考えにくい」


 我らが楓子さんの鉄壁の守りは、こちら側の前列の方の兵を守ってくれている。

 それこそ武器を持たず拳だけで戦いを挑んでも勝てる位に優位性がある。

 こんな戦いに慣れたら王国の兵は使い物にならないだろうな、と思いながらも怪我をされたくないので仕方ない。


「では降伏勧告を出そう」


 ツヴァイはそう言って、部下に走らせた。

 その部下は後衛の隊列を突破して前衛の隊長格に伝えたようで、こちらからの攻撃が止んだ。

 だが向こうは攻撃を続ける。

 それらが悉くシールドに阻まれて落ちていく。

 前列は楓子のシールドがあるから勿論だが、後列もウィザード達の自前のシールドがあるので矢程度なら問題無く落とせる。

 これで主力本隊の弓隊がいたら貫通して来るのもいたかもしれないが、そう言った兵は此方(こちら)からは確認できなかった。


『あー、あー、此方は降伏に応じる用意がある。このまま無駄に命を散らす必要もあるまい、既に勝負は決した。この場で投降すれば命の安全の保障、怪我人の治療もしよう。わかっていると思うが援軍は来ない。いいか、援軍は来ない』


 拡声魔法での問いかけの後もしばらく攻撃は続いたが、いつの間にか弱まり、止まった。

 そして向こうの責任者だろうか、装備がいいので主力本隊の人間だと思うが、武器を持たずこちら側の前衛に向かって歩いてきた。

 そこで少しの話し合いがあったようだが、相手側の武装解除を合図にこちら側の人間も動いて捕縛が始まる。

 怪我人も手足を縛るだけ縛ってこちらに運び込まれた。

 血だらけだが辛うじて生きている。

 戦争をしているのだ。

 それは頭で理解していたし、実際目でも見ていたが、こちら側に被害が無い分楽観的に見ていたのは否定できない。

 相手側の重傷者を見て、やはり戦争なのだと目の当たりにし、言いようのない感情が湧いてきた。

 それが恐怖なのか嫌悪感なのか、命を投げうつ必要性があったのかと言う疑問なのか、とにかく認めたくないと言う想いだ。

 頭では理解している。

 戦争で得られる報酬は、領民にとっては数ヶ月分、下手したら一年分以上の稼ぎらしいと。

 特に西の国の場合、王国憎しと思っている人が多くいるようなので、王国が来るなら戦わねば、家族を守らねばと言う思いが強いのだろうと予想も出来る。

 だが、死んだら元も子も無いだろう。


「楓子、悪いけど何とかしてくれ」

「わかってる」


 俺にはそれしか言えなかった。

 虫の息の人を優先でかき集めて貰ってフルヒールで治し、重傷だけど命に別状のない人は一纏めにして範囲型のグレーターヒールで纏めて癒す。

 完治しない人もいるだろうけど痛みで苦しむ程でも無くなるだろう。

 幸いな事に、こちらが有利だった事もあって、こちら側の攻撃も殺意に満ちた物では無く、主に一纏めに追いやってじわじわと削る形で戦っていたから、相手側の死者が思った以上に少なかったのだ。

 怪我の殆どが遠距離攻撃に依るもので、急所に当たらない限り即死は中々ない。前列同士ぶつかり合った人の中には亡くなってる人もいるが、辛うじて息のある人は楓子が一通り何とかしてくれている。

 開戦して二時間しない内に降伏した事もあり、昼には一通りの処置が終わって捕虜の監視を交代制にしての食事が始まった。

 流石に捕虜に与える分の余裕が無いので昼は抜いてもらうが、シエルがオイレンブルクの中を何とかしてくれるので夜はメシにありつけるんじゃないだろうか。

 そう考えていてふと思ったのが、実はこの敵兵の面倒をこちらで見させる事で、動きを鈍らせるつもりだったのではと言う事だ。

 恐らく無勢相手には降伏させるだろう、それによって王国兵の動きが鈍るであろう、その隙に脱出を。

 まさかなと思って魔力探知で関所の辺りやバウワーの街、南の古城と探るが反応は無い。――いや狸親父では無く主力本隊っぽい強い魔力の反応はあった。

 やはり城に。

 遠いので細かな事はわからないが、探知できると言う事は地下に居ない。恐らく防衛に配備されているのだろう。


「うーん」

「トモヤ、どうしたの」

「古城に兵がいる。多分狸親父もそこに隠れてるだろうな、とは思ってたけど逆にあからさますぎると言うか何と言うか」

「トモヤの感知の精度の高さを知ってるのは一部だけ」


 それもそうか。

 普通なら古城に兵が配置されていたとしても、近くに行かなければ感知のエリアに入らない。

 それこそ向こうから見下ろして見える位の位置に来てようやくわかる程度だ。


「……どうすっかなぁ」

「とりあえずシエルを援護する」

「悪いけどシャル、透明化とフライで上空から援護してあげて。こっちは穴を塞がなきゃならないから」

「ん」


 さて、楓子はお疲れだろうけどもうひと踏ん張りしてもらわないと。


「千絵、楓子、埋めようか」

「それだけ聞くと不穏よね」

「誰を埋めるんだろうって?」

「俺としては狸親父とテオを埋めたい」


 俺の中での二大元凶だ。


「で、まず外に出た土を押し込めばいいのよね」

「ああ、風魔法だと散っちゃいそうだから土魔法か何かでチリトリみたいにざーっと」

「つまり新魔法を作れって言ってるわけね?」


 そんなつもりは無いが、だが考えてみればそう言う事か。

 チリトリみたいな働きをする魔法なんて体系化されてると思えない。


「まぁいいわ。楓子、イメージだけで何とかできそう?」

「私は物理系のシールドで出来るから」

「ああ、そうね。その手もあるわね。私がやったら多分勢いよく吹っ飛ばすけど」


 そう二人で話しながらフライで飛び上がり、周囲の土を見えない何かでザーッと穴に落としていく。

 それを見ていた敵味方問わず兵士達は、茫然としていた。

 地表に出ていた土は、高さにして三メートルから五メートル、幅は十メートル程はある。

 それらを全て落とせば穴が埋まるかと言うとそうでも無く、超極太穿孔魔法で一気に開けたせいで地下が圧縮されてしまった分もあるようで、溝の周りの土もかき集めてようやく穴にこんもりと土が盛られた。


「これを潰すくらいなら私のシールドが一番よね」


 ヤバい。


「ツヴァイ、全軍に防御態勢」

「は?」


 疑問符を浮かべながらもツヴァイが声を上げ、俺と同じく慌てた楓子が広域にシールドを張っていた。

 その瞬間、『ズドンッ』と言う音と地響きが襲ってきた。

 幸いにも土が吹っ飛んでくると言った事は無かったが突風はあり、穴だった場所は真っ平になっていた。

 全く、魔法は使い方次第だとは思うけど、千絵のそれは見えない壁を地面に叩きつけただけだ。

 そんな無茶苦茶な使い方があってたまるか。


「よし、門を開けて捕虜を街の中に連れて行こう。もう殆ど終わってるはずだから、中央の広場にでも並べておけばいいと思う」

「何と言うかな、トモヤ。お前の有する戦力がまともに戦争に使われたら、この世界は終わるかもしれん」

「爺様にも言われた。勇者が戦争したら各国がビビるって」

「ああ。戦争は俺達に任せて、トモヤ達は他の事をしていてくれた方がいいな……」


 楽出来るはずなのに、ツヴァイとしては俺達の影響力をやたら重く見てるらしい。

 まぁでも仮に千絵一人だけだとしても、一日一発大都市を消滅させられるだけの極大サンバーストが使えてしまうのだから、最早戦争にすらならないのだろう。




 オイレンブルクの街の中は、入り口の門の壊され方が異様なだけで特におかしな点は無かった。

 あるとすれば、建物の壁に何か重たい物が勢いよくぶつかったような跡があちこちあるのと、場合によってはフルプレートの兵士が転がってるくらいだろう。

 そのフルプレートの兵士の上半身の鎧のひしゃげ具合が酷く、ぱっと見トラックにでも轢かれたのかと思う位だ。

 いや轢かれたのはむしろ俺達だったか。

 ぞろぞろと列を成して警戒しつつ中心地へ進む。

 街の人達は一様に家の中に籠っているらしい。

 中心に近づけば近づくだけシエルの戦闘の痕跡が増えるが、被害に遭った兵の姿が殆ど見えないので追撃に出たか逃げたかしたのだろう。

 倒れている兵士に関しては単純に気絶してるだけっぽいので、楓子も特に癒さなくて大丈夫と判断して転がしたままだ。

 これは後続の兵が捕縛してくれる手筈になっている。


 中央広場は嵐の後の様相を呈していた。

 恐らくシエルが侵入した事は伝令され、道中女一人くらいと向かって行った兵士は一発で吹っ飛び、開けた広場で結構な人数が待ち構えて一気に攻撃するもシエルには通じずに軒並み倒されてしまったのだろう。

 フルプレートの兵士の転がる数も多いが、後衛部隊で軽装の弓やウィザードも泡を吹いて転がっていた。

 流石に内臓にダメージが有りそうだと楓子が探り、ヒールを施していく。

 可哀そうなのは俺達とあまり歳の変わらない女の子ですら、等しくシエルの一撃を受けている事だ。

 いや、下手に手加減して動けるようだと追撃の必要が出て余計にダメージを食らうので、一撃で意識を刈り取ってやった方がいいのかもしれないけど。


「智也君、目がエッチ」

「そんな冤罪だ」


 ちょっと胸が大きくて吹っ飛ばされたせいで服がはだけちゃってる子がいただけだ。ん、有罪だったかもしれない。

 さて、魔力探知しつつ進んではいるが、転がってる人と動ける人の区別がつかない。

 その辺りは後続のツヴァイの部下が索敵しながら動いてくれるから任せる。

 まず捕虜は広場に集めておき、兵の一部に監視させた。

 この街も大穴のせいで食料に不安があったと思うが、とりあえず東側は埋めたので数日我慢すれば入荷するだろう。

 少しすれば全面的に流通が回復するし、問題は無いと思う。

 後は王国に対してどの程度反感を持ってるかで今後のめんどくささが変わるのだけど、とりあえずは志願兵の捕虜は今後シャルの転移門でバウワーの街まで送り、主力の一部もある程度様子を見て解放していいと思っている。

 それも狸親父を捕縛してからだけど。

 こうなっては王国に歯向かってもどうしようもないのはわかってるだろうし、何より千絵と楓子と言う勇者二人の存在感を目の当たりにし、五十メートルを走り幅跳びした挙句に門を破壊すると言う砲弾を演じたシエルもその目にしてるはずだ。

 そんな王国の真なる主力を見て、これ以上何かする気が起きる奴がいたらむしろスカウトしたい。


 オイレンブルク邸への道は広場と同じくらい酷い有様で、あちこちに兵が倒れていた。

 ようやく前の方で兵が吹っ飛ぶ光景が見え、ようやく追いついたかと足を速める。


「おーいシエル、大丈夫か」

「大丈夫だよー」


 そう言いながら剣の腹でフルスウィングだ。

 フルプレートの腹を凹まされながら三十メートルは吹っ飛んで壁にぶつかっていた。

 こんなの交通事故の現場と変わらないんじゃないだろうか。

 この世界の兵士が頑丈で本当に良かった。


「シャルもありがとうな」

「ん、シエル余裕すぎ。私の出番無い」


 透明化を解除して降り立ったシャルと、ひとしきり暴れてスッキリしたらしいシエル。

 そして千絵と楓子を連れて俺はオイレンブルク邸へ入った。

 ツヴァイ達には道中の兵士の捕縛や広場への移動をしてもらっている。

 この屋敷もバウワー邸みたいに燃やされたら勿体ない、と言うのは冗談だが、バウワーから俺の事を聞いているであろうオイレンブルクの当主と少し話す必要があると思ったからだ。

 屋敷の中にも兵はいたが、すぐに無力化される。

 オイレンブルクの当主、デニスは執務室にいるようだった。

 屋敷に入ってすぐの時点で兵は全員向かってきて全員倒してしまったので、後は散歩と変わらない。


「失礼します」

「来たか」


 その顔からは焦りや不安は感じない。


「どうも、初めまして」

「お前がアルフレートの言っていたトモヤか。しかし酷いのではないか? 我が兵が何をしたと言うのだ」

「私を襲ってきたよー」

「それは敵意を持って侵入してきたからだろう」

「まぁデニスさん。バウワーと密約を交わしていた時点で一蓮托生と言う奴です。バウワーの狸親父にも言われたでしょう?」

「……」


 バレない程度に辺りを見回していた。

 この世界に盗聴があるのかはわからないが、誰かの目と耳があると勘づいたのだろう。


「ん、私が透明化で聞いてた。言い逃れは出来ない」

「で、私をどうするつもりだ」

「とりあえず捕縛させてもらいます。一応処刑と言う話になっていますが」

「全く、私は巻き込まれただけだぞ? 何故そんな目に遭わねばならぬ」

「正直その件については自分も思う所があります」

「トモヤ、甘い考えはダメ。バウワー家もオイレンブルク家も大昔から反王国。生かしておいても王国にとって利は無い」

「エルフの子よ。そんなに人間がどうでもいいか」

「私は人間を大事に思っている。それ以上にトモヤが大事。トモヤに不利益なら排除する」


 まさか子供の姿のエルフに、そんな風に言われると思っていなかったらしい。

 目を丸くした後で『クックックッ……』と小さく笑った。


「ああ、確かに私は王国が嫌いだ。生きていれば一矢報いてやろうと企むだろう」

「俺にはそれがわからない。遥か昔の戦争のはずなのに、何でそこまで恨みが続くのか」

「既にその頃の恨みなど無いさ。この西の国は立地が悪い。全て王国を経由しなければ届かぬし、我が領地は最も西にあって入って来る荷物も極端に少ない。だが王国はどうだ。エルフの治世や聖地がある事で各国から優遇され、しかしそれに胡坐をかいて碌に発展もせず土地を無駄にしている。私がそんな王国を好きに出来たら、国を一変させることが出来る。だと言うのにだ、私はこの地の領主でしかない。無駄を放置する王国が憎くて仕方ないのだ」


 怒りからか勢いで話しているが、言ってる事はわかる。

 この人の資質がどうだかは知らないけど、少なくともお義父さんよりかはまともに国を治めるんじゃないだろうか。

 しかし、それに対してシャルが反論、と言うよりか文句のように言い返した。


「王国はここよりも豊かな土地では無い。西の国は中央側を走る中サイズの地脈と、南の山脈を走る太い地脈の二つによって土地が豊か。同じことをやっても収穫量はここ程期待できない。ただ環境はここよりいいから質はいい」

「だが広い土地がある」

「土地があっても開墾する人手と相応の報酬と管理できる人がいない」

「だから無駄だと言うのだ」


 シャルと言い合ってるが、これは収拾がつかないぞ。

 だが開墾に関してはやっただけ与えてやってもいいんじゃと思わなくもない。

 その後で代表者を選出して町長にし、王国のバックアップで町を作ってしまえばいいのだ。

 一大穀倉地帯計画として立案してみるのも手だな。

 何かしら思い切って動かないと、王国の発展なんて難しいと思う。


「デニスさん。何をどう言おうと、貴方がどうにか出来る事ではありません。あなたはどうにかしたかったら、早々にバウワーを倒して西の国を一つに纏めてしまえばよかった。あなたなら裏をかいてバウワーを潰すくらい出来たはずだ」

「……出来ただろうな。だが、この国は管理を任せられるだけの人材が居らん。国民性なのか野望を抱きがちなのだ。ジリ貧な国だからこそ王国を羨む気持ちも無くならない。結局そうやって長い年月を掛けて衰退し、いずれ滅ぶのだろう。この国を得ても王国にとって何の利益も無いが、それでも私やアルフレートを倒すと言うのか」

「利益は作ります。何とかして山脈に道を通すので、多少は流通量も上がるでしょう。北の山脈にトンネルでも掘って繋げる事も考えにはありますが、その準備には年単位で時間が掛かってしまうので、まぁいずれの話しにはなりますが」

「……この国を変えられると言うのか」

「さぁ、やってみないと何とも」


 俺だってインフラ整備だけ考えて、後は前教皇にほん投げるつもりだ。


「では捕縛させていただきます。シエル」


 俺がやったら、シールドで守られてるとは言え逆に捕縛される可能性がある。

 なのでシエルにお願いして両手足を縛って貰った。


「じゃあシャル、お願い」

「ん」


 転移門の魔法を開き、歪みにデニスを押し込んで一回向こうに消えたシャルは、またすぐに戻って来た。


「牢に入れてきた。これでオイレンブルクはおっけー」

「……結局は王国への恨みと言うより、妬みなのか?」

「恐らく。本人も言ってたようにこの国はジリ貧。発展性が無い。産業も無い。停戦中の国を経由しないと物も届かない。こんな状況で千五百年も持っていた方が奇跡だと思う」

「なんか、処刑するほど悪い人にも思えないな、って思っちゃうんだよなぁ」

「それは兵の封じ込めに成功したから。オイレンブルクの兵が出てたらこちら側の被害もある程度は出たはず」


 確かにそうなったら、デニス憎しと思ったかもしれない。

 今回はバウワーとの共謀罪と兵を準備してた事で捕縛されたと言う形で処理されるのだろうか。


「領主として責任を取らせるのは当然」

「……まぁ、そう言う事で納得するように頑張る」

「ん。後はあの豚」

「それに関しては考えがある」


 本当に古城に隠れてるのかは現時点ではわからないが、難攻不落らしい古城も俺達の手に掛かれば何てことないはずだ。

 オイレンブルクの街には領主拿捕と王国による占領を宣言した。

 その頃伝令が転移門の魔法でやってきて、ノイベルトが王国に亡命したと知らせてきた。

 下るにしてもどう言う形なのか分からなかったが、恐らくピレネーを伝手に亡命という形で家をそのまま守るつもりなのだろう。

 単純に王国の軍勢に下ったとなると、共同戦線であっても敵対国である王国に降参したと取られかねない。

 さて、狸親父も問題だが、ノイベルトの領主もどうにかしなければ。




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