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閉じこもりのいしょ? A

「暇だ〜」


 不明は横になって、ゴロゴロと転がって暇を潰している。


「…暇だ」


 未明は横になって、ゴロゴロと転がって暇を潰している。


「事件は現場で起きてるの〜! 事務所じゃないの〜!」


「……暇暇暇暇暇暇」


「うるせえ! 昨日事件解決たばかりだろ!」


「昨日解決したのに、なーんか随分と日にち経ってる気がするんですけどー!?」


「知るか!


 勝は椅子に座って、何度も読んだ事件の資料を読んでいた。探偵は依頼がないと暇になる。毎日忙しい訳じゃない。勝は時間が空いたらいつも何かしらの事件の資料を目に通していた。机に置いてた本積みの上に資料を置いた。途端に本がバランスを崩し、本積みは倒れて行く。


「……掃除するか」


 その言葉に、不明と未明は立ち上がった。


「急用思い出したので帰りまーす」


「待て不明。帰るって家はここだ。逃げるな暇なんだろ手伝え」


「えー!?」


「……仕方ない……じゃあ私は外を掃除する」


「待てい。お前も逃げるつもりだろう」


「チッ……違いますよ」


「最初の舌打ちは何だ?」


「大体散らかしてるの勝さんじゃないですか〜!」


「お前らも変なゲームして散らかしてるだろう! 住んでる奴は汚くするんだ」


「私達はそこまでしません!」


「右に同じ…」


 この双子と相手すると面倒なのは勝が一番わかってる。なら無理矢理行動させるしかない。


「掃除しないならお前達は飯抜きな」


「え〜! か弱い女の子達に飯を食べさせないなんて……」


「鬼〜……悪魔〜……ロリコーン」


「てめえら……住ませてやってる恩もねえのか?」


 不明がブーイングする中、未明は何かに気付いた。


「だいたいお前達は……未明?」


「誰か来た……人が三人」


「お客さん!?」


 扉の向こうにいる人間がインターホンを押す。鳴り出した瞬間に不明が扉を開けた。


「いらっしゃいませー!」


 当然相手はびっくりした。いたのは茶色の長髪で、綺麗なドレスを着た女性。背後にはスーツを着たいかにも強そうなスキンヘッドの男。そして女性の横には、お洒落な腹を着た小さい子供だ。


「……こちら、探偵事務所で合ってます?」


「驚かせてすいません。私がここの探偵、勝です」


 勝は挨拶ついでに不明の頭を叩いた。


「このチラシを見たのですが……本当なんですか?」


 そのチラシには『ご依頼何でも引き受けます。(前払い)注意! 警察には関わりません。また警察を呼ぶ行為は致しません』と書いてある。


「こちらのチラシですよ。本当とは何がですか?」


「警察を呼ばないなんて、何か事件があったら呼ぶべきでは?」


「それはそこに居合わせた人が呼んでくれたら問題ないんです。警察が所詮動いたところで事件が変わる訳でもない」


「はあ……」


「それで、ご依頼があって来られたのですよね?」


「ええ。出来れば穏便に事を終わらせて欲しくて……ある金庫を開けてほしいの」


「金庫? なるほど……どんな金庫で?」


 勝は何故それを探偵に頼むかは聞かない。理由があって探偵に頼んでいるのはわかりきっているからだ。


「金庫はアルファベット五つのパスワードを入力する物です。それを知っていた叔父様が、先月亡くなられて」


「誰もわからないと言う事ですね。わかりました。チラシに書いてあった通り、うちは前払いなのは知ってますよね?」


「え、ええ。ですが依頼料はおいくらになるのでしょうか?」


「お気持ちです」


「……え?」


 女性はポカンとした顔をしてるが、笑顔で勝は答える。彼女の思考が停止したまま話は進めない。


「毒が入ってないお茶でーす!」


「え? あ…ありがとう」


 いらない付け足しをした不明の声で、彼女は驚きながらも礼を言う。


「貴女のお気持ち次第で結構です。高いだの安いだの言いませんし、安いからといって、手を抜いたりしません。勿論依頼が達成できなければお金は返します。」


「な、何か話が良すぎませんか? それって一円でも……タダでも働くと言ってるのしょう?」


 まともな金額を要求しないなんて後が怖い。彼女は疑心暗鬼になりつつあるが、またも勝は笑顔で答える。


「それともう一つ……まあこれは一度もない事ですが、達成しなければ依頼料は二倍にしてお返します。ご安心を、私はとある所から金はたんまり貰っているので」


「……わ、わかりました」


 何か怖いところがあるが、彼女はスーツの男の目を見た。男は黙っている。目線を戻すとバックから紙とペンを取り出して、彼女は誰にも見えないように字を書く。


「依頼料はこれくらいでよろしいですか?」


 彼女は勝に紙を見せた。勝は手に取って紙を貰った。


「いいですよ。それじゃあ簡単な書類だけ書いてもらっていいですか? えっと……」


 勝は重なった書類の山の中から一枚すっと取り出す。


「失礼ですが、お名前をまだ聞いてませんでしたね」


「申し遅れました。私は波羽根はばね澪紀みおきと言います。背後にいるのはボディガードの旗家はたけと、息子のゆきです」


「澪紀さんですか。ご依頼ありがとうございます」


 勝は笑って書類を澪紀に渡した。

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