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オヤジ  作者: 矢島大佐
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 タンクローリーで乗り込んだ下谷警察署の中にゃ、四人の奴らが立て籠もってた。

 そいつらは、ゾンビ野郎が、ぶっ倒れてるバリケードの向こう側から慌てて飛び出して来やがった。

 二人は迷彩服着た自衛隊のヘルメット野郎、もう一人は警官らしい制服の中年で、最後の一人はパーマ頭のばぁさんだ…。

 ローリー車の火災で、建物の中にも煙が充満して来たから、オレは「早く逃げた方が良いぜ」って言いながら、散弾銃の弾を込めたのよ。

 そいつ等は、自衛隊の二人が自動小銃、中年の「お巡り」はニューナンブの二丁拳銃、パーマ「ばぁさん」は手ぶらだったが、重そうなリュックサックを背負ってた。

 …階段を下りかけてたオレに向かって、自衛隊の「小太り」の方が声を掛けて来やがった。

 「集めた武器や食料を持って行くから、手分けして運んでくれ」って言ったんだ。

 オレはもう一人の「丸メガネ」の迷彩服から、食料らしいバックパックを受け取って肩に担ぐと、ついでに下で拾った拳銃を「お巡り」に渡してやった。

 撃ち方を知らねぇオレじゃ、こんなの持ってたって宝の持ち腐れだろうから、専門家に渡してやったのよ。

 そいつは、虚ろな目をしながらも、受け取った拳銃を腰のベルトに挟み込んでたんだが、…よく見たら、そのベルトには他に二丁も拳銃を吊してた。

 「丸メガネ」の自衛隊野郎が言うには、警察の装備室や資料保管庫から、使えそうな物を運び上げたらしい。

 ついでにオレも、ヤクザからの押収品らしい日本刀を渡されたから、散弾銃のタマを撃ち尽くしたら、こっちを使うつもりで刀の鞘をしっかり握ったのよ。

 どうやらこのチームのリーダーは迷彩服の「小太り」らしい。

 そいつを先頭に、「オレ」、「お巡り」、「ばぁさん」、「メガネ」の順に撤収を開始した。

 先頭を行く「小太り」の自衛隊野郎が、廻りに注意を払いながら、独り言を言うようにオレに話しかけてきた。

 そいつは武藤、後ろの「丸メガネ」は中島って言う名前で、千葉の習志野から仲間の奴らと来たらしい。

 …武藤の話じゃ、「三日前の夜中に、都内で大規模な暴動が発生した」って連絡で、第一陣の部隊が都内の警備に来たんだと。

 けど、その先遣隊はタダの暴徒鎮圧目的だったから、軽装備しか持ってこなくて、あっという間に消息不明…。

 それで、第二陣の武藤達が武器弾薬持って救出に来たんだが、葛飾の平井大橋辺りでゾンビ野郎の大群に襲われて、部隊はちりぢり、逃げる間に一人減り、二人減りで、小便ちびるような体験をして来たらしい。

 命からがら逃げ延びて、無線で「SOS」を呼びかけたのが、夜勤でここの連絡係をやってた小松ってお巡りの耳に飛び込んできたって訳だ。

 ここまで来たとき、自衛隊の生き残りは、たった三人しか居なくって、そのうちの一人は、途中で食いつかれて手傷を負ってたから、可哀想だが地下の留置場に監禁されているんだと…。

 警察の近所に住んでる一人暮らしの「タマ子ばぁさん」は、戦争でも始まったんじゃねぇかと思って、今朝早く警察に逃げ込んで来たんだが、あいにくみんな出払って、残念ながら残ってたのは無線係のお巡りだけ…。

 武藤って自衛隊野郎は、そんな経緯(いきさつ)をオレに話しながら、階段を上がってきた一匹のゾンビ野郎に小銃弾をお見舞いしてた。

 オレは「頭を狙わなきゃダメだぜ」って教えながら、昨日からのことを話し始めたのよ。

 …そしたら突然、建物の外で、もの凄い爆発が起こりゃがった。どうやらタンクローリーのガソリンが、一片に爆発したらしい。

 建物の窓ガラスやドアが吹き飛んで、そこから熱い炎が、グワッと吹き出して来やがったから、こっちも焦っちまった。

 炎に煽られて、ばぁさんが尻餅つくようにひっくり返ったが、どうやら怪我はしなかったらしい。

 ばぁさんは「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…」って、転がったまま念仏唱えていやがるぜ。そんなばあさんを助け起こしたオレは、お巡りと二人して両脇からばあさんを抱え上げると、燃える廊下を走り抜けたのよ。


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