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オヤジ  作者: 矢島大佐
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 タンクローリーの大爆発が、警察の建物の中に飛び火して、あっちこっちを火の海にしちまったから、てめぇの髪の毛まで燃え上がりそうなほど熱くなって来やがった。

 それでも何とか一階の窓をブチ割って、建物の裏側に逃げ延びた。

 それから武藤と中島が、その辺に居るゾンビ野郎を自動小銃で始末しながら、取りあえず昭和通り側へ移動したのよ。

 中島の奴…、あんまりバラバラと、小銃の弾を無駄遣いするモンで、「無闇に撃つな。単発にしろ」って、武藤にぶん殴られてた。

 何でも、奴等が持ってる小銃は、自衛隊の標準装備「八九式小銃」とか言うらしくて、機関銃みてぇに連射も出来るけど、切り替えレバーで単発とか三連射にもなるらしい。

 威力は有るんだが、的が近いとタマがゾンビ野郎の体を突き抜けちまうから、きっちり狙わねぇと致命傷を与えられねぇんだとよ。

 やっぱ、接近戦には、オレが持ってるみてぇな散弾銃が一番良いらしい。

 そんなこと話しながらも建物の影や、電柱の後ろに注意して、路地を移動した。タンクローリーの火災で、この辺りも真っ黒い煙が立ちこめてたから、噎せ返っちまって生きた心地もしなかったぜ。

 それでもどうにか大通り側へ脱出して、警察署の方を振り返ったら、炎のゾンビ野郎が、炭化したボロボロの服や皮膚を引き摺りながら蠢くように歩いてやがった。

 奴ら、熱で目蓋の皮膚が膨れあがったり、眼球が破裂したりして、目が見えねぇらしが、それでも気配を察して、夢遊病者のように動いてやがる。

 そんなゾンビ野郎から逃げるように、交差点の中央まで移動すると、向こうからオレのダンプが曲がってきた。

 …どうやら姉ちゃん達も無事らしい。

 急ブレーキ掛けながら、目の前に止まったダンプの助手席にタマ子ばぁさんを押し込んで、キャビンの方は定員になっちまったから、他の奴らはオレと一緒にダンプの荷台に直行さ。

 運転手役の姉ちゃんは、こっちがとっとと荷台に乗っちまったんで不服そうだったけど、オレの合図で渋々ダンプを発車させた。

 …けどよ。ダンプの荷台ってのは、人が乗るモンじゃ無ぇな。

 ケツは痛くなるし、掴まるところも有りゃしねぇから、安心して乗っちゃいられねぇんだが、この際、背に腹は替えられねぇ。

 そんなオレ達四人は荷台の枠に必死に掴まりながら、今後のことを話し合ったのよ…。

 自衛隊の奴らは、何とか本隊に合流したいらしいが、本部からの無線通信は途切れたままで、どうしたらいいのか判からねぇ。

 それに補給が無ぇから、この先どれだけ死人の街で生きていけるか、見当もつかねぇらしい。

 小松ってお巡りは、「東京はお終いだから、遠くへ逃げるんだ」って言い張ってる。

 オレは「学者先生の救出が最優先だぜ」って言ったんだが、「人の命を助けるより、まずは自分達が助かる方が先だ」ってお巡りが怒鳴りやがる。

 取りあえず、みんなの意見が一致したのは、「ダンプよりケツが痛くならねぇ乗り物に乗り換えよう」ってことだけだったなぁ。

 そんな話ししてたから、姉ちゃんに指示するのが遅れちまって、オレ達はダンプに乗ったまんま、国道四号から首都高速上野線に入り込んじまったのよ…。

 嫌な予感がしたんだが、ちょっと進んだら、思った通り高速の上は大渋滞、その上、動かねぇ車の間からフラフラ歩く、不気味な奴らの姿が見え隠れしてる。

 姉ちゃんみてぇな不器用は、前に走らせるだけで精一杯で、バックなんて出来やしねから、にっちもさっちも行かなくなって、オレのダンプは渋滞の最後尾の車に、オカマ掘って立ち往生ってことになっちまった。

 運の悪いことは続くモンで、ドンとぶつかった拍子に、前輪のタイヤがパンクしやがって、車体がガクッと傾いたのよ。

 オレ達も運転席の女子供も、体はどうやら無事らしいが、のんびりタイヤ交換なんかしてる暇は無ぇだろう。

 …奴らの影が近づいてくる。

 オレは自衛隊の武藤と顔を見合わせると、二人して手近の武器を引っ掴んで、ダンプの荷台から飛び降りたのよ。


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