閉じこもりのいしょ? B
車で数十分。着いたのは豪華な屋敷だ。中庭もあってさぞ優雅に暮らせそうだ。
「祖父は部屋でずっと本を読んでて……いわゆる引きこもりでした。身体が悪くなっても病院も行かずに……だから死ぬ時も誰も気付かなかったのです」
「遺言もなし。誰も何も聞いてないって事か……どんなご病気で亡くなったのですか?」
「えっと……すいません。聞いたんですけど名前が長くて忘れてしまいました」
大切な家族が何で死んだか、勝は普通なら気にすると思う。澪紀は屋敷の扉を開けてくれた。
「どうぞ中へ」
「お邪魔しまーす!」
一目散に不明が中に入ろうと行くが、澪紀は不明の肩を掴んだ。
「一つ……約束を。ここには我が家に重要なのが沢山あります。他の部屋に許可なく入るのはおやめください」
「……いいでしょう」
「えー! 探検したいじゃん! こういう屋敷には謎がありまくりだよ! 解いて勇者になろうよ!」
「うるせえぞ不明。とにかく金庫がある部屋にお願いします」
うるさいから勝は不明の両のほっぺたを片手の親指と人差し指で押し潰した。口がたらこ口になるにもうーうーと鳴く。さっさと部屋に案内してもらった。
その部屋は広く本棚だらけ。そして敷き詰まるほどの本が置かれている。光が差し込むために入った真正面には大きな窓がある。
「うちの事務所といい勝負してるね」
「でもこっちは老人……うちは若いのに……情けない」
「未明……それは俺達全員に言われる言葉だぞ。叔父さんはここから景色を観て、そして本を読みながらのんびりと暮らしてたんだろうな。綺麗な景色でも……観ながら」
窓からは広い庭がよく見える。残念ながら少々荒れている。
「すいませんが外の庭はあまり見ないで下さい。叔父様が死んで以来、外の手入れが怠ってしまってるので」
「ふーん……でも何もしてないっていうか、しようとして辞めちゃったのか……誰か雑草と一緒に木まで抜いちゃったの?」
「……下手くそすぎ。草が可哀想」
あの未明が草に同情してしまうほどの酷さである。勝は本棚を見回してるとある物が目に入った。
「あれが金庫ですか?」
指差す先には大きな金庫が本棚と本棚の間に並んでいた。小柄の未明が前に立ったが二人分ぐらい大きい。取手が一つ、そこにはダイヤルがある。
「……アルファベット五つ。時間はかかるがAからZまで一桁やっていけば開けれるのでは?」
答えがわからなくても選択があるならいずれ正解になる。こんなのをわざわざ探偵に頼むまでもない事だ。金が無駄になるし、こんなのは信頼できる人間にやらせれば問題ない。正直なところ、勝はそんな面倒な事はしたくない。だが澪紀は首を横に振って答えた。
「残念ながらすでに試しています。ですが開くことはできませんでした」
「てことは順番があるのか。確かに面倒な代物だ……何か開ける方法とかは聞かれてないのですか?」
「この子が叔父と仲良く、よく遊んでたの。その時にある詩を詠ってたそうで……」
「……詩、ですか?」
「ほら雪……言いなさい」
今までずっと黙っていた子供、雪が口を開けた。
「ゆめめざしばしょ、ひるにもひかりかがやく、とものこえがなくなれば、はばたくひなをまち、そのいしつぐものにたからを」
その詩の最後にたからという言葉が出ているからして、勝は間違いなくそれが金庫を開けるヒントだと確信する。
「何でその子だけしか知らないの? もしかしてお母さんは嫌われてたの?」
不明は窓から見える景色ばかり見てたが、話をちゃんと聞いている。黙っているが未明も同じだ。
「え、ええ……ですが我々が開けないといけないのです。どうかできるだけ早く、お願いします」
「…………」
澪紀は頭を下げる。気にせず勝は黙って考える。考える。
「……わかりました。しかし一つだけ。雪くんと一緒にさせてください」
「え? な、何故?」
「亡くなった叔父の事を知りたいんです。叔父と仲がよかった。彼にはまだ話したい事がありますから。何も問題ないですよね?」
「が、学校の宿題とか、ありますので」
「私が一緒にしてあげるから問題ない! 話聞くお礼でー!」
「金庫を開けるためです。お願いします」
勝は愛想よく頼む。澪紀は少し黙って考えた。すると背後のボディガードの旗家と相談をし始めた。
「………」
旗家は頷くと、澪紀は勝の方に笑顔を向けた。
「わかりました。では旗家を残しますのでもし解けたなら旗家に。では雪……失礼のないようにね」
「……はい」
雪の元気がない返事を聞き、澪紀は出て行った。
「さて雪君。さっきの詩を謎を解くために協力してくれ」




