第一章 十年十色 第二十二話 由奈
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由奈とまな、2人の時間が流れていく。
「なんで、あの時来てくれなかったの?」
まなは1番聞きたかったことを由奈に質問する。まなにとって初めての友達だからこそ。
由奈もそれには気づいている。由奈にとってもまなは大切な友達だ。
お互いがお互いを理解していて大事な存在だと認識しているからこそ、今のこの時間が自分たちにとって大切なのだ。
まなのその質問に対して由奈は答える。嘘はなく、ただ正直に。
「あの日、私は出掛けてたの。お母さんが風邪をひいてて人の手を借りないと動けない状態だったから。それで遅れちゃって・・・。」
「私はそれでも待ってたよ?何時間も待ってたんだよ?なのに、なんで来てくれなかったの?」
まなは泣きながらそういった。泣きながら自分の気持ちを伝えた。苦しみを伝えた。
由奈はまなのその苦しみを理解しているつもりでいるだけだった。でも、彼女はここまで自分のことで苦しんでいたんだ、ここまで友達だと思ってくれていたんだと今気づいたのだ。
「私はあの時来なかったのは怖かったの。あの日は遅れてでも待ち合わせ場所に行って見たんだよね。いないと思っていた。けど、あなたは・・・」
そう言って下を向いた由奈の目からは涙が出てきた。あの日のことを思い出したから。
あの日、あの場所で人混みに紛れることなくたった1人でずっと待っている彼女を見たから。哀しんでいる彼女を見てしまったから。
「言い訳だと思って聞いてね。私は、あなたに合わせる顔がなかったんだ。あれからどう話せばいいのかどんな顔をしてあなたに挨拶をすればいいのか分からなくなった。」
まなはずっと泣いている。その涙には心の痛み、悲しみ、苦しみが混じりあったものだった。
だから、どんなふうに思われたって構わないという覚悟で自分の気持ちを伝える。
「本当にごめんなさい。あなたに、まなに、ずっとずっと伝えたかった。怖くて逃げててごめんなさい。あなたの気持ちを踏みにじってごめんなさい。」
由奈はそう言いながらずっと頭を下げている。
そして由奈が本当に言いたかった言葉を伝える。
「それとありがとう。私のことをそこまで思ってくれて。友達だと思ってくれて。私のことを・・・」
そう言ってまなを抱きしめながら最後の言葉を伝える。
「私のことを覚えてくれて、どうもありがとう。」
1番聞きたかった言葉。『ありがとう』っていう何気ない言葉。言葉にしなきゃ伝わらない難しい言葉。
言葉は生きている。生物には寿命があっても言葉には思い出という寿命しかない。言われた言葉を思い出せるまではずっと生きている。傷ついた言葉でもハッキリと思い出すことが出来る。
『ありがとう』という言葉を聞いたまなはもっと泣きだし由奈もまなに負けないくらい泣き出した。
2人はどれくらい泣いただろう。2人は座り込みながらずっと抱きしめ合い泣いていた。泣き止んでから数分くらい経った。
「私、あなたと友達?今もこれからもずっと友達でいられる?こんな私でも・・・」
まなは震えた言葉で由奈に聞く。由奈はまなに優しい言葉で伝える。
「大丈夫。これからもずっと友達だよ。」
そう言ってから彼女たちは改めて友達になることができた。
それと同時に由奈はあることに気づいた。自分の願いは叶っていたこと。忘れないでいてくれた存在が1番近くにいたからだ。
そして自分にはもう1つ特異体質があったのだと。
それは今、無くなったのだった。
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