第一章 十年十色 第二十四話 日替わりの努力
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「待ってよ!仙人さん!」
そう言って走る響を追いかける宏、由奈、まな。
宏は軽装な服装だから走りやすいが由奈とまなは浴衣だから小走りになってしまう。
宏は由奈の家がたまたま近くにあったため、そこに2人を休憩するように伝える。
「場所が分かったら連絡するから。」
そう言って宏は響を追いかける。
2人は由奈の家に入るやいなや軽装な服に着替える。まなには由奈の服を貸し宏からの連絡を待つ。
これから起こることは自分たちにとって大事なことになる。そして1番大事なことを思い出すことになる。
どれぐらい経ったのだろうか。2人は何一つ話そうとせずただただ時間が流れていく。
宏からの連絡が来たのはそんなことを考えてから間もなくだった。
咲瀬病院の駐車場にいる。とだけ書かれたトークを見て2人は直ぐにそこへ向かうのだった。
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由奈とまなは走って咲瀬病院に向かう。由奈の家からはそんなに遠くはなく、着くまでにかかったのはおよそ15分くらいだった。
駐車場に着くと宏がなにか慌てた感じで待っていた。
「お待たせ。響くんと仙人さんは?」
由奈が宏にそう言うと宏は
「それが、病院の中なんだ。僕が着いた時には面会時間が過ぎてたから入れなかったんだ。」
「ってことは2人は病院の中に?」
まながそう質問すると宏は
「多分、そろそろ警備員にバレたかなんかで会えるとは思うんだけどね。」
と答える。
そんな会話をするやいなや不機嫌そうな雰囲気を漂わせる仙人となんとか機嫌を取り戻そうとしている響が歩いていた。
2人の所に向かい、理由を聞くと仙人ただ黙っているだけなので響がため息を1つした後に説明する。
「実は仙人さんの友達がこの病院に眠ってるんです。名前は『蒲池良太郎』。僕らが忘れている小学生時代の友達の1人で仲良しグループのリーダー的存在の男の子。覚えていない?」
覚えていないと苦虫を噛み潰したように答える宏と由奈。小学生時代に仲良しグループみたいなのを作ってよく遊んでいた。その話は康介から聞いていた話だった。でも、全く思い出せない。仲良しだったのになぜ?そう考えていると仙人が響に続けて話をする。
「良太郎は昏睡状態でな。ずっと目を覚まさないんだよ。俺1人の力じゃあいつは目を覚ましたりはしない。どれだけ声をかけても返事はしないんだ。揺すっても手を握っても無駄だったんだ。たった1人の友達が目の前で苦しんでいるのを俺は泣きながら声をかけることしかできないんだよ。だから・・・。」
そう言って仙人は泣きながら土下座をしてお願いをする。
「由奈ちゃん。宏。頼む。声をかけるだけでいいから。毎日とは言わないから。だから・・・あいつに『頑張れ!』ってただ一言だけ伝えてくれ!」
宏には分かることがある。それは男が土下座をする意味だ。
軽々しく土下座をしてはいけない。土下座をする時は精一杯の感謝と謝罪と頼み事をする時のみだ。宏は父親からそう教わってきた。今の仙人は頼み事をしている。それも1人じゃ解決出来ないような頼み事を。
宏はずっと土下座をしている仙人に顔を上げるように伝え、あることをみんなに提案する。それは週1で見舞いに行くというものだ。
月曜日は宏。火曜日が由奈。水曜日がまな。木曜日が響。金曜日が康介。土曜日が仙人。日曜日はみんなで行く。
そう提案したのだ。
もちろん、みんなその提案に対して賛成し、康介からも了承を得た。
次の日から日替わりでみんな良太郎の見舞いに行く。そのせいか病院内では有名になっていた。
良太郎くんはとても良い友達を持っている、と知れ渡ってしまったのだ。
5階には550号室〜560号室まであり、556号室が良太郎が眠っている部屋だ。9人は入れるくらいの部屋になっているため日曜日は大助かりだ。
宏が言い出した日替わりお見舞い。みんな自分の日付になったらちゃんと行っていた。
それを続けてもう4ヶ月が経とうとしていた。
外は1面雪景色。大学入試を控えている宏は良太郎のお見舞いに来ても勉強をしている。勉強をしている内にあることを思い出した。それを眠っている良太郎に言う。思い出話を友達に言う。
話終えるやいなや宏の目から涙がこぼれ落ちてきた。徐々にだが思い出してきているのだ。小学生の頃の記憶が蘇っていくが、とても嬉しくて切ない気持ちになっていく。
「・・・ちゃん。」
幻聴か?そう疑った宏だがそれは幻聴でも何でもなかった。それは現実だったのだ。なぜなら良太郎の目から出るはずのない涙がこぼれ落ちていったからだ。
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