大失敗
とにかくスピード勝負と言う事で、本隊が先に出発する事になってしまった
元々エリート揃いの近衛兵団と、一般兵団と一緒にあちこち行く事があるせいで行軍には慣れている魔法師団。
各公爵家お抱えのエリート兵も移動を始め、ピレネー領の真ん中にある町に一旦集合し、通常よりペースを速めて関所まで向かうと言う。
幸いにもそう言う形のおかげでツヴァイが指揮官に決まり、俺はいくつかの注意をしておいた。
まず当然知っている事だが、コボルトの集落が西の山脈入り口付近にあるので手を出さない事。
小屋なんかが見えても絶対に近寄らない事。
何かあったら命の保証はしない事。
これらはツヴァイ達王都の兵なら知っている事だが、各公爵家の私兵は噂程度にしか知らないはずだ。
そして、関所では西の国側に何か怪しい動きがあったら、本家から指示が出ていたとしても突入は絶対にしない事。
それらを言った後で、ざっと説明だけしておいた。
コボルトの件は以前の模擬戦でコボルトに対して理解を深めたツヴァイなので問題は無いし、関所の件にしてもノイベルトとバウワーが先に戦闘してる可能性が高い事を告げ、下手をすれば既にバウワーが勝って関所を封鎖している可能性があり、それを突破しようとしたら侵略行為になってしまうとゆっくり丁寧に説明した。
元々停戦状態なので戦争中の相手国ではあるが、その辺り形骸化してるのは誰でもわかっている。
向こうが謝罪と賠償をとか言ってる時点で、相手に戦える力なんて無く、事実上戦争が終結してしまっている事もみんなハッキリ口に出さないだけでわかっているのだ。
だからこそ、侵略行為になってしまうと言えばブレーキになる。
どうせ元から侵略する気で居たとしても、表向きノイベルトに助力を請われて招かれたと言う形だから気軽に越境できるのだ。
関所のノイベルト領側にはノイベルトの人間がいるので、恐らく話は通っているだろうし。
ツヴァイを見送った後は、シャルの転移門で俺達はバウワー領とノイベルト領の中間地点上空に来ていた。
ここは吹けば飛ぶ小領地なのだが、それでも存続しているのは大領地の緩衝材としての役割があるからだ。
既にバウワーは兵を動かして小領地を超え始めていて、あと少しでノイベルト領に入るだろう。
そしてノイベルトの兵は最後の最後でようやくバウワーの動きが本当であると知り、慌てて領の境目を目指して兵を進めていた。
これだとノイベルト領に入って半日くらいの所で開戦するだろう。
これはこれで意外と間に合った感がある。
と言うのも、既に布陣されている所に突っ込むのは攻め側の消耗戦になりがちだからだ。
多重シールドで攻撃を受けてじわじわ前衛に削られて行くのは、攻め側としてはやりにくくて辛いはずだ。
「智也、どうするの?」
「まだ静観」
布陣しきっていない所に攻め込めれば、散り散りになった相手を蹂躙して進む事が出来る。
そうならないようにある程度まとまって動かなければならないのだが、とにかく急いでバウワーを手前で止めなければと焦った結果なのだろう。
ノイベルトの兵は少し手前で止まるべきだった。
先頭集団が突っ走って簡単に屠られていた。
流石に馬鹿では無いのか、数人がそれで散った所で手前で停止の合図が出て集合し、俺達が来てから丁度半日くらいで開戦した。
「楓子、ノイベルトの後方に集中豪雨」
「いいけどどうして?」
「畑なんだ。水はけはいいけど、そこを進もうとすれば足を取られる。今回はバウワーの方が勢いがあるから、すぐに一時撤退で山脈側に引くはずだから、それの妨害をする」
「わかったよ」
後方と言っても畑まで数キロある。
天候操作はピンポイントで何か出来る程精密な物では無いので、むしろそれくらい距離があってくれた方がいい。
ここは北半球なので雨雲は東へ流れていくから、多少ズレても結果として畑を水浸しに出来ればいいのだ。
「千絵はバウワー前衛に補助魔法」
「あんまり得意じゃないわよ」
「少し効果がある程度でいいから、かなり抑えてやっていいよ」
「むずかしい事言うわね」
出力が化け物な千絵に注文していい事ではかったが、何かでバウワーが壊滅しかけたら楓子の範囲型グレーターヒールで癒してもらわなければならない。
その為には細かな援護は千絵にお願いして、楓子には常に動けるようにしておいてもらいたいのだ。
「シャルはバウワー邸に行って、こっちとの繋がりを示唆する資料が何かないか見て来て。壁に貼ってあったメモは焼いて、それ以外に計画書みたいなのがあれば調べておいて欲しい。あの狸親父、意外と頭回るっぽいから保険を掛けてると思う」
「ん、わかったけど丸ごと焼いた方が早くない?」
「それはそれで不自然だ」
完全アウトは俺達が訪問した事を誰かがリークしている事だが、今の所その手の話は聞かないので大丈夫。
次に壁に張られたメモでのやり取りだが、これはシャルがどの程度やり取りしたか覚えているから、変な所に隠して無ければ簡単に処理が出来る。
残るはバウワー側が独自に記録等を残している場合で、屋敷に訪れた人を記録している事は十分あり得るし、狸親父が日記等で記録を付けている場合もあり、それに俺の名前が入ってる事も考えられる。
そう、証拠隠滅に走ってると言う事は、バウワーも恐らく生き残れないだろうと見切りを付けているのだ。
幸いにも戦闘はノイベルク側が思った以上にぼんやりしてて有利な形で始まったが、向こうは山脈まで引いて増援が来るまで耐えればいいのだ。
それを妨害してバウワー有利に進めてはいるが、ノイベルトを倒しきったとしてもオイレンブルクが控えている。
シャルにオイレンブルクも見に行って貰ったが、やはり聞きつけて兵の準備をしていたらしい。
だが、思った以上に早いタイミングでバウワーが兵を出したので、オイレンブルクはまだバウワー領に向けて出発していないようなのだ。
「シエルは直接戦闘も無いし俺と大人しく見ててね」
「うずうずするー」
帰りにコボルトの集落にでも行って模擬戦でもさせるか。
「楓子は天候操作が終わったら、バウワーの前衛に薄っすらでいいからシールド張って」
「うんー」
楓子の薄っすらシールドは、それだけで並みの硬さじゃない。
振り下ろされた大剣の直撃すら耐える。
これで一気にバウワー側が有利となり、押して押して土砂降りの中で乱戦になった。
先に泥にハマったノイベルトが一方的にやられたが、バウワーが勢いそのままに突っ込むので結果的に双方泥まみれの戦闘になってしまったのだ。
だがそれでいい。
あくまで局地的集中豪雨は自然現象で、最初はノイベルト不利だったが今は双方同じ状況なので関与は疑われない。
戦いは暗くなるまで続き、日が落ちる寸前に音響魔法で撤退の合図が出た。
潰しきれなかった。
ここでノイベルの兵の大半を倒せなければ、夜の内に体制を整えてしまうだろう。
ノイベルトとしては、ノイベルト邸のある街に攻め込まれるわけには行かないので、上手く山脈に誘導する必要がある。
バウワー側は見た感じとにかくノイベルトを倒せと言った感じだ。
確かに今回に於いてはそれが正しい。
仮に街とノイベルト邸を制圧しても、ノイベルトの人間が生き延びて王国側と合流したら終わりだ。
「そう言えば私達がしたまともな戦闘って、オークの時だけかなー?」
「シエルはそうだな。俺達はコボルトの時にやったけど」
あの時のシエルは何とも楽しそうだったと千絵が言っていた。
どうもオークを誘導するはずが行き止まりにハマり、脱出を図ったものの四方八方を囲まれ、ほぼ全部倒して帰って来たと言うのだ。
もしあの時魔王がシエルの方に行っていたとしたら、果たしてどうなったのだろう。
「トモヤ、あの豚いない」
「は?」
シャルが戻って来たかと思えば、バウワー邸に狸親父がいないと言い出した。
「おかげで証拠品の隠滅は出来た。意外と細かくまとめて片づけられていたから、それっぽいのは簡単に見つかったし他にも二重底の下にあった計画書とかメモとか一通り見つけられたと思う」
「……それは嬉しい報告なんだけど、意外と細かくまとめてあった? 片付いてた?」
「そう」
「……あの狸親父、本当に狸かもな……」
仕事が出来る人間と出来ない人間は片付けで大体わかると思っている。
片づけられない人間が効率的に仕事が出来るとは思えないし、逆に細かく整理している人は必要があって整理しているので、必然的に最低限人並み以上に仕事が出来るだろうと予想出来るからだ。
って事は恐らく本人が他にも重要書類となりえる物を持ち歩いていても不思議は無い。
「ちょっと探してみるか」
魔力は覚えている。
バウワー邸付近からずーっと範囲を広げて、広げて、広げて、それっぽいのを見つけた。
オイレンブルクの中心地だ。
「オイレンブルクにいるぞ」
「……やられた。同じことをされた」
多分だが、オイレンブルクと手を組みに行ったのだろう。
もしくは水面下で手を組んでいたのかもしれない。
目的は対王国兵だろうか。
バウワーとオイレンブルクが共謀したら王国兵も分が悪くなる。
この場合オイレンブルクに何の得があるのかだが、ノイベルト領の半分を飛び地として得るだけである程度の利益が確保できるのではないだろうか。
薬になると言う怪しいキノコがあるからだ。
少し調べて見たが、どうも西の国でもノイベルトに多く発生するらしいのだ。
王国向けに生産数を増やして売れば外貨がたんまり獲得できるし、それによって馬車の手間賃は増えるが山越えルートでも行商人が薬を仕入れに来て景気が良くなる。
「つまりバウワーは俺達と手を切ってオイレンブルクと共謀するって事だな」
「ん、それはわからない。こちらとも手を切るつもりが無いかもしれない」
「状況が悪くなればこっちは手を引かざるを得ないんだけどな」
「ノイベルトが無くなれば王国との伝手も無くなる。新たな伝手に選ばれたかも」
「……今後もあの狸親父と付き合うのは御免だなぁ」
どうするか。
西の国が西の国で勝手にやってくれるなら、俺としては万々歳だ。
ただしこの場合、ノイベルトは消滅する。
どんなに急いでも王国側の主力が来るまで一週間弱はかかるのだ。
今日の感じで戦闘が続けば、王国側と合流する前に――。
「ノイベルトが一時領地を放棄して王国側に逃げた場合、どうなる?」
「合流してやり返しに行く」
だが流石に領民をほったらかしにする事は考えにくい。
いくら国を売るとは言え、自分の領民まで敵に回したら今後の統治に支障しかないからだ。
だとしたら、やっぱり順当に山脈へ向けて進むのが有力だ。
一目散に関所まで逃げて布陣してもいいが、それだと関所到着が早すぎて王国の本隊と合流する前に壊滅する恐れがある。
見た感じノイベルトの全兵力がいると思うので、本気で時間稼ぎをするつもりだと思うのだ。
「でも敗戦濃厚なら大人しく関所を超えると思う。どうせ領民には殆ど手出しされない。今後の統治と収穫に影響が出るから」
「最悪ノイベルトの当主さえ残っていれば、領地奪還を依頼すると同時に王国に下ればいいのか」
「この戦い、多分王国対バウワーとオイレンブルク連合軍って形になる」
「面倒な事になったな……」
あの狸親父に引っ掻き回された挙句、オイレンブルクと組む事で反王国側が結託してしまった。
そしてノイベルトは王国に下って、王国はノイベルトと共に戦う。
となれば普通に王国と西の国との戦争だ。
最早止められない。
どこで歯車が狂ったのかと言えば、やはり狸親父が王国に来た所だろう。
王国の人間に使われるくらいなら、反王国のオイレンブルクと組んで順当に戦おうと思ったのだろうか。
これならテオを手を組んだ方が、まだわかりやすい未来だった。
戦いが避けられないのであれば、今からノイベルトに付いてバウワーの兵士を一掃する手もある。
そうすれば王国の兵が来るまでの時間稼ぎが出来るからだが、先が見通せないので下手に動けない。
バウワーとオイレンブルクの所に乗り込んで真意を確かめに行くのは、自分の弱みを晒すだけになりそうなのでやりたくない。
何で裏切ったとか言ってしまったら、こっちが困っているのを相手に教えるのと変わらないからだ。
なので、もうあの狸親父は切り捨てよう。
自分達にとって何が一番いい結果だろう。
元々、この西の国を奪うのであれば教皇が統治するのが一番いいと思っていた。
ならばそれで行くしかないのか。
これは参ったぞ。
「帰ろう」
「ん、どうして」
「ルーベルトの爺様に白状して、バウワーとオイレンブルクが手を組んだ事を報告する。で、どうするか相談する」
「ん……確かに無難。これ以上独断で動いたら大事になる」
既に大事ではあるが、元々は西の国は西の国で片付けて欲しいからバウワーに情報をリークしたのだ。
その後はそれぞれの思惑に引っ掻き回されてしまったが、一番無難な方法で片を付けて終わりにしたい。
にしても、オイレンブルクと繋がっていたと言う事は、恐らく奴が王城まで来たのは元々俺を引きずり込んで利用する為だろう。
援護をさせて引くに引けない状況まで持って行き、オイレンブルクと繋がっている事で俺が離脱しようとしても隠れて動いていた事が弱味となり、結果奴等側の協力者として西の国の戦いが終わる。
西の国はバウワーとオイレンブルクとその他の小領地で形成されるが、以前と違うのはノイベルトがいない事よりも王国の王室側の人間との繋がりを持てた事で、そこから色々と画策する事が可能だ。
多分、俺が話を持ち込んだ頃には水面下でオイレンブルクとやり取りがあったはずだ。
王城に来たのは、それに気付いているかの調査する一面もあったかもしれない。
何にしても、俺はやられたのだ。
俺達はすぐさま王都にあるハイリッヒの別邸に行き、ルーベルトの爺様に面会を申し込む。
すぐに出て来た爺様だが、恐らくそろそろ向こうでは開戦してる事も予想しているだろうし、こうして俺達が来た事で何かあったのだろうなと感づいたようだった。
「シェリール王女まで連れて、家族揃って戦争見学かね」
「謝らなければならない事があります」
「ほう」
突然切り出したが、特に驚きもせずにそう言って何やら考え込む。
多分、俺がどんな事を裏でやっているのか予想を立てているのだろうけど、この顔はあまりにも多すぎて放棄した顔だ。
「バウワーと繋がってました」
「ふむ……。理由は?」
「俺からしたら、西の国の問題は西の国で片付けて欲しかったんです。なのでバウワーに侵攻の情報を与え、ノイベルトに攻め入って王国の兵が到着するよりも前に決着をつけて欲しかったんです」
「なるほどな。ハナから関与しないと言っていたのは、既に関与していたからだったのだな」
「正確にはバウワーと繋がっていたから関与しないと言ったのではなく、ノイベルトの思う壺にハマりたくなくて関与しないと言ったのですが、結果としてバウワーを使って打開しようとした為に、こう言う事になってしまいました」
滅茶苦茶怒られるかと思ったら、冷静に話を聞いてくれた。
「だが、それを言ってくるからには何かあったのだろう」
「バウワーがオイレンブルクと繋がっていました。このままではノイベルトがこちらの兵と合流したとしても、オイレンブルクの兵にやられます」
「それは分が悪いな」
「お恥ずかしい話、まんまと手玉に取られていいように使われた形になってしまいました」
「すぐさま私に報告しに来たのは、それだけ分が悪いからか?」
「ひっくり返す事は十分可能だと思いますが、隠れて動いていた事自体が自分の弱味になってしまうので、いっその事話して判断を仰ごうと思いまして」
「うむ。それでいい。実際の所、私はトモヤが静かにしていると思ってはいなかった。何かしら行動はしているのだろうとな」
これまでの事を考えれば、それくらい簡単に予想されても仕方ないと思う。
「で、どうするつもりだ」
「とりあずオイレンブルクの邸宅付近に兵が集まっているようだったので、出て来れないようにします。そしてバウワーの兵を追い返し、王国の兵とノイベルトを合流させてバウワーを叩きます」
「出て来れないようにとは、実際どうするつもりだ」
「あの街は戦闘に備えて外周にしっかりとした壁を作っているようです。王都と同じように。ですので出入口を穿孔魔法で大穴を開けて、フライでも使わない限り通れないようにします。壁の下から掘って出て来れないように外周もざっと掘っておくつもりです」
「兵全体が壁を乗り越えて外に出るには落下等のリスクもあるし何より時間が掛かる。となれば穴をどうにかしようとする、か」
「フライで毎日少人数ずつ飛ばした所で、兵全体を移動させるには二週間はかかるでしょう。バウワー側に転移門の魔法に特化したアークウィザードがいますが、それでも兵全体を移動させるなんて無茶が出来るとは思えません。何にしても一気に移動させるには千絵や楓子並の魔力が必要になるでしょうし、少しずつ移動させるか派兵を諦めるかのどちらかになると思います」
「ふむ。バウワーの兵を追い返すと言うのは?」
「シエルに三千人抜きをしてもらいます」
「……普通なら冗談はよせと笑う所なのだろうが、実際出来るのであろうな……」
「千絵や楓子では力があり過ぎますが、シエルなら片っ端から引っぱたいて昏倒させるだけなので」
「ちなみにだが、やはりまともに戦闘をする気は無いのだろう?」
「今更何をと言われるかもしれませんが、それに関しては譲る気はありません」
「いや、むしろ貫き通して欲しい。彼女達勇者の力は強すぎるのだ。その力で人を屠ったとなれば、各国が王国の動向にビクビクしながら過ごさねばならなくなる」
この人は本当に王国の良心だと思う。
その力を使ってこの地を統一しようと言い出したって、立場上全く問題は無いのだ。
王国や他国、貴族や一般の民衆の事まで気にかけ、考え、正しい道へ進ませてくれる。
この人が現役最高齢として残っていてくれて本当によかった。
王国内では同一爵位の場合、年功序列で発言力が決まる。
議会で議長を務めるだけあって、この人がこの王国で最も発言力がある人なのだ。
その人が真っ当である事が、どれだけ尊い事か。
「ふむ、ではバウワーの兵はそれでいいとしよう。こちらの全戦力とノイベルトが合流するまでにまだ時間があるが――」
「運びます」
「いいのですかな?」
そう言って隣でシェリールの姿になっているシャルを見た。
「ええ、夫の不始末ですので」
不始末と言われてしまった。
「攻めてやりなさんな。トモヤは常にあなた達を一番に考えているのだから」
「わかっています」
そう言って俺の腕に抱きついてくる。
周りの視線が痛いです。
「運び終わるのは大体いつ頃ですかな」
「六日もあれば終わると思います」
「ならば時間の問題はクリアですな」
よし、とこっちを見た。
「ではそれで行こう。それとだトモヤ、バウワーとオイレンブルクの当主は見つけ次第捕縛してほしい。奴等は立場上死刑になって貰わねば困るのだ」
「死刑ですか」
「全ての責任を被ってな。騒いで下手な事を言っても大丈夫なように、人気の無い牢に入れておいて欲しい」
「わかりました」
今回のバウワーの狸親父にはまんまとやられた。
駄目な当主と言うレッテルが張られていた癖に、実はこいつ出来る奴なんじゃ、と思いなおした時点で既に手遅れだった。
いや、俺が声を掛けた時点で既にこうなる未来は決まっていたのだろう。
幸いにも俺のちっぽけなプライドが傷ついた事と、とルーベルトの爺様からの評価が落ちた程度で済んだが、もっと対応を先延ばしにしていたら王国の兵に被害が及んでいたかもしれない。
さて、どうしてくれようか。
狸親父が俺の行動を読んでいるなら、何かしらの対応がされると思って行動しているはずだ。
だが、俺が気付いたのは向こうの想定より早かったはずなのだ。
開戦直後に家探しなんてされてると思わないだろうし、いないからと魔力捜査で見つけるなんて思ってもみないはずだ。
少なくとも俺の能力は周りに霞んでしまっていて、遊び人と主夫以外にはまともに伝わっていない。
王国内においてもそれは言える。
であれば、ここから狸親父に一泡吹かせる事が出来るのではないだろうか。
――と考えて、やっぱり止めた。
止めたと言うか、チャンスがあれば考えるが、今は余計な事を考えずに仕事をするべきなのだ。
余計な事をして全てがパーになったら意味が無い。
「今回の事は、また後日何らかの形で」
「うーむ……。どうせならマリーネを貰ってくれれば助かるんだがな……」
「それは当人同士の問題ですので」
前にもそんな事を言われたが、俺はそう言われる程度にルーベルトの爺様に気に入られているらしい。
だからこそ今回の失態が痛い、と言うか辛い。
そして悔しい。
だからと言って目的を見誤ってはいけない。
「では行ってきます」
「皆も無理はせぬようにな」
俺達はその場でシェリールの転移門の魔法で西の国へ戻った。
さて、仕事をしよう。
この間、後書きでブックマークや評価や感想について書かせていただいた所、あれからボチボチ評価を頂けるようになりました。
ありがとうございます。
他の方の作品を見ていても、後書きにブックマークと評価お願いしますなんて書いてありますが、個人的にそう言うお願いってどうも気が引けると言うか何と言うかで書いてきませんでした。
でもやっぱ書いた方が結果に表れるんだよなぁ。




